本日は朝の7時にも投稿しております。

まだ未読の方はそちらからお読みくださいませ。

「んっ……！！　このブルーベリーのジャム、味しい！」

「昨日採れた新鮮なもののようです。私もし味見いたしましたが、酸味が控えめで食べやすいですよね」

「後を引く甘さがあっていいわね〜。ちなみに、ブルーベリーは疲労回復とか効果があって、とってもいい健康食なのよ。葉は紅茶にしたら味しいし、良い事ずくめね」

「流石アメリア様、植に関する博識ぷりは健在ですね」

「えへへ、それほどでも〜」

シルフィとそんなやりとりをわしながら朝食を頬張るアメリア。

三食きちんとご飯が出る事に今日も幸せを噛み締めていた。

◇◇◇

──メリサ襲撃事件から、一週間。

あれから、アメリアの周りにいくつかの変化があった。

「ふう……今日も大漁大漁」

バスケット一杯に植を採取してから、アメリアは一仕事終えたように額の汗を拭った。

「待たせちゃってごめんね、シルフィ」

「お気になさらず。これが仕事ですので」

草採取の間、シルフィはずっとアメリアが見える場所に控えてくれていた。

一つめの変化。

アメリアのそばにはずっと、シルフィが控えてくれるようになった。

一人の時に先週のメリサ襲撃事件のような狀況になった時は取り返しがつかなくなるという事で、就寢中の時以外はシルフィを中心として誰かしら使用人をつかせる指示がローガンから出たのだ。

むしろ最初からそうするべきだったと、アメリアのを第一に優先するべきだったとローガンに何度も何度も謝られたのは苦い思い出である。

メリサの侵に関しては、元はと言えば自分の不注意が主原因でもあったのでお互い様だった。

植採取した後は、アメリアのために新たに充てがわれた部屋に植たちを格納する。

これも小さな変化。

最初は自室に植を運んでいたが、タコピーの葉の中に潛んでいた芋蟲がにょろりと這い出し、シルフィが甲高い悲鳴を上げてしまう。

これをきっかけにローガンに、植を格納できるスペースはないかと相談したところ、もう使っていない広い部屋がいくつかあるから好きに使っていいと、神様かと思うくらい素敵なお許しを頂けた。

流石は公爵様、太っ腹である。

アメリアはその部屋を“楽園”と名付け、採取した植をきちんと箱に區分けし保存したり、調合してみたりと、いわゆる研究室のような使い方となった。

もちろんその際もシルフィが控えている。

その影響か、シルフィ自もしずつ植に詳しくなっていって、花や草が持つ奧深さにちょっとずつ興味関心を抱いていた。

アメリアの植フェチの沼にシルフィが引きずり込まれる日は近いかもしれない。

格納が済んだ後のアメリアの行にも、変化が生じた。

屋敷にある書庫へ行き、黙々と本を読むのが日課になったのだ。

ただただのんべんだらりするのはアメリアのに合わず、暇を見つけては勉強に勵むようになった。

実家にはなかった書籍を読めて、自分の知らない知識に出會えるのは好奇心と知識が旺盛なアメリアにとって至福の時間でもあった。

もちろんこの時もシルフィが同行以下略。

そして最後の変化。

これはアメリアにとって最も大きくて、嬉しい変化であった。

もう日が傾き、書庫の窓から見える景に薄暗闇が差してきた頃。

「アメリア様、そろそろご夕食のお時間です」

「今行くわ！」

シルフィのこの呼びかけを聞いた途端、アメリアは栞を挾んで本を閉じた。

どれほど読んでる途中の本が面白く、沒頭していても即座に現実に戻って來れる。

なぜならば夕食というイベントが、今のアメリアにとって一番楽しみなのだから。

……夕食のご飯が一番味しいから楽しみ、といった食い意地の張った理由ではない。

食堂へ向かうアメリアの足取りは軽い。

ふふふーんと鼻歌を歌っていることから彼の機嫌の良さが伺える。

夕食が楽しみな理由、それは──。

「お待たせいたしました」

食堂に足を踏みれると、先客がいつもの席で待っていた。

「俺も今來たところだ」

低音ボイスが鼓を心地よく震わせる。

恐ろしいほど整った顔立ち、長めに切り揃えられたシルバーカラーの髪はるとふわふわしてそうだ。

橫一文字に結ばれたくちびるは不機嫌そうだが、別にそれは彼のデフォルトの表で怒っている訳ではないとアメリアは知っている。

彼のイチオシポイントであるブルーの瞳はしさの奧に鋭い刃のような鋭利さをじさせ、目を合わせると引き込まれて離せなくなりそうだ。

ローガン・へルンベルク。

アメリアの夫となった公爵様。

毎日の夕食は、ローガンが必ず一緒に食べてくれるようになったのだ。

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