《【書籍化】わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く【8/26から電撃マオウでコミカライズスタート!】》冒険の始まり
「…………」
瞬きを一つ、二つと繰り返す。
そして次に空いている左手を結んで開く。
最後に右手に握っている黃泉還し(トータルリコール)をジッと見つめてから立ち上がる。
そのままぐるぐると部屋を回り、あまり広くはない部屋で控えめに素振りをしてみるおじじ。
「……問題は、ないみたいじゃな」
自分が知覚できる範囲では、異常はじ取れなかった。逆に全から力がみなぎって全がムキムキになったりもしていない。
どうやら賭け(というには安牌が過ぎるはあるが)には無事勝てたようである。どうやらこの剣は対象者を加齢させる剣ではなく対象者をある年齢まで強引に引き上げるタイプの武であったらしい。
「これから、よろしく頼むぞ」
まだ知り合ってばかりの武であるために親近などというものが湧くはずもないが、一応の禮儀とばかりにペコリと剣に頭を下げる。
ジジイになるとどんなものにも謝できるようになった、ディルは謝とありがたいという気持ちで今を生きているのである。
自分がこれほどの武を銀貨五枚などという安値で買えたことに謝をしながら、彼は新しい玩を手にれた年のような気持ちで剣を振り、そのを確かめようとする。
一度二度と素振りを繰り返すうち、ディルは思った。
(……流石に狹いの)
部屋の中で素振りなど、やるもんじゃない。そんな當たり前のことにすら気付かないほど浮わついていた自分に喝をれ一度宿を出ることにする。
スタスタと歩き、アリスの橫を抜けていく。軽く手をあげて通りすぎようとしたのだが、どうにも彼の様子がおかしい。
「わしの顔に何かついとるかの?」
「……いえ……」
思わず立ち止まり聞いてみてしまったディルの質問に対しても、彼はどこか上の空な様子である。
アリスの視線は彼の普段の目線よりし高く、的にはディルの頭部あたりの位置に固定されていた。
「……ま、まさか……」
おそるおそる、生まれたての赤ん坊を抱き上げる時のような繊細さでそっと自分の頭髪にれてみるジジイ。
ふさ……ふさふさっ。手にやってくる確かな、年のわりにかな髪はしっかりと彼の頭に殘っていた。
彼の視線の先にあった頭皮は、もしや黃泉還しの効果でエラいことになっていたのではないか。そんな彼の予想は外れたことになる。
だがだとすればどういうわけだろうか。どこかに円形癥ができてはいないかと丹念に自分の頭をってみるジジイ。
そんな彼の様子を見かねたのか、アリスが人差し指で彼の額のあたりを指差した。
「そこ……黒染めしたんじゃないんですか?」
目を頑張って上へ向け、差された辺りに視線をやってみる。すると確かに白の中にしだけ黒が混じっているのが見えた。下の白い房から見ると見にくいが、前髪の一部分だけが黒くなっている。
(これは……一応、若返ったということでいいのかの?)
髪を染めるなどというハイカラなことをしたことのないディルは、なんだか自分がお灑落さんになった気分になった。腰紐に吊るしている黃泉還しにそっとれ、ありがとうよともう一度心の中で禮を言う。
「……なんでそんな一部分だけメッシュみたいなことするんです? どうせなら全部黒くした方が見映えはいいでしょうに」
「ほっほっほ、まぁまずはお試しということでな」
武の効果でしだけ若くなったという事実は絶対に言わない方がいいだろう。これは呪いは呪いでも、自分よりも更に年老いた生きるか死ぬかの瀬戸際な老人達にとってはから手が出るほどしい延命アイテムになるはずだ。下手に勘繰りをれられて武を取り上げられてしまっても面白くない。金を貯めたら黒染めか白染めをして若返りについては隠すべきだろう、世間知らずな彼であってもそれくらいのことはわかった。
「ていうか武、換えたんですね。大丈夫ですかそれ、なんかすごく禍々しいんですけど」
「そうじゃの、わし今ちょっと呪われとるし」
「ひゃっ…………あいたあっ⁉」
ディルの言葉を聞き思わず後退したアリスが、壁に後頭部をぶつけてしゃがみこんでしまった。驚かせたのは自分なので、かなりの罪悪がジジイの心にのしかかってくる。
口をへの字にして瞳をうるうるさせながら必死に涙を堪えているアリスを見て、ディルは膝をりむいて泣きそうになっていた時のマリルのことを思い出した。
(痛くないもん、泣いてないもんと言いながら鼻水をかんでいたマリルは、それはもう可かったのぉ……)
遠い目をしているジジイはすぐに気を取り直し、アリスの方へ近づいていく。大丈夫かの、と心配するディルを見ながらアリスは
「……宿代、上げてもいいですか?」
と値上げを求めてくる。
「……叩き出すんじゃなく値上げを求めるのは、強かとかいうレベルじゃないの」
ディルは自分が彼を泣かしたという負い目もあったため、銀貨一枚と銅貨三枚という値上げされた宿泊代金を仕方なく飲み込むことにした。
「いってらっしゃい、おじいちゃん」
「いってきます…………はぁ、もっとお金稼がんといかんの……」
ジジイは若干背中を煤けさせながら宿の裏庭で素振りをし、新たな武のを確かめた。
恐らく今の自分には勿ないほどの逸品であることは間違いない。どれほどの若返り効果があったかはわからないが、こころなしか関節痛も鈍くなったような気がする。
「……よし、次は実戦で試さんといかんの」
宿屋も値上げされてしまい、剣を買ったことで持ち金はすってんてんに等しい狀態だ。休んでいる暇などなく、武を買ったらすぐに魔を狩りにいかねばならない。
そんな厳しい狀況にもかかわらず、冒険者ギルドへ向かう彼は笑顔だった。
溌剌な笑みを浮かべるジジイは、ほっほっほと笑いながらぬるぬると大通りを進んでいく。
新人冒険者ディルのセカンドライフは、まだ始まったばかりだ。
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