「あの、どう言う事です？　詳しく教えて頂かないと何も分からないのですが」

いつもの街著姿のロノムは、早足で歩く冒険者ギルドの職員二人の後ろにつけながら疑問を投げかける。

「すみません、僕達も何も伝えられていないんです。上層部の方から『シルバー・ゲイルの代表者もしくはそのパーティメンバーを大至急出頭させよ』と言う命令しかけ取っていなくて……」

「急な出頭要請となると不安になりますね……。何か相でもしてしまったでしょうか……」

絹と亜麻糸で織られた召しをに纏ったメルティラは、不安そうに言う。

「何があったんでしょうかねえ？　我々基本的には品行方正に生きておりますよ？？」

糸で編まれた暖かそうな服を著こんだアイリスも首をかしげながら、冒険者ギルドの職員にそれとなく聞いた。

「分かりませんけど、上層部の様子を見るにシルバー・ゲイルの皆様に力を貸してしいと言った雰囲気だったような……」

「ロノム隊長達はともかく、僕がお役に立てることは無いと思うので留守番をしていた方がいいのではないでしょうか……」

皮の長ズボンと白い絹製のブラウスをにつけ、いつものキャスケットを被ったルシアがおずおずと聲をかける。

そんな會話をしながらロノム達一行は、冒険者ギルドへと足早に向かっていった。

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冒険者ギルドに到著するとまず真っ先に四人ともギルド併設の浴場へ突っ込まれ、その後ギルドが用意した立派な服に著替えさせられた。

そして豪奢な一室で待機するよう命じられるとすぐに、髭を蓄えたダンディズム溢れる冒険者ギルド役員が現れ説明を始める。

「まず、突然の出頭要請を容赦願いたい。君達シルバー・ゲイルに出頭要請を出したのは、これからある方に會って頂きたいからだ」

「本來であれば君達……いや、我々ですらお目通りも葉わん人であるが、その方たっての希もあり君達に出頭を願った。くれぐれも、相無きようお願いしたい」

ロノム達四人はまだ狀況が摑めずにいるが、冒険者ギルドの役員は簡単な説明を終えると、ロノム達についてくるよう促した。

部屋を出て廊下をしばらく行くと奧には冒険者の集うギルドには不釣り合いとも言うべき華な作りの扉があり、その前で役員は立ち止まる。

「執行役員フィスケルだ。シルバー・ゲイルの代表者及びそのパーティメンバー三名を連れて參った」

「よい、れ」

扉が開くと脇には々しい武裝の騎士団と、華々しい戦歴を持つギルドの役員達が左右に控えている。

そして部屋の奧には、國王軍將の制服である煌びやかなジュストコールをに纏った、しいブロンドの年若く凜々しいが一人。

ロノムはその人を見て息を飲む。

アイリス、メルティラ、ルシアの三人はその人のことを知らなかったが、雰囲気でただ者ではないことを察した。

「アライアンス『シルバー・ゲイル』の一同、この度は突然の出頭要請に応えて頂き謝する。この方は我が國の第二王にして國軍中將、ローレッタ妃である」

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「まず出頭要請の理由について説明させて頂く……」

「よい。私が呼んだのだ。私の口から説明する」

「は……」

傍に控えていた禿頭(とくとう)の従者を遮ると、ローレッタ妃はロノム達に言葉を紡いだ。

「この場に馳せ參じてくれたこと、禮を言う。私がそなた達を呼び立てたのは、あるの行方を追っているからだ」

「そのの名は『紫紺(しこん)の寶珠(ほうじゅ)』。そなた達が苦難に溢れる冒険の末に手にれたと聞く。相違はないか？」

「このような機會に恵まれなかったため不調法があれば、お許し下さい。確かに我等シルバー・ゲイルが、ダンジョン探索の末に紫紺(しこん)の寶珠(ほうじゅ)を見つけ出しました」

ロノムは直立の姿勢のまま答える。

「その言葉を信じよう。現在我が父である國王陛下はある事により……」

「いや、包み隠さず話そう。陛下は辺境での活躍目覚ましいクリストファー伯に下賜(かし)すべく、紫紺(しこん)の寶珠(ほうじゅ)を探している。クリストファー伯との関係を強固にするものであると同時に、対立國家を牽制するためでもある」

「故に、早急に紫紺(しこん)の寶珠(ほうじゅ)を手したいところで今回の発見の報を聞きつけ、我々はアンサスランの市場やその流通経路を當たった。しかし、何処を探そうとも紫紺(しこん)の寶珠(ほうじゅ)は見つけることが出來なんだ」

優雅な仕草でかぶりを振りながら、ローレッタ妃は話を続ける。

「そなた達には紫紺(しこん)の寶珠(ほうじゅ)発見の謝を述べると同時に、次に手渡した先を聞く目的でこの場に呼んだ。どの者に渡したか、教えてしい」

威厳があり、それでいて高圧さはじられない口調と聲でローレッタ妃はロノムに問うた。

「恐れながら我等が発見した紫紺(しこん)の寶珠(ほうじゅ)ですが、市場には売らずまだ手許に保持しております。お許し頂ければ直ちにシルバー・ゲイル本部に立ち戻り、紫紺(しこん)の寶珠(ほうじゅ)を持參いたします」

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「確かに紫紺(しこん)の寶珠(ほうじゅ)であることを確認した。申し訳ないが今はそなた達から譲りけた紫紺(しこん)の寶珠(ほうじゅ)を早急に陛下へと屆けなければならぬ。褒については後日必ず取らす故、今は容赦願いたい」

紫紺(しこん)の寶珠(ほうじゅ)がローレッタ妃及びその従者達によってよく味された後、夜遅くになってロノム達は解放された。

「なななな何かすごいことになってしまいましましたね」

「わ、私、今も張で震えております……。本當にこのようなことがあるのでしょうか……」

「あの、あの、紫紺(しこん)の寶珠(ほうじゅ)を見つけていたとは聞いていましたが、まさかこのような事態を予見しての事なのでしょうか……？　ロノム隊長は神か何かですか……？？」

アイリスとメルティラ、そしてルシアがスイートルームの隅っこでふるふるしながら會話していた。

ロノムは會話には參加せず、立派なソファで腕を組みながら座っている。

ローレッタ妃の逗留(とうりゅう)する部屋を辭した後、四人は冒険者ギルドが用意してくれた部屋でそれぞれ宿泊することとなった。

急な出頭に対応したロノム達に対するギルドからのねぎらいと同時に、もし王から急の要請があればいつでも出頭できるようにするためであった。

現在は四人同じ部屋で今日の出來事をまとめている。

シルバー・ゲイル本部に紫紺(しこん)の寶珠(ほうじゅ)を取りに戻る段も非常に々しかった。

王國の騎士団とギルドの役員數名が帯同し、何事かと思われるような大人數で紫紺(しこん)の寶珠(ほうじゅ)をアライアンスの金庫まで取りに行った。

ロノムは実際に金庫を開けて紫紺(しこん)の寶珠(ほうじゅ)を取り出すまで、生きた心地がしなかった。

「それにしてもロノム様は流石ですね……。あのようなことがあったばかりなのに、今も落ち著いて座ってらっしゃいます」

「やはりロノム隊長はこのことを予見してたんですね……。すごい……すごいです」

「いやー……本當にロッさんがいなかったらどうなっていたか分かりませんよ、謝です。……て、ロッさん？　ロッ……気絶してるゥーーー！！！」

翌朝ロノムは開口一番こう言った。「王様に謁見すると言う不遜な夢を見てしまった」と。