《【書籍化&コミカライズ】創魔法の再現者 ~『魔法が使えない』と実家を追放された天才年、魔の弟子となり正しい方法で全ての魔法を極めます。貴方の魔法は、こうやって使うんですよ?~》122話 勝手

そこからは、會話とも呼べない會話と魔法での戦いが続いた。

お互い、自分の抱えたものを。鬱屈した思いを魔法に乗せて吐き出して。ただ暴れるように、癇癪を起こした子供のようにみっともなく、ある意味で好き放題に。

魔法戦としては、駆け引きも魔法の質も下の下の下。魔法に慣れた貴族から見ればひどく醜く、これが仮にも王家の人間が振るう魔法かと呆れるほど稚なものだろう。

でも、だからこそ。そういうしがらみにいつでもどこでも縛られてきた彼らが、そのせいで満足に喧嘩すらできなかった彼らが。

世界に選ばれなかった、この二人が。今までの分を全て取り返すかのように荒野の一角で、今までの人生で一番自由に魔法を使って毆り合う。

その場の誰もが、何ひとつ口を挾むことなくその戦いを見守っていた。

この兄妹喧嘩に生産があるのかと言われれば、まぁ間違いなく全くない。話し合いでどうにかできるのであればそうする方が良いに決まっているし、時間も魔力もこの迫した狀況では無駄遣いをしていることこの上なく、効率的に考えれば全てが無駄だ。

……それでも。

これは、この二人に必要なこと。

それだけは全員が何故か確信できたから、誰も手を出さずに靜かに行く末を見屆ける。

やがて、お互いの魔力が盡きてきた頃。

「……どうすれば、良いって言うんだよ」

何度目か分からない、ヘルクの恨み言。気まぐれかそれ以外の意図があってか、ライラが答える。

「それも分かっているでしょ、お兄様は馬鹿だけど愚かじゃないもの。……どうしようもないわよ、これ以上。これまでと同じようにまた頑張るか、諦めるか。普通の人間である私たちには、どこまで行ってもその二択しか用意されてない」

だから、と一息ついて。

「私はこの先も好きに、自分勝手にやるわよ。……とりあえず、お兄様があの怪に突貫して死ぬことは卻下ね」

「ッ、なんで」

「私がそうしたいから。……もっと言うなら、私は普通の家族がみだから。家族の願いを葉えるための行しかできないから」

矛盾した答えではないか、と軽く目を見開くヘルクだが。それに対する回答も、続けてライラの口から放たれ。

「ああ、お兄様のみとは真逆のことをする羽目になるわね。……でも、悪いけど」

軽く指先で後方を示すと、呆れ顔で告げる。

「リリィが、お兄様が死ぬことをんでないのよ」

「──っ」

「愚昧で蒙昧な兄と可い可い妹の願いがかち合ったなら、誰だってそうするでしょ? というわけで」

流石に、度重なるカルマとの戦いで消耗していたヘルクに最初から勝ち目はなかった。

攻撃は全て結界で封じ込められ、その結界を纏わせた拳の一撃で。

「……くそ」

苦々しい表と共に、ヘルクが地に沈んで。

その戦いは、幕を閉じた。

気絶したヘルクを引きずり、ライラがこちらにやってきて。そのままヘルクをエルメスの足元に投げて寄越す。

「……えっと」

「お兄様の協力が必要なんでしょ? なら後は勝手に話し合いなり何なりしてちょうだい。まぁ相変わらず自力でカルマを打倒することは諦めてないだろうけど……」

しだけ、ライラは表を和らげて。

「……それでも、抱えて溜め込んだものを吐き出した分だけ。多なりとも他の人の話に耳を傾ける余地くらいは、殘ってるはずよ」

「……ありがとうございます」

「お禮を言われる筋合いはないわ。……私は好き勝手にやっただけだし、これからも好き勝手にみのためにく」

続けてエルメスを靜かに赤い瞳で抜いて、告げる。

「──どうせ、あなたもそうでしょ?」

「っ」

その言葉が。

何故か一番、に刺さった。

「というわけで、私は自分の陣営に戻るわね。貴族どもを騙くらかすのも楽じゃないのよ、あの聖様もなんだかんだお人好しだからさっさと私が──」

話もそこそこに、ライラが引き続き自分のやることをやるべくその場を後にしようとする──が。

そこで、ひしと。彼の服の裾が小さな手で摑まれた。

その犯人の名をライラが訝しげに呼ぶ。

「……リリィ?」

「いやですわ」

「嫌って」

「お兄様を止めてくださったことは謝します。……でもそれはそれとして言いたいことが々ありますし、あれだけ好き放題やったならわたくしの言葉にも付き合っていただくのが筋だと思いますわ」

まさしく自分がやったことなので反論できないライラに向けて、今度はリリアーナが上目遣いで、しだけ拗ねた響きと共に。

「……それと。単純に──久しぶりにこっちに來て下さったお姉さまと、もうしお話ししたいのです。……だめ、でしょうか」

それをけて。

ライラがここまでで一番、実に様々なを含んだ顔をたっぷり數秒懊悩と共に見せたのち。

「………………十分だけなら、付き合ってあげる」

その言葉に、リリアーナがぱっと喜びの顔を満面に浮かべ。

ライラの腕を引っ張る彼と苦笑するニィナを護衛に連れて案され、奧の方へと消えていった。

こうして、一先ずはある程度丸く収まる形でヘルクを引きれることには功したわけだが。

この兄妹喧嘩を含む一連の流れは、各々に様々な形での影響を與え。

「……人間は、正しいことしかしちゃいけないのか、か」

とりわけ、エルメスも。

突き刺さったヘルクの言葉、そしてライラの言葉を踏まえて。

もう一度、ラプラスに揺るがされた自分の在り方を考えるべきなのかもしれない、と覚悟を新たにして。

対カルマの戦いは、次の──決著にほど近い段階へと、進んで行く。

し短めですみません!

ようやく再起編、準備が整いつつあります。次回更新は10/8(土)予定。

ここからワンエピソード挾んで決戦に向かっていく予定なので、ぜひこの先も読んで頂けると!

そして、もう一つお知らせが。

恐らく次回更新時に合わせる形になると思いますが……

魔法関連ではないのですが、一つ告知があります!

よろしければそちらも楽しみにしていただけるととても嬉しいです!!

何卒、よろしくお願いいたします、

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