「『葬送の五騎士』か……やっぱりな」

セリアはアンデッドを幾つかの分類にわけてストックし、まとめて使役することが多い。

なんでもその方が効率が良くなるかららしい。

そのため彼が召喚するアンデッドは、基本的に同系統の魔の集団であることがほとんどだ。

今回出てきた五は、いずれもスケルトン。

彼が『葬送の五騎士』と呼んでいる、近接戦闘に特化したアンデッドたちだ。

左右を固めている四のスケルトンは、甲冑を著込んでいる。

骨のは緑で、眼窩は怪しく紫にっている。

種族名は、スケルトンナイト・オーダー。

討伐難易度はミスリルの中でもかなり高く、一般的なミスリル級冒険者なら瞬殺だろう。

……改めて考えると、冒険者ランクって結構ガバガバだよな。

討伐難易度オリハルコン級が國家的な危機の場合にしか適用されない関係上、ミスリル級の魔の強さのバラツキが大きすぎる。

俺たちが今後活するにあたって、何か別の基準を設けた方がいいかもしれない。

「ガガッ！」

緑の骨をしたスケルトンたちが手に持っているのは黒い長剣で、著ている甲冑は妙に甘ったるい匂いを放っている。

これらは全て、さっきセリアが死霊の行使のために使った素材を元にしてできている。

通常、出てくるスケルトンたちは末な武を持って現れることがほとんどだ。

そしてある程度死霊を極めた人なら、あらかじめ渡した武を使わせることができるようになる。

けれどセリアは、更にその上を行く。

彼は召喚し使役するアンデッドを、捧げた供によって強化することができる。

本來供は、アンデッドの召喚・維持のために支払うコストである。

なのに彼はそのコストを抑え、素材をアンデッド自を強化するパーツとして使うことができるのだ。

その詳しい仕組みは、説明されても俺には理解できなかった。

彼の本域では、『七師』であっても分が悪いのだ。

俺もまだまだ、勉強中のだ。

「ゴルネザさん、どうもぉ」

「カカカッ」

「いえいえ、そんなことありませんってばぁ」

セリアはアンデッドたちと會話をわすことができるので、何やら談笑を始めていた。

俺は死霊はてんでさっぱりなので、どんな會話をしているかはまったくわからない。

「……」

セリアと四のスケルトンたちが談笑（？）をしている中、し離れたところに五目のスケルトンがいる。

四のスケルトンは、まるでその一を守るような布陣になっている。

そのスケルトンのサイズは小さく、他の四と比べると三分の二ほどの大きさしかない。

骨のは紫で、腰には紫の刀を攜えている。

けれど持っている魔力は、こいつが頭一つ抜けている。

背格好は一番小さいが、こいつが殘りの四をまとめるこの『葬送の五騎士』の団長なのだ。　種族名は―――なんと不明。

未だこの一しか目撃例がないため、俺とセリアが名付けられる新種の魔だ。

けれどセリアはこいつを魔名ではなく本來の名前で呼びたいらしく、名付けに難を示されてしまった。

なので學究の徒としては誠に憾ながら、デザントに報告はしていない。

「ガルネリアさんもありがとうございます」

「……」

『葬送の五騎士』の団長であるガルネリアは、一つ頷くとそのまま腕を組んだ。

俺はこいつが喋っているのを、一度も見たことがない。

きっと生前もめちゃくちゃ無口だったんだろう。

セリアの聞くところによると、彼らは遠い昔に滅んだとある小國の『騎士団長』たちなのだという。

なんでも城壁が壊れ王が殺されても、最期の最期まで敵國に抗い続けた者たちだとか……。

トイトブルク大森林に魔が溢れ出す前にあった國らしいから、多分千年とかでは利かないくらい昔に生きていたんだろう。

「というわけで隊長、『葬送の五騎士』を呼び出しました！」

「よくやったぞ。杖無しで召喚できるようになるなんて、セリアも長したな」

「えへへ……」

セリアが手に持っている、手付き髑髏の乗った杖の魔道は、その名を『無道（ライフオン）ノ零（スクラッチ）』という。

これは彼が自分だけでは発できない各種式の補助を、そのを対価として行ってくれる魔道だ。

彼のは極めて貧弱なので、杖の補助を數回もければ貧で倒れてしまう。

なので実は、かなりの諸刃の剣だったりする。

剣じゃなくて杖だけど。

俺が前に見たときは、『葬送の五騎士』は杖の補助がなくては呼び出せていなかったはずだ。　し見ないうちに、彼も長したってことだろうな……。

セリアの使う死霊で呼び出されるアンデッドたちの裝備は、使った供を素材にして強化される。

リッチの冥核を使うのは、これをとして使っているから……らしい。

以前俺が自作した魔道用のを渡してやらせてみたんだが、何故かそのまま使った方が強くなった。

としては、俺が手を加えたもののほうが優秀だったはずなんだけどな……。

やはり死霊は、まだまだ謎の多い分野だ。

今回は彼らの甲冑にはエルダートレントの腐蝕香木が、そして脛當てや肘當てにはドラゴンゾンビの皮革が、持っている得にはドラゴンゾンビの毒牙が使用されている。

セリアが使った素材は、今まで彼に渡してきたの中では最上に近い。

裝備は次に召喚したときにはリセットされてしまうので、彼らは貴重な戦力としてあまり消耗させないようにしないとな。

でも何も、魔力を半分も使わなくてもいいだろうに。

もっと節約しないと、絶対後でつらくなるぞ。

……けどまぁ、久しぶりに死霊が使えて張り切っちゃったんだろうな。

多分俺が追放を食らってから、セリアがまともに力を使う機會は一気に減っただろうから。

ったくこいつは……使う魔法はどんどんエグくなってはいくが、そのは何年も前から変わらない。

誰かに認めてもらうために無理をするところとか……本當に昔のままだ。

あんまり詰めすぎないように、俺くらいはしっかりと褒めてやらなくちゃな。

「よし、行くか」

「はいぃ、でもちょっとだけ休憩を……」

「言わんこっちゃない……五分だけだぞ」

「だから好きです、隊長ぉ」

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