《お月様はいつも雨降り》第三従七目
<登場人>
靜寂秋津 (しじまあきつ)
就活中の大學生、謎の企業からの姿をした人型端末『シャン』を贈られる。
シャン
『月影乙第七発展汎用型』の人型端末
上野カエデ (うえのかえで)
アキツの小學校の同級生 シャンと同型の男タイプの『月影人形』と共に行している
大熊サユミ (おおくまさゆみ)
アキツの小學校の同級生 『ラグ』というシャンと同型の『月影人形』と共に行している
湯岐ジュン (ゆじまたじゅん)
アキツの小學校の同級生 『リグ』というシャンと同型の『月影人形』と共に行している
アキツはこの黒い空間の中を上昇しているのか下降しているのか覚を維持することができない。
それでも暗闇の中でほのかにる縦糸をアキツは引きちぎらながら、両腕で大きく掻くように前へ進んでいく。
(もっと太い糸をたどれば、ルナにまた會えるかもしれない)
細い糸がアキツの四方から再び自分のをまさぐるようにびてくる。それを一本ずつ、ねばりのない蜘蛛の糸を斷ち切っていく。
アキツは自分の周囲にひと際明るく輝く銀の糸を三本、目にとめた。その糸は左に一本と右二本に分かれ、左の糸はすぐ近くにあるようにじた。
アキツが距離を詰めていくと目の見えない厚い壁が行く手を遮った。それならばと大きく回り込み奧の方に見える二本の糸に行こうとするとこれも進むことができない。
(どうして進むことができないんだ)
糸が生じている天を見上げても暗闇が広がるだけで、先を見通すことができない。
「ここで終わりか」
アキツが現実世界に意識を取り戻すと、被害者のの海の中にあれだけき回っていた多くのマネキン人形が崩れ落ちている。
「上様、合はどうじゃ」
「大丈夫、でももっと早くできていれば、こんなに人が死ななくてよかったのに……」
心配げなシャンの聲を耳にしながらアキツは道路に膝から崩れ落ちるように座った。
「あっ……」
道路の向こうから歩いてくるの姿にシャンが気付いた。の傍らにはモーニング姿の人形が従っている。
「神を同期させてからのコントロールの切斷、誠にお見事、理的破壊ではなく、神的破壊の策を複數に対して講じるとは、たいへん恐れりました。あなた様の能力はもちろんのことですが、わたくしと同じ『月影乙第七発展汎用型』の方も、ロット番號はかなり舊式ですが、どうやらそれゆえ試作的な能力がオプションで備わっているとお見けいたしました」
「お前もシャンと同じ人形なのか?」
地面に膝まづいた姿勢のままアキツは話し掛けてきた人形の顔を見た。
「シャン?この汎用型の稱ですな」
「お前は黙っていて」
「おや、失禮、出過ぎたことをしていました」
アキツはどこかで見覚えのあるの顔だと思ったが、それが誰なのかは分からなかった。
「久しぶりね、ボウ、相変わらず冴えない顔をしてるわね」
「カエデ?」
「ようやく気付いたの?あんた、今まで何やっていたのよ、イツキがずっとあなたのことを探していたのよ」
「僕は別に隠れていたつもりはない……」
「噓を付くな!あんたがもっと早くいてくれたらこんなになる前までにどうにかなったのかもしれないのに!」
カエデの怒聲にイツキは自分が何を言われているか何も分からなかった。
「本當だよ、ただ、ルナは助けなければいけないってことだけは」
「ルナ?それこそ何言っているのよ、あんな亡くなった子のことなんか」
「亡くなった?……そうか、何かどこかでそう思っていたんだけど、そうだと思っていたんだけど、何だ、どうして分からないんだ!」
イツキの頭の中に々なイメージが刺すように飛び込む。
「誤魔化すな!そうなってしまった!ルナだってあんたが!」
「カエデ、ボウの言ってることは本當よ、責めたって彼は何も知らない」
