《【書籍化】わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く【8/26から電撃マオウでコミカライズスタート!】》子供

ディルはし愕然として、目の前の建を見ていた。

孤児院がボロかったのは想定の範囲だったので、おじいちゃんが呆然としている原因は別にある。

(ここ……何十回も通ってたところじゃ……)

一応子供の腕白な聲はしないものかと耳を澄ませていたりもしたのだが、そんな様子は一切じなかったはず……。

ジジイは自分の耳が思っていたよりも遠くなっていたことをじながらなんとか気持ちを落ち著けていると、ミルヒがそっとドアに手を當ててから押し出す。

「どうぞ、狹いところですが……」

「気にせんでええよ。わしの家なんかちょっと灑落にならんレベルで狹いしの」

ディルがり口からそっと中を除いてみる。恐らく見えるのは居間だろう。

そこには四人ほどの子供がいて、空になった皿をじっと見つめていた。恐らくは夕食の後なのだろう。

だが彼らの顔を見る限り、食事でしっかりと満たされているとは思えなかった。

どうやらしばかり、夕食の容に不満があるようだった。

なくとも今日はそんな顔はせんでもええんじゃよ、そう思ってちょっとばかし笑顔を作ってみる。

足音を隠す必要もなかろうと、いつも通りにゆっくりと歩き始めるとすぐに子供達がやって來た闖者に気付いた。

じっと自分の方を見つめてくる四対の視線。年が二人とが二人。どちらもそれほどかには見えない。だがあの貧乏からするため不法に手を染めるアウトローな子供特有の瞳のぎらつきのようなものはなかった。

清貧、というやつなのかの。

これがミルヒちゃんの手柄なんじゃとしたら、いいお嫁さんになりそうじゃね。

ディルはほっほっと笑いながら、四人が向かい合っているテーブルの前に立った。

「じいさん誰だ? もしかして……ヒリソのおっさんか?」

「馬鹿ねジェン、ヒリソさんはもっと若いわよ」

「なんだよリア、じゃあお前は誰かわかんかよ?」

「うーん……ヒリソさんのお父さん、とか?」

テーブルの右側にいるのは金髪の年と、赤髪のだった。

跳ねっ返りな勝ち気なジェン、ちょっぴりおませなリアといったところだろうか。

「大で、ミルヒの旦那さんかもよ」

「うわ、おじん趣味極まるってじ。シスターなんだし産目當てはよくないと思いまーす‼」

「こらシース、マルガム、そういう人を馬鹿にするようなことを言っちゃいけないっていつも言ってるでしょう‼」

そして左側にいるのは茶い癖っの寢ぼけていそうな年と、し今どきなじのするこまっしゃくれただ。

思っていたよりも個が強そうで、ジジイが誰なのかを當てようと活発に話し合いをしては意味もなく髪のを引っ張り合っているその様子からは、もう若さしかじられない。

よくこんな四人をせるもんじゃの、と思っていたディルだったが、彼の言葉に四人はまともに耳を貸していないように見えた。

下手に黙らせるほど気が強くなさそうじゃし、思ったよりも子守りは大変なのかもしれん。

そんな風に考えているディルは、自分の頬が引っ張られるのをじた。

下を向くと興味からか、寢ぼけ眼のマルガムが髭をもしゃもしゃしているのが見える。

「結構……悪くないね」

グッと親指を立てて笑顔を向けてくるマルガム。おとなしそうに見えて、この子も結構腕白そうじゃね。

「そりゃ一応、最低限の手れはしとるからの」

好きなようにらせとこうかと思いもしゃもしゃされているディル、なんとなく後ろの方に気配をじたので見切りを発

後ろから襲いかかろうとしていたジェンの當たりをひょいと避け、足を引っ掻けて転ばせる。そのままだとテーブルの腳に激突しそうだったが故の苦の措置である。

「いってー‼ おいじいさん、あんたやんじゃねぇか‼ だけどな、そう簡単にミルヒはやらないぜ‼」

「ほっほっほ、元気が良くて多いに結構」

転んで鼻からを流しているジェンは、自分の元気を発散できる相手を見つけられて明らかに機嫌がよくなっていた。

なるべくかさないように気をつけたためにマルガムは相変わらず髭をもしゃもしゃしているし、止めるつもりもないようだった。

「うっわー、おじいちゃんこんな若い子相手に本気になっちゃって恥ずかしくないのー?」

「ちょ、ちょっとジェン、大丈夫⁉」

二人のの子はし離れたところからディルを見ているようでいて、しかし彼の前にいるジェンの背中をはらはらしながら見ているようだった。

そこはかとなくじるの気配、どうやら孤児院の中にも々問題がありそうじゃね。

「これは……癖になる。良い髭してるよ、おじいちゃん」

「勝負だ、ジジイ‼」

「頑張れ、ジェン‼」

「ちょっとー、埃舞うから止めてよねー」

うるさい、というかやかましい。だが々とひどい扱いをけて、ディルの浮かべていた笑みは深くなった。

(やっぱり子供は、元気な方が輝くもんじゃからの)

マリルもトールもほとんど手のかからない子供だったために、こういう反応をされるのはずいぶんと新鮮にじられた。

「すっ、すいません‼ この子達ったらいっつもこうで……」

「いいんじゃよ。子供はこれくらい元気な方が、あとで大するもんじゃ。ちょっと表出てきても大丈夫かの? ここだと食が割れるのが怖いから」

「それならどうぞ裏庭を使って……」

「あ、あのっ‼ あんまり酷いことしないでね、おじいちゃん‼」

「そう心配せんでも平気じゃよ、ちょうどリアちゃん達くらいの年頃の孫もおる。扱いは手慣れたもんじゃからな」

常に誰かの喋り聲が空間を満たすようなそんな騒がしく活気に溢れた狀態に、ディルは自分がし若返ったような気分になった。

ご飯を摂るのはもうしあとのことになりそうじゃの。

ディルは髭を摑んだままのマルガムとジェンを引き連れて、裏庭で遊ぶことにした。

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