《【書籍化】宮廷魔導師、追放される ~無能だと追い出された最巧の魔導師は、部下を引き連れて冒険者クランを始めるようです~【コミカライズ】》五つ

【side エンヴィー】

よく、魔法使いは遠距離攻撃が得意で、気力使いは近距離戦に優れていると言っている人がいる。

あとは魔法使いが學者で、気力使いは武道家だなんて言う人もいる。

けどそのどちらも、私からすればちゃんちゃらおかしい。

魔法にだって、強化魔法と呼ばれる能力を向上させるものがある。

気力にだって、遠當てと呼ばれる気力弾による遠距離攻撃手段は存在している。もっともこっちは、かなりの実力者じゃないと使えないんだけど……。

いったいどちらの方が強いか、っていう學者さまの意見に興味はない。

どっちだって極めれば、どこまでだって強くなれる。

要は使う人次第、というだけのこと。

私は魔力だけを使われても、気力だけを使われても、両方同時に使われても、アルノード様には勝てないし。

私個人としては、二つの優れている點が違うだけと思っている。

魔力は応用に秀でていて、神と才能と接な関わりがある。

そして気力は持続に優れていて、と努力と深く関わっている。

魔力は火も出せるし、魔道造りにも使えるし、かなり融通が利く。

アルノード様やシュウ、セリアなんかを見ていると、魔法さえ使えればなんでもできるのではないかと錯覚してしまいそうになる。

けれどそれは、彼らが才能を持って生まれてきているから。

もちろんアルノード様が『七師』になるまで死に狂いで努力してきたことは知ってる。

それは本當にすごいと思っている。

だけど才能がなければ、どれだけ努力を続けても報われることはない。

魔法というのは殘酷で、努力でカバーできる部分には限界があるという事実を突きつけてくる。

対し気力はどうか。

こちらにはまったく派手さはない。

気力を剣に乗せて一撃を放てば魔法剣ばりの威力が出るけど、特にド派手なエフェクトとかもない。

遠當ても、見た目はファイアボールよりも地味だ。

けれど気力は、使うを才能の多寡で拒むことはない。

を鍛え、扱い方を學べば、際限なく強くなっていくことができる。

努力がある程度報われるのが、気力使いの世界だ。

もちろん戦闘センスや直力、咄嗟の判斷力や視力のような、々なは必要になってはくるけど。

……ライライみたいな、ちょっと変なのもいるけど。

だから私もマリアベルも、エルルも、そしてまだ合流できていないみんなも……基本的には気力を使う道を選んだ。

そうしなかったのは既に才覚が芽吹いていたセリアや、を鍛えることがあまりにも嫌すぎて魔法の才能を発現させたシュウのようなイレギュラーだけだ。

私も最初は、それほど戦えていたわけじゃない。

けれど、今では――

「ギィヤアアアッ!!」

振り下ろした『龍牙絶刀』が、コボルトシャーマンの頭をぶち割る。

中から飛び出す髄の混じった紫を振り払う間もなく、反転。

逆側からやってきているリザードマンソルジャーのに剣を突き立てる。

飛び上がり、一回転。

回転の力を自重に乗せて、ゴブリンリーダーのを真っ二つに裂く。

、瞬転、かがみ込み、飛び上がる。

周囲に居る者は全てが敵で、皆がその手に武を掲げて命の雄びを上げている。

楽しい……楽しい楽しい楽しいっ!

オークナイトの腹部を裂くと、でっぷりと白い脂肪が飛び出してくる。

気力を使い腕力を強化、棒の要領でオークナイトごと周囲の魔を薙ぎ払う。

こんな雑な使い方をしても、『龍牙絶刀』は決して曲がらない。

だからこそ私は、この戦場にいる誰よりも自由に舞える。

戦場は、命というものが最も輝く場所だ。

そこではあっけないほどに簡単に命の燈火が消える。

だが……だからこそ、何よりも強い輝きを宿す。

私が飛び込んだのは、縄張り爭いをして戦う魔たちのど真ん中だった。

理由は単純で、ここが周囲の場所で一番の激戦地だったから。

ゴブリン・オーク・コボルト・リザードマンによる四つの戦い。

そこに私は、人間代表の新たな勢力として參戦させてもらうことにした。

「シイッ!」

剣をかちあげる、振り下ろす、突く。

でるように斬る、剣を背後の魔ごと貫通させる、上に振り上げた剣の勢いを使い、そのまま振り下ろす。

たちが死んでいく。

彼らは私たち人間よりはるかに強いを持ち、魔力や気力を自然に使いこなす。

だがだからこそ、自ら修練を積むことはない。

自らの才能に飽かせて、努力をしてこなかった。

その驕りが、あなたたちの死因になる。

あなたたちでは、私には勝てない。

しぶきが飛び、腕が舞い、絶が戦場にこだまする。

地獄絵図となった広原で、私はに酔い、興しながら戦い続ける――。

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