「ようやくダンジョンに辿り著いたみたいだ。結局山岳民族が魔をっているかどうかということは分からなかったな」

ロノムが荷を下ろしながら三人に言う。

山岳地帯を進んだ先のし拓けた場所に、目的のダンジョンは口を開けていた。

ダンジョンは何らかの人為的な力により口が封鎖されていた痕跡はあったが、ロノム達が到著した時には封鎖が破られ、魔の種類によってはいつ外に出てきてもおかしくないような狀況となっていた。

ロノムはアンサスランの冒険者ギルドより借りけてきた魔法鍵を使って一時的にダンジョンの封鎖を行い、り口の目の前に野営地を設営する。

「まずは皆で溫かいものを食べよう。ここに來るまでに結構力を消費してしまっているだろうから」

そう言いながらロノムは荷から燃料を取り出し火を熾した。

アイリスも背負っていた鞄の中から鍋と食材を取り出しスープ作りに取り掛かる。

「そういえば、今回のダンジョンについての報はあまり得ることができませんでしたね。やはり探索している冒険者がないのでしょうか」

アイリスによってスープが作られていく様子を眺めながら、メルティラが聞いた。

「ああ。今セリンヴェイルに集まっている冒険者を見ても、ダンジョン探索を生業にしている人達はなそうだしね。ただ、僅かに拾えた報から判斷してもアンサスランの冒険者ですら難儀しそうなじだ」

「そうなのですか？」

火を熾し終わったロノムは魔法の詠唱を始め、自前の魔法式メモ帳を開く。

「周辺のダンジョンと比べて……、いや、アンサスランのダンジョンと比べても明らかに魔の質が高い。グリフォンやデュラハンといった攻撃的な魔ばかりのようだ。もちろんダンジョン探索に不慣れな冒険者達による記録だから、噂に尾鰭(おひれ)がついている可能も高いけどね」

「なるほどなるほど。あんまり厄介な魔とかでてこないといーのですけどねー」

自己流簡易ごった煮スープを作り終えたアイリスが、ロノムの言葉に答えながら中を皆に取り分けた。

味付けはシンプルに塩との出のみであるが、アイリスの料理に対する見識の高さとアバウトに調味料をれても何故かベストな味付けになるという天才的な能力によって、宮廷料理もかくやと言った味に仕上がっている。

「あまり変な事が起こらず、早いうちに人が魔をる原因となる手掛かりが摑めればいいのですけど」

アイリスからけ取ったスープを食べながら、ルシアが々不安を帯びた聲で言う。

「そうだね。取りあえず我々の目的は中に納められているお寶ではなく人が魔をる原因だ。いつもと勝手は違うけど、気を引き締めていこう」

ロノム達一行は休憩と栄養補給を終えると、再び魔法鍵を開錠しダンジョンへと侵していった。

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「メルティラさん！　厳しいかもしれないがグリフォン三の相手を頼む！　アイリスさんは魔法防を！　かなり魔法力の高い魔が近付いてきている！　恐らくアークメイジだ！　ルシアさんは俺と一緒にアークメイジを対処しながらスペクターを減らしていくぞ！」

知魔法を展開していたロノムの指示と共に三人がそれぞれ自分の仕事へと向かっていく。

「魔(まじょ)に目(め)を付(つ)けられたお姫様(ひめさま)。困(こま)った王様(おうさま)は賢者(けんじゃ)を訪(たず)ね、おまじないを教(おそ)わった。防(ふせ)げ！　プロテクション！」

