「私にお話ですか？　なんでしょう」

エヴァは素知らぬふりをしてそう言った。スティーヴンは言った。

「あなたが魔士で、領主の妻にすげ変わりこの街を破壊しようとしていることは知っています」

領主はそれを聞くや、顔を真っ赤にしてスティーヴンに詰め寄った。

「何を言うのですか！　彼は私の妻ですよ！」

スティーヴンは領主の頭に手を置いた。閉じ込められていた記憶を開放する。領主は一瞬立ち眩みを起こしたが、踏みとどまり、目をあけた。

彼は驚愕して、エヴァを見る。

「信じられない。どうして今までこののことを妻だと思い込んでいたんだ？」

「この――エヴァは記憶を書き換えられるのです」

領主ははっと顔を上げ周囲を見回した。

「私の妻は…妻は！！！」

領主はぶと立ち去った。

騒ぎを聞きつけたメイド達が現れた。

エヴァは親指を噛み、メイド達をにらむ。

「私のコレクションをもってきなさい！」

「はいぃ！」

恐れおののいたメイド達が駆けていく。

エヴァはスティーヴンをにらんだ。

「あなたも『記憶改竄』を使えるのですか？」

「ええ。そのようです」

エヴァは歯ぎしりをすると言った。

「厄介な男ですね」

「あなたほどじゃあない」

エヴァは騎士にサインを送ると、後ずさった。

騎士たちが剣を抜いて戦闘態勢にる。

「あなたは処分しなければなりません」

エヴァは手を振ってサインを送る。

騎士たちが迫りくる。

リンダたちが構える。

スティーヴンは魔法壁を張った。騎士たちが飛ばされる。

エヴァは目を剝いていた。

「そんな魔法まで使えるのですか？」

「まあね」

スティーヴンはんだ。

「マーガレットさん！」

マーガレットが飛び出した。倒れている騎士を踏み、高く飛び上がる。エヴァに迫る。

をひねり、回転し、ごと剣を振り下ろす。

と、突然、黒い影が、エヴァの前に現れた。

黒い影は真っ黒な剣で、マーガレットの斬撃を止める。

「速いな。さすがSランク」

赤い髪を揺らし、低い聲で彼は言った。

「お前は何者だ？　私の速さについてくるのか？」

「ただの傭兵だよ」

二人は跳び、距離を取った。

騎士たちがよろよろと立ち上がった、

そのとき、

騎士の一人が立っていた地面が割れ、彼は悲鳴を上げて落ちていった。

そのから次々と何かが現れる。

五。

その生は壁を飛び回り、地面に著地した。

騎士たちは恐れ、逃げていった。

魔族だった。

その中の一に見覚えがあった。

街を破壊された未來で、〈アンチマジック〉を異常なほど連投してきた魔族。

奴はぼうっとした顔をして、指をしゃぶっていた。

魔族たちがんでいる。赤髪の男は「おお怖」とつぶやいて、剣を収め、エヴァの近くまで戻った。

ドロシーが言った。

「魔族なんてこの人數じゃ倒せない」

スティーヴンもそれはじていた。

ダンジョンで戦ったとき、マーガレットでさえ苦戦していた魔族だ。それが五。

エヴァが勝ち誇ったように言った。

「この子たちは私の命令に忠実ですよ。どうしますか、スティーヴン。私に殺されてくれますか？　あなた以外の人間は助けてあげましょう。記憶は消しますが」

スティーヴンは目を瞑った。

そのときだった。

「やあ、遅れてすまない」

城のドアが開いて、何人もの武裝した人間が現れた。

冒険者たちだった。

先頭を歩くのはギルドマスター、ラルフ。彼は言葉をつづけた。

「皆を集めるのに手間取ってしまった」

ラルフは魔族の姿を確認すると、にやりと笑った。

「危なかったな、スティーヴン」

「ええ、ぎりぎりでした」

ラルフは冒険者たちに言った。

「報酬は先に言ったとおりだ！　かかれ！」

冒険者たちは咆哮をあげた。

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