《【書籍化】宮廷魔導師、追放される ~無能だと追い出された最巧の魔導師は、部下を引き連れて冒険者クランを始めるようです~【コミカライズ】》カースドウェポン

俺はトイトブルク大森林で戦うとき、常にコストパフォーマンス、つまりは費用対効果を意識し続けていた。

こちらの人的リソースが限られており、そもそもバルクスのような辺鄙な田舎にやってくる変わり者はいないため、早々補充もできない。

それなのに強敵を倒したと思ったらそれより更に強い敵が現れるという理不盡が割とよくある。

俺の――俺たちのやり方は、必ず魔力と人的被害を天秤に掛けて行う。

今回クリエイション・スケルトンだけを使って味方の援護をしないのも、スケルトンを造るのが一番コスパがいいからだ。

俺が上級火魔法であるブレイドブラストファイアボールを使うと、魔力を全の約一%程度使う。

それで倒せる敵の數は、合にもよるが大一回ごとに三十前後。

対し『超過駆(オーヴァーチュア)』をかけたクリエイションスケルトンを同じ程度の魔力を使用して発させると、大三百前後のスケルトンになる。

『葬送の五騎士』に彼らを使わせれば、同數とまではいかずとも二百くらいのスケルトンは持っていってくれる。

効率で言えば、約七倍も違う。

俺は魔と戦う際には、こんな風にいかに消費を抑えられるかだけを考える。

撤退するときにも余力を殘しておかなくちゃいけないからな。

大隊の行軍より移速度が速い魔はごまんといるし。

だから俺が今こうして自分から出張るというのも、その原理原則から外れていない。

つまりは魔道で反応のある強力な個が――スケルトン軍団だと相手にならなそうってことだ。

『葬送の五騎士』率いる軍団が攻勢に出たことで、テアの遊軍が手すきになった。

俺たちは彼の軍団を使い、魔力反応のある所へ近付いていく。

ある程度の距離まで來てから、遠見の魔法であるクレボヤンスを使う。

そこで見えたのは――地面に倒れ伏しかなくなっている、真っ黒な首無し騎士だった。

「あれは……デュラハンだな。セリア、詳しい説明を」

「えっとぉ、デュラハンは首無し騎士でぇ、それでぇ……結構強いです」

「……お前に説明してもらおうとした俺が間違ってたよ」

デュラハンは、レイスやスペクターなどと同じ霊系に分類されるアンデッドだ。

その見た目の特徴は、簡単に言えば兜のない、中が空の甲冑である。

通常なら強さはミスリル級下位だが……そもそもデュラハンの攻撃手段は基本的には近接戦闘。

死霊を使うという話は聞いたことがない。

それにもし配下がいたとしても、それは霊系統の魔に限られるはずだ。

向こうは視界がないため、この距離だとまだ気付かれてはいない。

つまりあいつは、ゾンビやスケルトンたちと意識を共有できていない。

ネクロマンス系の死霊に造詣が深いのなら、低位のアンデッドであっても最低限の報取得はできるはず。

契約が介在せずやり取りができないということは……とそこまで考えたところで、デュラハンのである鎧が、普通と違うことに気付く。

無念を抱えたまま死んだ騎士が死後まで殘る怨念を持つことで生まれるのがデュラハンだ。 が腐り、解け落ちても消えぬことのない恨み辛みこそが彼らの原力。

そのためデュラハンが新たに手にれたである鎧は、生前使われていたボロボロのであることがほとんどだ。

だが魔法で見えているデュラハンの鎧は、そうではなかった。

むしろ新品のように新しく、キラキラとしたコーティングまでされている。

「あれは……鎧がマジックウェポンだな、それに……呪われてもいる」

魔道者が使える魔法を道に付與することで生まれる。

魔道造りなら一通りこなしてきた俺だが、未だ手をつけていない分野がある。

それが――付與魔によって呪いや死者の怨念などをつけた魔道だ。

基本的にマイナス補正をかけるこれらの魔道はカースドアイテム、武であればカースドウェポンなどと呼ばれることが多い。

どれもこれもピーキーな能をしており、持っただけで呪われたり気が狂ったりするようなものも多い。

ただその分、これらの呪われた道たちには、通常の魔道では付けられないような効果が付くことがある。

このカースドウェポンの面白いところは、怨念や人の悪意にあてられ続ければ、誰かに作られずともひとりでに生まれることがあるところだ。

大半はただ気が狂ったり武に取り憑かれたりするだけの産廃ができるので、それほどいいができるのはごく稀のことなんだけどさ。

だがあのデュラハンが著ている鎧は、もしかしたら當たりかもしれない。

間違いなくあれが、あいつが率いているゾンビとスケルトンを作った原因だろうからな。

「さしずめ『アンデッド化』のカースドウェポンといったところか? 効果はクリエイション系に近いんだろうが、使用者とアンデッドがまったく意思疎通ができないという點ではやはりピーキーだな」

だが周囲の死をことごとくゾンビ化させるアルティメット・ゾンビと比べればまだ使い勝手は良さそうだ。

ゾンビになっていない死も転がっていたし、無制限にアンデッド化させる類のものではなさそうだからな。

カースドウェポンとして使ってみて、使用を確かめながら先へ進んでみるか。

「セリアはデュラハン従えたいか? カースドウェポンのせいでまともにかなそうなじもするが」

「それならいらないので、鎧だけくださぁい」

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