《【書籍化】薬でくなったおかげで冷酷公爵様に拾われました―捨てられ聖は錬金師に戻ります―》幕間 公爵閣下と王陛下

翌々日、私は登城した。

リズの作った魔力石がある程度溜まったので、陛下に獻上するためだ。

の話になるので、陛下の執務室に案される。

到著すると、陛下が召使い達や臣下も皆下がらせて話すことになった。

あらかじめ、最初だけでも出所を隠したいと伝えてあったからこその措置だ。

王陛下も事を理解してくれて、「可い甥との家族としての會話だからな。下がって良いぞ」と言ってくれていた。

人払いが済んだ所で、さっそく陛下が本題にる。

「よう來た。それで、肝心の魔力石はどれほど?」

波打つ黒髪をまとめ上げて簡素なティアラを被った琥珀の瞳の王は、ディアーシュの母方の叔母である。

「こちらです」

自分で抱えてきた箱を、テーブルの上に置く。

鍵を外して蓋を開けると、王陛下が目を見張る。

「こんなにも大量に……。しかも大きいな」

一つ摘まみ上げた王陛下が、じっと検分していた。

「魔力もじる。間違いなく魔力石だ。これをどうやって手にれたんだね?」

「先日、保護した子供が作りました」

結論を答えてから私は経緯を説明した。

「アインヴェイル王國側へ侵した者達がいまして。ラーフェン王國の兵士と思われる人間は処分しましたが、彼らに追われていたのが小さな子供だったので保護したのです」

「その子供が持っていたのではなく作ったと?」

私はうなずいた。

「実際に目の前で作らせてみたこともあります。間違いなく魔力石を作していました」

「そんな技があったのだな」

「錬金というそうです」

私が答えると、王陛下はしばらく考え込んだ。

「どこかで聞いたような覚えはある。魔法とは違うのか?」

「はい。魔力は使いますが、魔力をに込める技のようです。石の中に魔力を込めて、この魔力石を作っていましたので」

「では、その者がいれば、採掘などしなくとも、魔力石の安定供給ができるのだな?」

「そうです。作れるのは一人だけなので、數に限りはありますが。……どうされますか?」

一応、王陛下に判斷を仰ぐ。

自分はリズを隠すつもりだが、王陛下がどう判斷するか。それを先に聞いて、説得材料にする意図もあったので、先に王陛下の意向をたしかめた。

「……匿すべきだろうな。せめてもうし、國の狀況が安定するまでは。魔の討伐が進み、流が回復さえしたら人心も鎮まる。それから発覚する分には、そなたも守りやすいだろう」

私は心でほっとする。

優しくとも叔母は王だ。リズを自分の手元に引き取って、魔力石の作を行わせることも考えられた。

「同時に、作れる者を増やす必要もあるだろうが……可能か?」

それは私も必要だと思っていたことだった。

リズが無理をせずにどれだけ作れるのか測るため、今まで口にはしてこなかったが。

「リズ……本人に話をしましょう。教えることで、本人の生活の保証が得られるなど、納得できる利益があれば話はつけられると思います」

私はおかしなことを言っているつもりはなかった。

王陛下に指摘されて、初めて気づく。

「その子供は、利益についてきちんと認識できるのか?」

「……それは」

私はうなずくしかない。

「元は平民だったからなのか、金銭覚はしっかりしているようです。そして自分の利益や必要なものを考える力はありました。……十二歳ぐらいに見えるのですが、年齢よりも大人びた子供のようです。もしくはが小さいだけで、もうし年齢が上なのかもしれませんが」

そんな疑を抱くほど、リズは大人び過ぎていた。

「十二歳……我が息子と同じくらいか」

王陛下には、一粒種の王子がいる。

私にとって従弟にあたる王子は十二歳。

剣と魔法の練習が好きだけど、勉強が苦手な王子。その勉強が、どう役に立つのかを解いてもなかなか納得できないらしい。まだ遊びたい盛りだからと家庭教師は考えているようだが……。

王子よりも、はるかにリズは大人びすぎている。

陛下が言いよどんだのも、その差を考えたからだろう。

「苦労をして育った子が、下手な大人よりもしっかりしていることも、世事に通じていることもままあるけれどね」

王陛下は自分に言い聞かせるような調子でそう言った。

「お前がをわかっている人間だというのなら、間違いないんだろう。私はお前の人を見る目を信用しているからね、ディアーシュ」

「有難き幸せでございます」

甥である自分に深く信を置いてくれているのは、とてもありがたいことだ。

「そなたに、我が國の救世主になるかもしれないその子供の保護と渉を任せる。魔力石についても、國で全て一度買い上げ、順次、王都周辺から街道へと魔の討伐範囲を広げていこう。それでいいか?」

全て任せると言われ、私は陛下に一禮する。

「ありがとうございます」

これでリズのことは決著した。

公爵家でその権利を守りつつ、リズという財産を保持することになったのだ。

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