《【書籍化】薬でくなったおかげで冷酷公爵様に拾われました―捨てられ聖は錬金師に戻ります―》暖房がわりの石を作ってほしいんです

――暖房用の石、略して『暖石』を他の人にもたくさん作ってほしい。

そうディアーシュ様にお願いをした翌々日、魔力石の調合指導をしていたあの三人がまた呼ばれた。

また、私から作り方を學んでくれると言う。

実は三人とも魔力石作りで忙しいと思いつつ、魔力の込め方に慣れてる人の方が覚えるのも早いから、頼みたいとディアーシュ様にお願いしてみたのだ。

すると「ぜひ」と即答が返って來たらしい。

當日、三人はものすごくうれしそうに教わりに來てくれた。

「暖房の代わりになるを作ったって!? 本當かよ!」とゴラール。

「今度は一日で覚えてみせますとも、ええ」と學習意に燃えるアレク。

「新しい収源になりそうですねぇ! うちの店主も大喜びだったので、お願いしますよ錬金師さん!」商売ができると喜ぶニルス。

それぞれ理由は微妙に違いつつも、ものすごくやる気に満ち溢れていた。

水を差すのには忍びなかったが、一つだけ私は言わなければならないことがあった。

「すみません。作るためにはどうしても朝日が必要なので、一日だけでは無理なんです」

三人はそれぞれの理由から、目を丸くした。

「朝……それじゃ今日中とはいかねぇか」

「僕は朝弱いんですよ……」

「朝日とか、太の昇る時間まで必要になるなんて、錬金って複雑ぅ」

「でも、小さいだけでも安価に売ることができれば、凍死者は防げます」

貧乏な人が買うことはできなくとも、低価格であればあるほど、國が買い上げたり神殿が購して買えない人に寄付ができる。

そうするためには、中流層が薪のお金と比べてすぐに買いたくなるような値段にしなければならない。

大量生産さえすれば、それが可能になるのだ。

「凍死者か……」

私の話に、遠い目になったのは商人のニルスだ。近しい誰かが、凍死したのかもしれない。なにせアインヴェイル王國は雪國だ。霊がいてもいなくても、そういうことが起りやすい。

それはゴラールもで、長く生きている間に、そういった形で失った知人がいたのだと思う。

「薬で凍死は救えないですからね」

渋い表で言ったアレクは、それで悔しい思いをしたことがあったのかもしれない。

三人とも、この『暖石』を作る意味を理解してくれたようだ。

ほっとしつつ、たくさん作れるようにしたい理由をもう一つ付け加えた。

「あと、魔力量の減の度合いからして、この石が暖かさを保てるのは三カ月です。なので必ず一冬に一度は買い足さなければなりません」

アインヴェイル王國の冬は長い。半年近くに及ぶ。

「買い続けてもらうにも、あまり高価すぎると平民には難しいはずです。そして貴族であっても、費用がかかりすぎると、魔のことが心配なくなったら一切買わなくなるでしょう。なので価格をあまり高くしたくないのです」

もしアインヴェイル王國に霊が戻ったら、人はもう一度『暖石』と薪の値段を比べるだろう。

その時に、競り負けてしまうと売れなくなる。

値段を下げようにも、沢山売れなければ値段は下げられない。大量に購するだろう貴族や富裕層が買わないと、どうしようもないのだ。

「じゃあこれも、好きに作り方を広めてもいいってことか?」

ゴラールの言葉に、私はうなずく。

「作れる人ならば、作っていただいてかまいません」

そうして講習會がスタートした。

せめて二日で學び終えたい! と言っていた彼らだったけど、簡略化した作り方だけを教えるにしても、さすがに三日かかった。

必要な魔力図の講習を行い、図を綺麗に描けるように練習。

それから試作一個目を、晝間の太で調合。

これは三人ともなんとかできたので、次は翌日、朝日で作ったものを持ってきてもらって確認するという形をとったのだけど……。

手順や加減が、どうしても自己流になってしまいがちなうえ、他にも問題が発生した。

朝日が當たるように外に置いたら、日影になってしまっていた者一名、貓が日影を作ってしまった者一名いるという狀況だ。

対策を行って次の日に確認、さらに魔力図を綺麗に書き寫せるようになり……と様々な過程を経て、三人は見事に『暖石』を完させた。

他の人に作らせるのには、やっぱり一週間はかかったようだ。

そして難しさに斷念する人もいて、作れるようになったのは魔力石の半分の人數。

でも、いいこともあった。

私がみんなの練習を見ていて思いついた、弱い『暖石』……『溫石(おんせき)』を生産できるは沢山いた。こちらの方は『暖石』より簡単だったのだ。

『溫石』は首から下げている本人だけじわっとあったかいぐらいの効果がある。

そうして一週間後にはちょろちょろと販売開始。

富裕層や中流層、多は貧しい家でも、高くなった薪を買うよりはと『暖石』を購する人はたくさんいた。

そして貧しい人には、王家が『溫石』を買い、施しとして分け與える、という方向になったらしい。

私の理想としていた、『高価な薪を買わなくても冬を越せるようになる』は達できそうだ。

実のところ、薪拾いや薪になる木を、魔力石を購して護衛を雇って切ってくるのはどうなのか、と職替えをしようとしていた人達もいたらしく、需要と供給的にも問題ないらしい。

どうあっても煮炊きする時に、薪は使うので。

そんな中、王家はこの寒さの原因を探していた。

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