《【書籍化決定】公衆の面前で婚約破棄された、無想な行き遅れお局令嬢は、実務能力を買われて冷徹宰相様のお飾り妻になります。~契約結婚に不満はございません。~》やはり彼ですか。
「ウルムン子爵は、未だに奧様がおりませんのよねぇ〜」
「というのも、婚約前から縁談を持ちかけたご令嬢に、夜會で距離を婚約前からガン詰めし過ぎて引かれてしまうのですわ!」
「そしてお斷りされると、やけ酒して周りに絡みますのよ〜」
「そういうことが何回もございましてねぇ〜」
「なぜか反省のがなく、周りから敬遠されて行ったのですけれど」
「それをお諌めしたのが、ボンボリーノ様なのです〜」
「そうしたらベロンベロンに酔ったあの方、なんて仰ったと思いまして〜?」
「『俺の方が形で有能なのに、爵位が高いだけのバカが偉そうに指図すんな!』と怒鳴ったそうですの!」
「それで皆に嫌われちゃったみたいなんですのよ〜」
「殘念ですわねぇ、仕事が出來ると評判で顔は良いのにぃ〜」
「ボンボリーノ様を真正面から罵倒したせいで、周りの方々から反発されてしまって」
「ボンボリーノ様は気さくで人気がございますのに、あの方はし周りが見えていないんですのよ〜」
うふふうふふと楽しそうに、本當に楽しそうにウルムン子爵について暴を始めた三人娘に。
ーーーなるほど、だからお三方はミッフィーユ様にお灸を據えられたのですね。
と、アレリラは納得した。
人の悪い部分をイキイキと語っている三人のお顔は、それだけ見れば頬を染めて目を潤ませ『の話でもしているのかしら?』と思うくらい、可らしいもの。
しかし、いざその容を聞かれたら殿方から心底敬遠されてしまうのでは、と思うくらい、顔と行が一致していない。
「ボンボリーノったら、そんなに人気があったのねぇ〜! 流石うちのダーリンよぉ〜! まぁ、イースティリア様には劣るけどぉ〜!」
ボンボリーノが褒められて嬉しいのか、アーハがの前で手を組みながら満面の笑みを浮かべてを乗り出す。
ーーーでもそこは、あえて下げなくてもいいのでは?
もしかしたら、ボンボリーノとの婚約破棄の件も含めた、アレリラへの配慮なのかもしれないけれど。
逆にアーハが何も考えていないとしても、そしてボンボリーノ本人に聞かれていたとしても、お互いに気にしないのでしょうね、と、そう思うくらいには貶し言葉に悪意がない。
これも一種の才能なのだろう。
きっとアレリラがイースティリアのことをそんな風に貶したら、本気で言っているようにしか聞こえないに違いない。
するとそこで、もう一人何を言っても明るく許される、ミッフィーユ様が反論する。
「あら、アーハちゃん! 私ならペフェルティ伯爵の方がいいですわ! あのムッツリ無想お兄様は、思ったことをめちゃくちゃ辛辣に言うのですよ!? 笑って何でも肯定してくれるボンボリーノ様のが良い男ですわ!」
「そんなことないわよぉミッフィーユちゃん! ボンボリーノは何も考えてないだけよぉ〜。イースティリア様の言ってることは、なるほど確かにって納得出來るじゃな〜い!」
「でも口うるさいですわ! 『気が強いのは點だが、口さがない者は下品だぞ』だとか『惚れた腫れたの前に、公爵令嬢としての教養と禮節をにつけたらどうだ』とか! ヒドいんですよ! ねぇアレリラお姉様も言われてますでしょう!?」
そう問われて、アレリラは考える。
失敗した時、過去の話をした時。
こうすれば良い、もったいない、などは言われたけれど、彼の口からアレリラ自の至らない點について、何らかの注意をけたことが……。
「……ございませんね……」
「え?」
「禮儀禮節、教養や知識。不手際や欠點。そうしたものについて、イースティリア様からなんらかのご注意をけたことはございません。不足している點について、展の解説や教導をけたことはございますが……」
いくら思い返してみても『君にはこうした問題がある』等の言葉をけた覚えがなかった。
「う、噓でしょう!? あのお兄様が!? お父上やお母上の不手際にまでも容赦なく言及するあのお兄様が!?」
ミッフィーユ様がショックをけたように驚きに目を見開く。
「ない、と思います。わたくしの所作や準備に対してお褒めの言葉はよくいただきますが……」
