《【書籍化】絶滅したはずの希種エルフが奴隷として売られていたので、娘にすることにした。【コミカライズ】》第38話 ジークリンデ、気が気でない
頭の中がパンケーキで一杯になったのか、カヤは脇目も振らず俺についてきた。一刻も早く月給を超えるパンケーキにありつきたいらしい。
商業通りを順調に進み、俺達はあの喫茶店に到著した。
いつもは混んでいる喫茶店だったが、丁度晝食と夕食の狹間の時間帯だからかすんなりと店することが出來た。そのらしさ故かエンジェルベアも店可能だったので、四人がけのテーブルに俺たちは座った。エンジェルベアは座面の上で丸くなっている。
ほどなくして、人數分のパンケーキが到著した。
眠そうなのでエンジェルベアの分は箱に包んで貰っている。俺の記憶ではエンジェルベアは草食だったはずなのだが、カヤ曰く、
「まあ大丈夫じゃない? 食べなきゃ私が食べてあげるわよ」
との事だった。本當にこいつはエンジェルベアに詳しいのだろうか。
カヤはほかほかと湯気をあげている厚のパンケーキを前にして、わなわなと震えていた。
震える手でナイフとフォークを手に取ると、おっかなびっくり生地に差しれる。まるで綿のようにふわっと千切れるパンケーキに嘆の聲をあげると、そのままゆっくりと口に運んだ。
────瞬間、カヤは壊れた。
「〜〜っ!? なにこれ、なんなの!? ふわふわ天國じゃない!」
「ふわふわ、ふわふわ」
────そこからのカヤは速かった。
ちゃんと味わっているのか不安になるスピードで、カヤはパンケーキを千切っては食べ、千切っては食べ、ものの一分足らずで分厚いパンケーキはカヤの胃袋に消え去った。その間、リリィは二口しか食べていない。凄まじいスピードだった。
カヤはパンケーキを完食すると、恍惚とした表を浮かべた。その視線の焦點は、どこか遠くの輝かしい未來で結ばれていた。
「…………ヴァイス。私、決めた。帝都で一花咲かせるわ。それで、毎日パンケーキを食べるの」
「そうか。頑張ってくれ」
「ええ、ありがとう」
真面目な話、カヤは帝都でどうするつもりなんだろうか。村にはカヤを心配している人もいると思うんだが。
「カヤ、村に一言も言わないでいいのか? 家族とか、いるんじゃないのか」
「それなら大丈夫よ。帰ってこなけりゃ、エンジェルベアに食われたとでも思うでしょ。私達は大きな世界観で生きてるの────あ、すいません! パンケーキおかわりお願いします!」
「エンジェルベアは草食じゃなかったか?」
こいつは本當にエンジェルベアに詳しいのだろうか。
不安で仕方がない。
◆
「…………ヴァイス。…………私が言いたいことが、分かるか?」
「まあ、何となくはな」
夜。
自宅に帰ってきた俺達は、ジークリンデによって床に正座させられていた。
正確には正座させられているのは俺とカヤの二人で、カヤは、
「これなに!? 一どうなってんのよ!?」
というような視線をしきりに俺に向けている。
リリィは部屋の反対側でエンジェルベアと遊んでいた。
部屋の半分を重苦しい空気が、もう半分をほんわかした空気が包んでいる。葉うなら向こうに逃げ出したい。
「…………今朝、私はお前に何を頼んだんだったかな」
額に手を當てて、ジークリンデが言葉を吐き出す。
呆れても言えない、そんな空気を隠そうともしない。
「その依頼なら達してる。鞄の中にってるぞ」
そんな事を言いたい訳じゃないのは重々承知しているが、俺としては依頼達をアピールするしかない。
カヤは恐る恐るジークリンデに視線を合わせて────睨まれ一瞬で下を向いた。
止めとけ、今のあいつには誰も逆らえない。
「當然だ。お前ならどんな素材でも収集してくるのは分かっている」
ジークリンデはそこで部屋の反対側に視線を向け、その後カヤに目を落とした。
「────私が言いたいのは。どうして素材収集の依頼をしたら一人と一匹を連れ帰ってくる事態になるんだ、という事だ」
