「調子はどうだ？」

出掛けてから半日が経ち、俺とフローネは家へと戻ってきた。

ダンジョン探索そのものは數時間で切り上げたのだが、フローネが「嬢様の二日酔いに効く食事を用意したいです」というので市場に立ち寄ったからだ。

「朝よりは大分マシになってきましたけど、まだきついです」

おとなしい様子のガーネットが布団から顔をのぞかせている。

「薬を持ってきたけど飲めるか？」

俺が二日酔いの薬を取り出すと、

「起こしてもらえますか？」

俺は近づくと彼の背中を支え、起こしてやる。

ずっと布団の中にいたからか、彼の背中は暖かかった。

「あーん」

ガーネットは口をひらく。手くらいは使えるのではないかと思うのだが、これまで病気になった時はこうしてもらっていたのだろう。

メイドの代わりではないが、彼のしたいようにさせてやることにし、俺は薬をガーネットの口元に運んだ。

「ほら、水だ」

薬を飲ませると、水差しを口元へと持っていく。

彼は素直に応じると、水差しに口をつけ、コクコクとを鳴らした。

「んっ……」

しして、彼が水を飲むのをやめると、水差しを引く。

彼の口元に水滴がついていたので、袖機の上に置いてあるハンカチで口元を拭ってやった。

「ありがとうございます、ティムさん」

ガーネットは「ほぅ」と一息吐くと目を瞑る。

「どうだ、楽になったか？」

薬の効果はどうなのか気になり、俺は彼に確認をする。

「なんだかお腹の中からスーッと気持ち悪いのが引いていくみたいです」

どうやらちゃんと効いているようで、彼の表が先程よりも和らいでいた。

「それは良かった」

「ところでフローネはどうしたのですか？」

ガーネットはキョロキョロとをかすとフローネを探す。どうやら彼のことが心配らしい。

「フローネは今料理をしているぞ。二日酔いに効く料理があるらしくてな、市場で々食材を買ってきたんだ」

「そうですか、助かります」

口元を緩め微笑んだ。フローネの気遣いが嬉しいのだろう。

「ところで、フローネの狩りの様子はどうでしたか？」

彼は真剣な表を浮かべると、今日の狩りの果について聞いてきた。

「モンスターに怯える様子はなく、普通に戦っていたな。狀況判斷もできていたし、あの様子なら俺たちと一緒に冒険者をやるのも問題ないだろう」

俺は、ダンジョンでフローネがリーフキャットに対して行った立ち回りについて話をしてやる。

「早く彼にも『アイテムボックス』を覚えてもらいたいですよね。そうすればダンジョンの中でも味しい料理が食べられます」

ガーネットの中では既にフローネと冒険をするのは決定しているようだ。確かに彼の食事をダンジョンでも食べられるとなると、今後の冒険者活が楽になるに違いない。

「それにはまず、調を整えないといけないけどな」

「そうですね、がんばります」

俺がそう言うと、ガーネットは橫たわり安靜にするのだった。

「本日の買取は金貨七枚と銀貨三十二枚になります」

ガーネットの二日酔いから一週間が経ち、俺たち三人は順調にダンジョン探索をして金を稼いでいた。

「本日の狩りで、ティムさんのパーティーはDランクに昇格となります」

「やりましたね、ティムさん」

「おめでとうございます。主人様」

左右からガーネットとフローネが聲を掛けてくる。

ガーネットは満面の笑みを浮かべ喜び、フローネは一歩引いた様子で祝いの言葉を口にする。

「今日のところは祝いでもするか？」

パーティー昇格ということで、特別に外食でもしようかと提案する。

フローネに毎日食事を用意してもらっているので、たまには彼にも休みが必要だろう。

「いいですね、最近は稼ぎも安定していますし豪勢に行きましょう」

ガーネットは両手を合わせると笑顔を浮かべる。

「フローネも今日は遠慮しないで好きな料理を注文してくれよな」

黙っていると遠慮しそうなのでフローネにそう言うと、

「なるべく多くの味を盜めるように頑張ります」

彼の料理人としてのプライドがあるのか、真剣な表を浮かべるとそう言った。

それぞれ目的がまったく違っているようだが、食事は各々が楽しめればそれでいい。二人の様子を見ていると……。

「あっ、ティムさん。々よろしいでしょうか？」

「なんでしょうか？」

二人が店を決めているのを待っていると付嬢が聲を掛けてきた。

「サロメから連絡がはいっております、何やら急の用事だそうです」

「サロメさんから？」

一どのような要件何だろう？

後では二人が俺を見ている。どうやら既に行きたい店が決まったようだ。

「二人は先に行っておいてくれ。俺も話を聞いたら向かうからさ」

付嬢が奧にある通信魔導へと案してくる。

長時間になるかもしれないので、今の彼たちを待たせるのは酷というものだろう。

「わかりました、先に一杯注文しておくので、終わったら來てくださいよね」

俺が頷くと、ガーネットはフローネの手を取り出て行った。

「それじゃあ、お願いします」

俺は待たせていた付嬢の後に続くと、話を聞きにいくのだった。