《【書籍化】わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く【8/26から電撃マオウでコミカライズスタート!】》トキシックスネーク

ディルはぱぱっと準備を整え、いい笑顔で解毒剤を売り付けてくる男職員に笑みを返した。

そしてわかってるじゃろうのとだけ口にして、若干値引きをさせ蛇の魔報をしっかりと吐き出させるのも忘れない。これくらいのことはしてもバチが當たらんじゃろうと結構な値引きを迫るあたりからも、ディルが渉の行える冒険者に長していることがはっきりと窺える。

ついでとばかりに対策や対処法、アドバイスをしっかりと聞き、ギルドをあとにし目的地へと向かっていった。

し、マシになった気がするの」

木々が水分を吸うからか、気持ち空気がカラッとしているために、過ごしにくさはかなり薄れていた。そんな森というには々木の數がない中を、ディルは見切りを常に遣いながら歩いていた。

南に展開している森は、その名をジュラル森林と呼ぶらしい。

うろのないつるつるっとした樹木には、ナイフのように細長く鋭利な葉っぱがついている。枝や葉の間の覚は大きく広がっているために、木の上から隠れて襲いかかってくるような魔はいない。

の姿は丸見えであり、し離れた場所からでもトキシックスネークの姿は丸見えだった。

「おお……やっぱりというかなんというか、騒なしとるのぉ」

ショッキングピンクの斑に、オレンジと紫のマーブル模様の蛇のは、かなり視覚に訴えてくるものがあった。長はそこそこ大きい、ディルの長くらいはあるだろう。

生きてるうちは派手なをしているが、しっかり染料を使えばは落ち著くという話は事前に聞き及んでいる。一応既製品が茶かったのを見ておいてよかったわい、ジジイは完品を見ておいてよかったとほっと息を吐いた。

さすがにあんな著た鎧を著たじいさんがいたら、それもう笑えないものな。事前に生きているのを見て、この鎧を候補から外さんで良かったという安堵のため息である。

息を整え意識を切り替えてから、ジジイは油斷なくじっと樹上でこまらせている蛇を見つめる。

トキシックスネークはディルの方を向いていないにもかかわらず、なぜか臨戦態勢を整え始めていた。

なんでもこの蛇は生き溫を知覚するような能力があるらしく、実際に見ずとも獲を補足する能力があるらしい。

そんな探知能力があって、毒を飛ばしてくるんじゃから、そりゃ厄介に決まっとるわい。

グスラムにはかなりの冒険者がいるはずなのに、ディルの周囲にはほとんど人の姿がない。ギアンでスライム狩りをしてきた時とは大違いである。

やはり楽に稼げる方に、人は流れるもんじゃしのうと苦みを湛えた笑みをこぼす。

(……來るっ‼)

瞬間見切りがディルに警鐘を鳴らしたため、全力で右へ転がってを取る。

すると彼が先ほどまでいたところに紫が飛んでいき、それが染み込み地面のが変わっていくのが見えた。

を一度使ってから、再度使うまでにはタイムラグがある。

ゆえに狙うのは毒を吐いたその直後。

しっかりと教えてもらった対処法に従いながらヌルヌルと歩いていく。

アドバイスではその後、蛇の頭を摑み口を強引に閉じてから殺すのがいいと言われていた。だがディルの見切りスキルは、それが最適解ではないと彼に告げている。

ぐぐっとめていたを一気にばし、風を切って進んできたトキシックスネーク。

(それだけの速度があれば、下手に力をれる必要はない)

しだけき、黃泉還しをそっと脇のあたりに掲げる。

すると蛇が思いきり飛び込んで、黒い剣へと吸い込まれていった。

「わざわざ避けてから倒さんでも、向こうからやって來てくれるんじゃから問題はない。速度も十分に乗っておるから、置いておくだけでいいというわけじゃな」

ディルは脳でシミュレーションをした。

まずトキシックスネークに自分の存在を気づかせ、臨戦態勢を整えさせる。

を吐かせ、それを避ける。

次にこちらに向かってさせる相手の口の位置に、剣を置いておく。

不意打ちで殺すよりも若干手間はかかるが、その分安全に仕留めることができる。それに手間といっても々が三手、それほどのものでもない。

複數に襲いかかれたらまた話は変わってくるが、幸いこのジュラル森林は比較的見通しのよい、木々がそれほど生していない場所だ。

向こうがやって來る獲を待っているのなら、こちらも一匹ずつ群れていない個をしっかりと狙っていけばいい。

革を剝ぐのが面倒だがを殘してでも革を傷つけないようにと言われていたのでそれを忠実に守ることにする。

だが解が下手なために、かなりが殘ったままになってしまった。革だけでずいぶんな重さがある。

(これだとこまめに帰る必要がありそうじゃの。腐り始める前には戻らんといけんし、足で稼ぐと思って割りきるしかなかろうて)

ディルはもう一匹蛇を狩り、再度下手くそな解をしてから、一度街へと戻ることにした。

こんな時荷を共有できたり、解ができたりするような仲間の一人でもいたらのぉ。

おじいちゃんは帰路重い革を運ぶ際、一度パーティーメンバーを募集するのもありかもしれんの。

スライムを狩っていた時とは勝手の違う狩りを経験し、おじいちゃんは一人でできる限界というものを、実し始めていた。

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