カエデの後ろから話しを遮ったのはサユミであった。
「だって、私たちがあれから何年もずっと戦っている間に、こいつはいなかったのよ!」
「カエデ、聞いてちょうだい、彼を今まで巻き込まなかったのはイツキの意思よ」
「イツキの……だって、イツキは探しているって……私たちには……」
サユミの言葉にカエデも聲を詰まらせた。
「ボウの月影さん、混しているボウの意識を強制的に休ませて、じゃないと、ここまで構築した迎撃システムが崩壊してしまうから、私の言ってることをあなただったら理解できるわね」
シャンは言われるままうなだれるイツキの背中に手を當てて、彼の意識をと切り離した。
三人がいる場所に軽の小型乗用車が急停車した。
「お待たせー、あら、カエデちゃんも、まだ避難していなかったの?いやだぁ、ボウまでいるじゃない、ボウ、懐かしい!え、あれ?寢てるの」
「休ませているのよ、ジュン、もうし大きい車はなかったの」
「だって、大きな車を運転するの苦手だもん」
「ほら、早く手を貸して、ラグとリグも!」
「はーい!」
「いきなり騒がしくなりましたね、お嬢様、おや?涙が出ているご様子ですが、瞳に埃でもりましたか、それならどこかで目薬でもお借りしてまいりますか?」
「うるさいわね、ほっといてくれる」
「これは重ねて失禮、ほら、皆さん、お嬢様の席はしっかりと開けておくようにお願いいたしますよ、ほら、シャンなどとしゃれた良いお名前をもらったあなた、みんなを救ったあなたがそんな顔をしていると未來まで暗くなってしまいますよ」
ポンポンと手を叩きながら、執事姿の人形はシャンも含めた他の人形たちに指示を飛ばした。
後は野となれご令嬢!〜悪役令嬢である妹が婚約破棄されたとばっちりを受けて我が家が沒落したので、わたしは森でサバイバルすることにしました。〜
「すまん、我が家は沒落することになった」 父の衝撃的ひと言から、突然始まるサバイバル。 伯爵家の長女ヴェロニカの人生は順風満帆そのもの。大好きな婚約者もいて將來の幸せも約束された完璧なご令嬢だ。ただ一つの欠點、おかしな妹がいることを除けば……。 妹は小さい頃から自分を前世でプレイしていた乙女ゲームの悪役令嬢であるとの妄想に囚われていた。まるで本気にしていなかった家族であるが、ある日妹の婚約破棄をきっかけに沒落の道を進み始める。 そのとばっちりでヴェロニカも兵士たちに追われることになり、屋敷を出て安全な場所まで逃げようとしたところで、山中で追っ手の兵士に襲われてしまった。あわや慘殺、となるところを偶然通りかかった脫走兵を名乗る男、ロスに助けられる。 追っ手から逃げる中、互いに惹かれあっていく二人だが、ロスにはヴェロニカを愛してはいけない秘密があった。 道中は敵だらけ、生き延びる道はたった一つ。 森の中でサバイバル! 食料は現地調達……! 襲いくる大自然と敵の兵士たちから逃れながらも生き延び続ける! 信じられるのは、銃と己の強い心だけ! ロスから生き抜く術を全て學びとったヴェロニカは最強のサバイバル令嬢となっていく。やがて陰謀に気がついたヴェロニカは、ゲームのシナリオをぶっ壊し運命に逆らい、計略を暴き、失われたもの全てを取り戻すことを決意した。 片手には獲物を、片手には銃を持ち、撃って撃って擊ちまくる白煙漂う物語。 ※この物語を書く前に短編を書きました。相互に若干のネタバレを含みます。またいただいた感想にもネタバレがあるので読まれる際はご注意ください。 ※続編を別作品として投稿しておりましたが、本作品に合流させました。內容としては同じものになります。
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