《快適なエルフ生活の過ごし方》特別編:トライアングラー

君は誰と子作りする?

それから先のプリシラちゃんの様子はまるで悪鬼だった。いやまあ本の悪鬼である鬼姫さんがついてるけど。

「それ、來たぞ」

「でえい!」

掛け聲と共にメイスが振り下ろされる。ちなみにこよ相手のゴブリン、鬼姫さんに膝を砕かれている。襲いかかられる心配が無いとなれば、先程の恨みを晴らすのみ。江戸の敵を長崎で討つ的なものになってしまってるが。いや、同じゴブリンなんだからあながち筋違いという訳でも無いのか。こいつも遠慮なく襲って來てたしね。

「そうじゃ。先ずは生命を奪う事に慣れねばな。ゴブリンの恐怖を克服せねばならん。どんなに強くともかねば意味は無いからの」

その言葉に反応すらしないで夢中でゴブリンの脳天にメイスを何度も振り下ろすプリシラちゃん。あ、頭蓋骨砕けた。

「一撃で何とかしてしいところじゃが非力では仕方ないの。他に何か出來んのか?」

「神聖魔法……癒しの魔法があります」

そうだよね。聖様と言えば癒しの力だよね。

「ふむ、なるほどな。ならば……」

鬼姫さんが別のゴブリンをトレインして來た。そしてそれに傷を付ける。

「おい、小娘、この傷を過剰に癒してみよ」

「過剰に? 思い切り魔力を注ぎ込めば良いの?」

「そうじゃ。ほれ、やってみい」

プリシラちゃんはゴブリンの傷口を呪文で癒した。普通に治って……あ、待って待って、なんか傷口が蠢いてボコボコしながらに拡がってる!?

「おお、やはりな。過剰に快復すればが耐えられんようになってはじけると思っておったわ」

「噓……」

オーバードーズ? いや過回復ってやつか。細胞が働かなくなるのは困るけど活発になりすぎるのも危険だよね。ガンとかあるし。

「ならばこれを修練すればゴブリンたちなぞ殲滅できよう?」

「回復魔法をこんな事に使いたくありません!」

プリシラちゃんは涙聲でんだ。結局鬼姫さんもつまらなそうにメイスの使い方だけ教えたのだった。

「ただいま……ってどなた?」

「プリシラ、おかえりだ。こんやつは新しい仲間のリューだべ」

「リューだ。トーマスの伴になった。よろしく」

「は、はあ!?」

どうやらリューちゃんはトーマス君の嫁になる気満々のようである。トーマス君は鈍だから今頃びっくりしている。気付いてなかったのね。

「な、何言ってんのよ。こいつは田舎者の三男坊よ? あんた、竜人でも高い位の奴じゃないの?」

これはリューちゃんのなりから判斷したものだ。服裝じゃなくて姿な。低位の竜人は人間から遠くなるのだ。

「関係ない。トーマス強い。強い者の伴になる。これで問題なし」

「だから、そんな、ハレンチな……」

「おお、遠慮はしないでいい。そなたが正妻なのか? なれば我は側室でも構わぬ。子種はしいが」

「正さ……違うわよっ!」

これは恥ずかしさからなのか、それとも嫉妬からなのか。それともいわれのない言いがかりだと思ってるのか。私は男の機微に詳しくないので分からない。でもまあ見てる限りはプリシラちゃんは決して嫌ってはないんだよね。

ギャーギャー言い合ってる二人をトーマス君がまあまあと宥めて次の目的地に向かう。次は帝國領のエルフ自治區である。ええと、これは私が早めに話付けといた方が良いよね? よし、澪ちゃん、場所教えて。私、ちょっと行って仲間になるやつ見繕ってくるわ。

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