真っ先にいたのはアイリスだった。

防魔法を展開し遠くから飛んできた炎の嵐を防ぐ。

「ありがとうアイリスさん！　しかし、なんという高火力……うぉ！　あっつ！」

しかし、大方防げたもののアークメイジの放った魔法による火勢は想像以上に強く、ロノムの防は一部焦がされてしまった。

「參ります！」

一方のメルティラは一足飛びに距離を詰め、即座にグリフォン三を相手取った。

「油斷するわけではありませぬが、ドラゴン族と比べればあなた方などものの相手ではございません。悔しければその爪で私を裂いてご覧なさい！」

どこで覚えたのかメルティラは言葉で挑発をしながら、グリフォン達を引き付ける。

魔に人間の言葉が分かるわけではないのだが、それでもグリフォン三はメルティラだけを執拗に狙い続けた。

「ロノム隊長！　アークメイジの姿を捉えました、撃ちますか！？」

「頼む！」

ロノムの聲とほぼ同時に、ルシアがダンジョンの奧に広がる暗がりに向けて數発撃ち込む。

そしてこの世の生とは思えぬような斷末魔が聞こえ、以降は魔法による攻撃は飛んで來なくなった。

「アークメイジを倒しまし……ぐ！」

ルシアがロノムに報告をしている途中、通路の奧から突如參戦してきたデュラハンの拳による重い一撃がルシアの脇腹を突き刺し吹き飛ばす。

「妖(ようせい)たちは騒(さわ)がしい。嫌(きら)いなことには敏(びんかん)だ。中(なか)でも痛(いた)いの大嫌(だいきら)い。発現(はつげん)せよ、治癒(ちゆ)の力(ちから)よ！　ヒーリング！」

しかし、ルシアが一撃を貰った直後にアイリスが治癒魔法を使い、致命傷になりかねない傷を瞬時に癒した。

「大丈夫か！？　ルシアさん！」

「だ、大丈夫です、けます！　アイリスさんありがとうございます、油斷しました！」

「こちらはいくらでも回復しますが、痛いのは嫌だと思うので出來る限り避けるのですよ！　ほら、ロッさんも集中！　後ろから來ておりますよー！」

「す、すまない！　行くぞ……！」

ロノム達四人はそれぞれ持てる力を駆使して次々と魔を倒していくも、その後も兇悪な魔達が五月雨式にロノム達一行に襲い掛かってくる。

襲い來る魔の質も非常に高く、ここがアンサスランであれば恐らく誰も行かないような不人気ダンジョンとなっていたであろう。

ロノム達一行は苦戦しながらも何とか魔達を砂へと還していき、探索をしながらダンジョンの奧へと向かって行った。

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「ひとまず……落ち著いたみたいですね……。ええと、これまでどれくらい魔を倒したのでしょうか」

「グリフォンが二十五、デュラハンが二十、アークメイジが九、そしてマンティコアが五かな。スペクターはもう分からない、途中から數えることもできなくなった」

息を切らしながら何とか立っているというじのルシアの問いに、ロノムが魔法式メモ帳を展開しながら答える。

戦いながら探索し探索しては戦いを繰り返しながら、四人はダンジョンの三番目の層まで到達していた。

「流石にこれだけの連戦は々に堪えますね。そろそろ休憩できるのであればよいのですけど」

「ああ。取りあえずだけど、今のところは付近に魔はいないみたいだ。しは落ち著ける時間になったのでみんな休んでしい」

「承知しました。しだけお休みいたします」

ロノムの言葉にメルティラが盾を壁に立て掛け座り込む。

規格外の力お化けであるメルティラも、流石に厳しかったようだ。

「ルシアさんもし休んだ方がいい。またいつ魔が接近するか分からないからね」

「了解しました。ええと、アイリスさんは大丈夫なのでしょうか……」

「アイリスさんはまだまだ元気みたいだね。流石Sランク冒険者と言ったところだよ」

ロノムとルシアが前方に目をやると、アイリスが通路の向こう側で隣の部屋を鼻歌じりに偵察している。

アイリスもメルティラに負けず劣らずの力お化けであった。

「ロッさーん、隣の部屋に何かあるみたいです。魔法的な力をじます」

そんなアイリスが通路の奧にある部屋を口から覗き込みながら、大聲でロノムに聲をかける。

「了解。アイリスさんし待ってね、別の魔法を展開する」

そう言ってロノムは座り込みながらし呼吸を整え、魔法力知と罠知の魔法を詠唱し二つ同時に展開した。

そして知魔法が隣に広がる部屋の中心付近を程にれたところで、強力な魔法力を捉える。

「罠はないみたいだけど相當な魔法力を持つが中央にあるな……なんだろうか……」

「行ってみますか？」

「ああ、行ってみよう。何か重要な手掛かりが摑めるかもしれない。メルティラさんはどう？　立ち上がれる？」

「ええ、し座らせて頂いたおかげで呼吸も戻りました。アイリス様もお待ちしておりますし、私達も隣の部屋へ向かいましょう」

そう言ってメルティラは立ち上がり再び盾を手に取る。

そしてロノム達一行は隣の部屋の偵察へと向かっていった。