この狀況を思い出した私は頭を下げる。

「レイナルド様。も、申し訳ありません……！　勝手に人を引きれたりして」

「それ自は気にしなくていいよ。ここはフィーネのアトリエでもあるんだから。もし友人ができたら好きに連れてくればいい。……しかし君は別だ。どうせ勝手に押しったんだろう？　すぐに出ていってもらいたい」

ミア様に向けられるピリリとした聲に、私までお腹が痛くなりそう。

そして、レイナルド様はフィーネとフィオナが同一人だと知っているかもしれないんだった、と思い出す。

辻褄は合っている……気がする。ミア様はフィオナを退學に追い込んだ。それを知っていれば、こんな風に厳しい対応になるのだろう。

けれど、私が『フィーネ』としてミア様に持つのはし違う想で。庇うわけではないけれど、私はレイナルド様にお話しすることにした。

「ミアさんは、このアトリエを見學しにいらっしゃったんです」

「……見學？」

怪訝そうなレイナルド様に向けて、さっきミア様がお持ちになったカゴを差し出す。

「これはミアさんが持ってきてくださった素材です。私が開発している魔力空気清浄機の素材として使ってほしいと」

「そうだったのか。……ミア嬢。それは本當か？」

私に対するらかな聲と、ミア様に対する姿勢の違いがすごすぎます……！　けれど、そんなことでは怯むミア様ではない。アカデミーでもよく見たらしい笑顔を浮かべてレイナルド様に告げる。

「ええ。同じ工房で働く友人としてお手伝いをしにきたのですわ。私はアカデミーも出ているし、見習い錬金師としても先輩ですし！」

「友人、か？」

「はい！　今日はフィーネと一緒に生をする約束をしていたんです」

親しい友人のようにきゅっと腕を摑まれて思わずがこわばってしまう。

「しかし、ルールに基づいていないようだな」

それは私も気になっているところで。ミア様がお持ちになった素材は、明らかに工房から持ってきたものだったし、當然、一緒に生をする約束もしていない。

「なにかルールなんてあったかしら？　こっそり持ってきただけなんだけど？」

「あ、あの、錬金工房の倉庫から私用で素材を持ち出すのは基本的に止です。もし使いたい場合は、上長の許可を得る必要が」

「えっ？　そんなの聞いてないわよ！」

ミア様はそうだと思います……！　でも、私も配屬初日に教わった基本中の基本です……！

あっけらかんとして悪びれる様子のないミア様と、それに震える私たちの會話を聞きながら、レイナルド様は眉間に皺を寄せている。

ミア様が持ってきてくださった素材は私が眼で見ても劣った素材だらけ。魔石がポイントになる魔力空気清浄機の生には使えない。

鑑定スキルをお持ちのレイナルド様には一目瞭然だと思う。

でも。錬金師工房の雑用が大嫌いなミア様が、わざわざ誰かの目を盜んで素材を集めるなんて。しかも、まだ休暇中の私がアトリエにいるかもしれないという不確かな予想だけでこんな面倒なことをするなんて。

何か特別な事があるとしか思えなかった。

「もういいわ。今日のことは忘れてちょうだい」

ミア様は私に囁くと、アトリエを出て行こうとした。私はその腕をガシッと摑む。

冬の始まりの頃からじていた、違和。勉強が大嫌いなミア様がわざわざここに來た理由を知りたい。

そのためには……！

「レイナルド様。ご飯に、しませんか……！」

勇気を出して告げた私の言葉に、レイナルド様は心底驚いたように目を丸くしたのだった。

次回の更新は明日の20時です。

今日から、書籍の発売日の9/25まで毎日更新です……！

ブクマや評価で応援していただけると勵みになります。

【お知らせ】

活報告で書籍の特典をお知らせしています。

公式サイトでは試し読みのほか麗な口絵も公開されているので、ぜひチェックしてみてください(ㅅ´ ˘ `)♡

（試し読みをしていただくと、かなり加筆しているのがわかると思います……！）