何か自分の方がおかしいのだろうか、とアレリラは不安になった。
注意というものは、長がまれる者に対して伝えることのはずだ。
となると、イースティリア様はアレリラに初めから長を期待していなかった、ということなのだろうか。
そう思っていると。
「お兄様……ズルいですわ……!! 好きなだけは、甘やかして良い顔をしていたのですわね……! ムッツリ無想じゃなくてムッツリスケベ野郎だったなんて……!」
「ミッフィーユちゃぁん、流石に言葉が汚な過ぎよぉ〜! あと多分、アレリラ様は昔から非の打ち所がないアコガレだったから、注意するようなことがないのよぉ〜! きっと自分で々気づいちゃうから〜!」
「……確かに……! アレリラお姉様ですものね。あのお兄様ですら口を挾む余地なく完璧だったのですわ……!」
「そういうことではないと思いますが……」
というアレリラの否定は、むぎぎぎとハンカチを噛み締めるミッフィーユ様と、カラカラと笑うアーハ様のお二人に無視されてしまった。
「確かに、アレリラ様は完璧ですものねぇ〜」
「ミッフィーユ様ですら、お見劣りするくらいですわ」
「こうして二人を見てみれば、なんであんな噂で勘違いをしてしまったのか、己の不明を恥りますわね〜」
どうやらウルムン子爵への悪し様口撃で気が緩んだのか、ナチュラルに三人娘が煽ると。
「貴がた! そーゆーところですわよと申し上げておりますでしょうッ! 二度とお呼びしませんわよ!?」
「「「ヒィ! 申し訳ございません!!」」」
ギッ! とミッフィーユ様に睨まれて、お三方が慌てて謝罪した。
音もなくお茶を口に含んだアレリラは、そのまま空気を変える為にさりげなく話題を戻す。
「エティッチ様。先ほどのお話でウルムン子爵のお人柄は理解出來ましたが、それが何故、派閥離れに繋がるのでしょう?」
「それはもちろん! イースティリア様がウルムン子爵を重要な地位から外した、ということが知れ渡ったからですわ〜!」
「え……?」
アレリラは、訝しんだ。
ーーーあの書類は各所に回す前のものだったのですけれど。
つまり正式な示よりもさらに前の、人事案である。
その話がれた、というのなら、イースティリア様がそのような事を口になさるはずがなく、アレリラも同様に誰かに伝えていない以上、関わっているのは……。
「アーハ様……あの場での話を、どなたかに話されましたか?」
「まさかぁ〜! だってアレって凄く大事な部下決めの話でしょぉ〜? お父様だって下の人間をどう選んだかなんて話しないしぃ〜……って、あ」
アーハはそこまで言って、顔を青ざめさせる。
「あの話、ボンボリーノに口止めしとくの忘れてるかもぉ〜!」
その反応に、アレリラは深く深く嘆息する。
「わたくしも迂闊でした。八年ほど會っていなかったので、扱いを忘れておりました」
「ごごご、ごめんなさいぃ〜!」
「いえ、アーハ様のせいでは」
そう。
ボンボリーノに大事な話をする時は、あらかじめ『これを話してはいけません』と伝えなければいけないのだ。
でないと、見聞きしたことが重要かそうでないかを彼は考えないので、『ついうっかり』口をらせてしまうことが多いのである。
「ーーーイースティリア様に、お伝えしなければなりませんね」
ウルムン子爵は、確かに々人柄に問題はあるのかもしれないが、紛れもなく仕事面では優秀な方なのだ。
イースティリア様としても失いたくない人材であろうことは、アレリラも理解出來る。
慌てたり謝ったりと忙しいアーハを宥め、殘りの方々にもこの場でのことを口止めしてから、アレリラはお暇した。
まるで有能であるかのように勘違いされがちですが、ボンちゃんはあくまでも『されるバカ』です。
つまりバカなんです。
というわけで、せっかく上がった株を自ら下げるトラブルメーカーな面が表に出てしまいました。
ボンボリーノぉ!! お前ーーー!! と思われた方は、ブックマークやいいね、↓の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価等、どうぞよろしくお願いいたします。
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