《快適なエルフ生活の過ごし方》特別編:森の中の邂逅

お嬢さん(から)お逃げなさい

森の中を進む。どうやらまだ二頭ほど居るそうな。でも人食べてないなら無理に倒さなくてもいいんじゃないか?って思ったけど、「三頭で分け合ってた」って言われた。ちなみに報元はドライアド。あ、ニアじゃなくてこの世界のドライアドさんです。

「はじめまして、私はドライアド。あなたはハイエルフ様ですね?」

「噓だっ!」

というやり取りから紆余曲折を経まして暗黒熊(ブラックベア)の居場所を聞き出しました。もう先客が居るとの事なんですが……先客?

向こうから剣戟の音が聞こえる。「怯むなっ」「放てっ」とか言ってるからある程度統率が取れてる軍隊かなんかなのかもしれない。

んー、ここからじゃ見えないな。まあ死にそうだったら助けにろう。そう思って茂みから向こうを伺う。白地に赤いラインのったプレートメイル……全じゃなくて部だからブレストプレートって言うんだっけか。揃いのそれを著た數人の男たちが戦闘をしてる。相手は……暗黒熊だ。五メートルの巨を囲んで攻撃を仕掛けている。

「そいやー!」

裂帛の気合いと共に手に持った剣で斬り掛かる。だが、その刃は貫く事も傷を與えることさえ出來ずに弾き返される。

あれだね。外皮に対して非力過ぎて防が抜けないんだわ。どいつもこいつも剣でしか攻撃してない。武格も似たり寄ったりだ。これ、詰んでない?

「隊長が來るまで持ち堪えろ!」

ほほう、その隊長さんとやらが來たら狀況を打破出來ると? それはなかなかの強者なんだろう。ただまあこの人たちがそれまでもつのかってのはまた別の話だよね。

「しまった!」

「ロイ!?」

木のっこに足を取られて男の一人が転倒する。どうやらロイというらしい。はじめまして、こんちには、そしてさようならになりそうだ。ここは手伝ってやるか。

「エアカッター」

現代日本では使う訳にはいかない殺傷力の高いかまいたち。狙い誤たず振り下ろそうとした右手を切斷した。

「グルァ!?」

「はーい、そこまで。大人しく排除されてね」

暗黒熊は私の姿を見ると大きく咆哮して向かってきた。あー、明らかにヘイト稼いじゃったな。

「グラビトン」

自重の大きい巨には頗る有効な重力魔法。暗黒熊は自重で地面にをめり込ませている。

「君にも生活はあるのかと思うけど、村人たちの安寧の為にここは涙を呑んでくれたまえ」

そのままトドメをさす。あ、ハル、向こうに人も居るから抜きは後でよろしく。

「貴様ら、何者だ!?」

おおっと、こっちに剣を向けてくる? いや、あんたら助けたの私なんだが?

「ボクワルイスライムジャナイヨ?」

「何、貴様、スライムなのか!?」

ハル、ややこしくなるからやめろ。ええと、私は……

「貴様らが何者であろうと、隊長が來れば終わりだ!」

「隊長さん?」

「そうだ。暗黒熊すら一人で十分というお方だ。貴様らも直ぐに片付けてくれる」

いやなんで片付けるとかになるの? 協力者だよ、私?

「そうすればその暗黒熊は我らの手柄!」

手柄の橫取りが目的でしたか! いやいや、そんな訳には。私らも一頭は仕留めてるけど一応依頼なんだよね。ズルは良くない。

「何の騒ぎですか?」

ガサガサと森が揺れて暗黒熊を擔いだ一人のが姿を現す。ってこの聲、この姿は!?

「隊長!」

「楓ちゃん!?」

「はい? あ、ひとみさん、ハルさんも!」

そう、暗黒熊を擔いで來た「隊長」とは楓ちゃんだったのでした。

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