それは俺が聞きたいくらいだ。
そう思ったので、言うことにした。
「それは俺が聞きたいくらいだ」
「ヴァイス」
「…………すまん」
俺は頭を垂れた。今回は全面的に俺が悪い。
ジークリンデは鋭い視線をカヤに移し、指を向けた。
「エンジェルベアを連れ帰ってきたのは、あの大きさを見れば何となく事は分かる。だがどうして謎のを連れ帰ってくる。一誰なんだ、こいつは」
「カヤよ」
「お前には聞いていない」
「ヒィ…………!」
ジークリンデとカヤの対決は一瞬で決著が著いた。
ただでさえ狀況が不利な上、ジークリンデがこういう場で誰かに負ける姿は想像出來なかった。
「…………ちょっと、ちょっとヴァイス。…………誰なのよこの鬼は」
カヤが小聲で話しかけてくる。ジークリンデのあまりの迫力に俺に助けを求めてきたのだろう。
この距離では完全にジークリンデにも聞こえていると思うが、俺は反応することにした。今はこの窮地をすることが何よりも優先される。
「…………帝都で5番目くらいに偉い奴だ。逆らったら帝都からつまみ出されるぞ」
「!? そんなあ…………ヴァイス、何とかしてよ」
「何とか出來たらいいんだがな…………」
ジークリンデからすれば、どこの誰とも知れないカヤの面倒を見る必要は一切ない。帝都の門を潛れた事すら奇跡のような奴だ、つまみ出されても文句は言えないだろう。
…………そもそも、それを言ったら俺だってカヤの事は全く知らない。よく考えれば俺にだってカヤの面倒を見る必要はあるように思えなかった。
ここでジークリンデにカヤを引き渡して、自分の村に帰って貰うのが最も平和的に解決出來る方法なんじゃないか。
「お願いよヴァイスぅ〜〜…………夢にまで見た帝都なのよォ…………」
カヤは瞳を涙でいっぱいにして俺を見つめる。
「…………はぁ」
ここでカヤを追い返せば、恐らくこいつはもう二度とあの店のパンケーキを食べることは出來ない。
────そんな些細なことが、何故だか気になった。
俺は顔を上げ、ジークリンデにまっすぐ視線を向けた。
「────ジークリンデ。こいつはエンジェルベアの第一人者だ。エンジェルベアの生態から、素材の正しい加工方法まで何もかも知している。そうだな?」
カヤは俺の作戦を読み取り、慌てて顔を上げた。
「えっ、ええ! その通りよ! 私は生まれた時からエンジェルベアと一緒だったの! エンジェルベアの事なら何でも聞いて頂戴!」
三文芝居を始めた俺たちを、ジークリンデは冷ややかな視線で見下ろす。もう既に何もかも見かされているような気がしたが、今更止まることも出來ない。
「カヤは俺達の事を聞いて、特別に著いてきてくれたんだ。魔法省でこいつの面倒を見てくれないか?」
養うだけならジークリンデを頼る必要はないが、流石にそこまでする義理は俺にはない。帝都で生活基盤を作るとなれば魔法省の世話になるのが一番だった。住居の手配から仕事の斡旋まで、魔法省は何でもやっている。
「お願いします! 私、帝都で暮らしたいの!」
カヤは今度は逃げなかった。ジークリンデの冷たい視線を負けじと見つめ返している。
…………その甲斐あってか知らないが、ジークリンデはため息をついて、肩を落とした。
「…………分かった。こいつの事は魔法省で面倒を見よう。────ところでヴァイス、このは本當にエンジェルベアに詳しいのか?」
「エンジェルベアを食だと思ってるくらいにはな」
「はぁ…………そんなとこだろうとは思ったが、面倒事を持ち込むのもほどほどにしてくれ。私の立場だって萬能では無いんだからな」
「本當に済まないと思ってる。悪いが貸しにしておいてくれ」
このペースで貸しを作ってしまったら、俺は一生ジークリンデに逆らえなくなるんじゃないだろうか。
何故だかそんな未來が視えた気がした。
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