《【書籍化&コミカライズ】小系令嬢は氷の王子に溺される》5
朝食を頂いた後、お風呂で頭のてっぺんから足の爪先までみっちりと余す事なく洗われ、その後全マッサージが施される。
この辺りで既にお晝の時間(ランチタイム)だが、ゆっくり食事を摂る時間等ある筈も無く。
ネイルの途中に簡単につまめる様な、カナッペやサンドイッチ等が用意されている。
ネイルが終われば、次はヘアメイクである。
メイク擔當の使用人とヘア擔當の使用人、そしてその補助役がリリアーナの周りを囲み、舞踏會用のリリアーナという一期一會のアートを作り出して行くのだ。
リリアーナ自は顔でとても可らしい顔立ちをしている。
白なはきめ細かく、無駄に塗りたくらずとも素材を引き立てるだけで十分。という事で、今回は本人たっての希により、実年齢に近く見える様にしアイラインを強めに引き、派手になり過ぎない様なメイクにしている。
髪はサイドを緩く編み込んでアップにした。
王宮のホールの壁と同のドレスをに纏い、上品で控え目なネックレスにイヤリングを付ければ完だ。
「とてもお可らしいですわ」
口々に使用人達が褒めてくれるが、姿見の前に立てば、王宮の舞踏會に行くには地味……いや、些か控え目なリリアーナがそこに佇んでいた。
「よし!これなら『王子様は狙ってません』アピール出來ているわよね?」
リリアーナは満足そうに何度も頷いて、本日のエスコート役である兄イアンの元へと向かった。
リリアーナの居なくなった部屋では使用人達が殘念そうに、
「普通ならしでも王子様の目にとまる様に著飾るものなのに、うちのお嬢様は……」
「狙ってませんアピールって、誰に向けてアピールするつもりなんですかねぇ」
「王子様より王宮の食べって……」
「しく見えるかもしれませんけど、著飾ればかなりのものですのに」
「「「「はぁぁ……」」」」
大きな溜息を吐いていたのだが、リリアーナは知らない。
◇◇◇
「イアン兄様」
ノックをすると同時に返答も聞かずに部屋へと飛び込むリリアーナ。
本來ならば許可が出てからるのが正しいのだが、リリアーナに甘いと言うより激甘なこの兄は、全く気にする素振りも無い。
「リリ、いつも可いが更に可くしてもらったんだね」
髪型が崩れない様に気を付けながら、満足そうに頭をでる。
今日のリリアーナはかなり地味……控え目に裝っている筈なのだが、この兄にはそんな事は全く関係ない様である。
どんな姿のリリアーナでも、この兄であればきっと褒めちぎるに違いない。
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