《【書籍化進行中】斷罪された悪役令嬢は、元兇の二人の娘として生まれ変わったので、両親の罪を暴く》52.近付く國境
好王ケヴィンの顔が、れそうなほどセシリアに近づいてきた。
追い詰められたセシリアの頬を、涙が伝う。
だがそのとき、勢いよく扉が開かれた。ケヴィンはきを止め、舌打ちしそうな顔で扉に振り向く。
セシリアもおそるおそる、扉に視線を向けた。
「……まあ、ダンスの練習だったのかしら! 私も混ぜてちょうだい!」
はしゃいだヘレナの甲高い聲が響く。
そこにいたのは、満面の笑みを浮かべるヘレナだった。先ほど戻っていったはずだが、徘徊してまたやってきたのだろうか。
だが、理由などどうでもよい。
気まずそうにケヴィンが離れたので、セシリアはほっとする。
「……々、焦りすぎたようですね。考えてみれば、このような場所で思い出を刻もうとするなど、無粋なことでした。失禮な真似をしたこと、謝罪いたします。我が國に戻ってからにしましょう。ゆっくりお休みください」
我に返ったのか、ケヴィンはセシリアに詫びると、部屋を出ていった。
セシリアは安堵して、力が抜けていく。
ぐったりと椅子に座ってもたれかかる。まだ心臓がバクバクと鳴っているようで、頭も痛む。
だが、ひとまず難は逃れたのだ。煩わしいヘレナだが、今回は助かった。
「ありがとう……本當に助かったわ……」
答えを期待することもなく、セシリアは禮を述べる。
すると、それまで笑顔だったヘレナが、驚いたように表を失う。
何事かとセシリアは訝しむが、ヘレナはすぐに再びり付けたような笑みを浮かべ、はしゃいだように手を叩いた。
「さっきの人、どうしちゃったのかしらね! ダンスはどうなったのかしら! こうなったら、二人だけでダンスの練習しましょう!」
「……それは、また今度にしましょう」
ため息をらしながら、セシリアはヘレナを追い出そうとする。
だが、ヘレナは部屋に居座り、外に出ようとはしない。
「そのドレス、苦しいわよね! 私も嫌いなのよ! 緩めてあげるわ!」
高らかに言い放つと、ヘレナはセシリアのドレスをがせにかかる。
セシリアは戸ったものの、苦しいドレスから解放されるのは心地よかったので、されるがままになっていた。
時代遅れの苦しいドレスを纏っているのはセシリアだけで、ヘレナは今風の楽なドレスであることに、ふと気付く。
結局、セシリアは下著姿になってしまったが、ヘレナはそれでも出ていかない。
「疲れちゃったわあ……」
椅子に座りながら、ヘレナは寢息を立て始めた。
セシリアは一気に疲労が襲い掛かってくるようだ。
侍を呼んでヘレナを移させるべきだろうが、それをするだけの気力もわいてこない。何もせず、セシリアは寢臺に潛り込む。
一瞬だけヘレナが見せた、普段とかけ離れた顔が気にかかるが、狂気に侵された者の行に意味などないのかもしれない。
考えるのも億劫で、セシリアは目を閉じた。
それからずっと、セシリアの側にはヘレナがまとわりついていた。
椅子で寢てしまったためか、が痛いと文句を言いながらも、はしゃいだ様子は変わらない。
よほど馬車酔いに強い侍が気にらないらしく、姿が見えただけで喚き立てて追い払ってしまう。彼が食事を持ってきたときなど、盆ごと投げつけてしまったくらいだ。
「まあ、素敵な馬車ね! 私もこっちに乗るわ!」
さらに、ケヴィンがセシリアと二人で乗るために用意した馬車にも、ヘレナはずかずかと乗り込んできた。
ケヴィンですら困するくらいの強引さと、図々しさだ。
だが、セシリアはこのときばかりはヘレナに謝した。ケヴィンと二人きりなど、冗談ではない。ヘレナでもいてもらったほうが、ずっとましだ。
「陛下、彼も一緒に乗ってもよろしいでしょう?」
渡りに船とばかりにセシリアがねだると、ケヴィンは苦笑しつつ頷いた。
この程度のことを拒絶するほど、は小さくないようだ。
走り出した馬車は、昨日ほどではないが急いでいて、かなり揺れる。ケヴィンがいてもこれほど急ぐのかと、セシリアはうんざりしてしまう。
「國境を越えるまで、我慢してください。正妃を迎えるにふさわしい、豪華な馬車を用意してあります。我が國にれば、馬車を乗り換えてゆっくりと進みますので」
とにかく早く國境を越えるため、ケヴィンも速度を緩める気はないようだ。
セシリアは王太子によって嫁がされたが、円満に決定したわけではない。かなり無理を通しているはずだ。そのため、既事実を作るべく、早く隣國に送ってしまう必要があるのだろう。
このままでは、隣國に連れ去られてしまう。どこかで隙を見て、逃げ出すしかない。
世間知らずのセシリアが逃げ切れるとは、自分でも思っていない。だが、これだけ急いでいるということは、時間を稼ぐだけでも利點になる可能が高いだろう。
もしかしたら、エルヴィスもいているかもしれない。
しかし、馬車はひたすら走り続ける。
たまに馬を替えるために休憩することはあっても、逃げ出す隙などない。
どこにいるのかもわからなかったが、森に近い寂れた道を走っているとき、國境が近いのだと、セシリアにははっきりとじられた。
目や耳ではなく、心に悲痛なびが訴えかけてくるようだ。セシリアが領域から去ろうとしているのを、嘆いている。行かないでくれと引き留められているのだ。
これが國に加護を與えた神の意思なのだろうか。
「痛い……!」
しかも、セシリアの頭が痛み始めた。まるで、これ以上進むなと警告されているかのようだ。
だが、セシリアも進みたくて進んでいるわけではない。
どうしようもないまま、頭痛は強くなっていき、セシリアは頭を抱えてうずくまる。
「セシリア姫……!?」
ケヴィンの焦った聲が響き、それからほどなくして急に馬車が止まった。
止まるときの衝撃でし壁にぶつかったが、頭痛は止んだ。激しい痛みが治まったことで、セシリアはほっとする。
セシリアの様子を見てケヴィンは馬車を止めたのかと思ったが、彼は訝しそうに外の様子をうかがっていた。どうやら、彼の仕業ではないようだ。
すると、怒鳴り聲や金屬がぶつかり合う音が聞こえてきた。
「……敵襲です! 現在、応戦しております!」
何事かと思っていると、護衛の一人が馬車の前に駆け込んできてんだ。
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