《【書籍化】絶滅したはずの希種エルフが奴隷として売られていたので、娘にすることにした。【コミカライズ】》第37話 カヤ、皆の視線を獨り占め
「これが噂に聞く帝都の街並みなのね…………私、激だわ!」
「おいカヤ、騒ぐな。注目を集めてる」
商業通りにる頃には、カヤのテンションは頂點に達していた。
あれこれと早口で捲し立てながら、全ての店舗の店先に足跡をつけている。そしてその先々で住人の視線を獨り占めしていた。勿論、嫌な意味でだ。
夜にはジークリンデが訪ねてくる事になっているんだが、このままでは全く間に合いそうにない。商業通りを抜けるのに半日は掛かるだろう。お出かけが大好きなリリィですら、カヤのテンションについていけず大人しくなっていた。
「これが騒がずにいられますかっての! ヴァイス、アンタ私の村から帝都に出てこられる確率を知ってて?」
「知らん。三割くらいか?」
口では言わなかったものの、カヤは明らかに帝都に憧れていた。エンジェルベアの事などきっと帝都にる為の口実に違いない。
その様子から察するに、カヤの村から帝都に移住するのはそれなりにハードルが高いことだと予想がつく。
三割という數字にはそれなりに自信があったのだが、カヤは自嘲気味にふっと息を吐いた。
「バカ言ってんじゃないわよ。…………1パーよ、1パー。帝都に來られるのは100人に1人いればいい方ね」
「そうなのか。別に來られない距離では無いと思うが」
カヤの村がエンジェルベアの生息地近くだとするなら、距離的な問題は無いはずだ。馬車でも二、三日あればたどり著けるはず。門での審査だって、元と目的がはっきりしていれば通らないということはないだろう。
俺の言葉にカヤは大きくため息をついて、無知な田舎者に呆れる都會人のような視線を向けてきた。既にも心も帝都人になりきっているんだろうか。
「距離はね。…………問題はお金よ。さっきから見てるけど、やっぱりここおかしいわ。どうしてコーヒー1杯が300ゼニーもするのよ」
「300ゼニー? 寧ろ安い方だぞ、それ」
商業通りの一等地に店舗を構えている所なら、その2倍は取られるからな。この前ジークリンデと行った喫茶店のコーヒーは確かそれくらいだった。
俺の言葉にカヤは言葉を失った。
あそこの喫茶店でパンケーキでも買って帰るか────そんな事を考えていると、固まっていたカヤがき出す。いちいちオーバーリアクションな奴だ。
「噓でしょ!? 300ゼニーったらね、私が一週間せっせとエンジェルベアの様子を確認して、それでやっと貰える金額なのよ!?」
「一週間で300? それは確かにないな。帝都暮らしは夢のまた夢だ」
帝都の中で一般的にエリートと認識されている魔法省のヒラ職員の年収が、大600萬ゼニー。
週給300ゼニーのカヤの稼ぎは、年収に直すと15000ゼニーくらいか。
カヤが自分の村の中でどれほどの地位にいるのかは分からないが、400倍の差がそこにはあった。
帝都で暮らすのは…………まあ無理だろう。300ゼニーでは1日をお腹いっぱいで過ごす事すら葉わない。
「でしょ? だから、アンタには謝してるのよ。私の面倒を見てくれるなんてね」
そう言うと、カヤはまた全ての店舗の店先を覗く奇行に戻っていく。俺は開いた口が塞がらないままその背中を見送った。
…………果たして俺はいつカヤの面倒を見ると言ったのか。そんな記憶は全く無いんだが、もしかして魔法鞄にったのはカヤではなく俺の方だったのか?
「ぱぱ、くまたんねちゃった……」
「ん?」
リリィにズボンを引っ張られ目を向けると、エンジェルベアが石畳に寢転んでいた。疲れてしまったのか完全にお休みモードにっている。
…………無理もない、今日は々あったしな。
俺はエンジェルベアを抱きかかえて歩くことにした。リリィの半分もないエンジェルベアは抱えても重さが分からないくらいで、初めてリリィを抱っこした時も思ったが、こんなに軽いのにちゃんと生きているというのが、不思議な覚だった。
「リリィはまだ眠くないか?」
「うん、だいじょうぶ」
「そうか。パンケーキ買って帰ろうな」
「!! りりー、ぱんけきいっぱいたべる!」
「ちょっとちょっと、聞いたわよ。パンケーキってあのパンケーキなわけ?」
これも一つの地獄耳というやつか、俺たちの會話を聞きつけたカヤが急いで駆けつけてきた。10メートルはあったはずだがよく聞こえてたな。周りの喧騒もあるっていうのに。
「あのパンケーキがどのパンケーキかは分からないが、とにかくパンケーキだ。因みに2000ゼニーするぞ」
「2000ゼニー!? ぶくぶくぶくぶく…………」
カヤはあまりの現実に白目を向いて泡を吹いた。
が、すぐに復活し手の甲で口元を拭う。汚い。
「じゅるっ…………ヴァイス、そのパンケーキは私も食べられるのよね……? 私は見てるだけとか、そんな酷い話無いわよね…………?」
カヤからすれば、自分の月給以上の超高級スイーツ。
一人の乙としてそんなチャンスを逃せる訳がないんだろう、カヤは泡を拭った両手で俺の手を摑んだ。
汚い。
「お願いよ〜〜〜ヴァイスぅ〜〜〜…………」
────ここで冷たく突き放したら、カヤは一どんな顔をするんだろうか。
気にならないわけじゃなかったが、カヤの涙目を見ているとそんな気も失せるのだった。
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