《【書籍化】薬でくなったおかげで冷酷公爵様に拾われました―捨てられ聖は錬金師に戻ります―》弾は使って試さないといけません

端から見ると、大きなどんぐりを袋一杯に拾っているみたいだ。

アガサさん達も手伝ってくれた。

兵士のうち二人はスコップを持ってきてくれていたので、それで地中に埋まったままの実を掘り起こしてくれたりもした。

土の中に埋まっているでも、腐りにくくて殘っているのだ。

地面を探すのなら葉も……と思ったが、こちらは放置。

こちらは水分が抜けてしまうと茶く変し、おがくずのように崩れて腐葉土になってしまう。なので綺麗な葉を見て採ったところで、家に帰るころには青銀のしいが無くなってがっかりするのだ。

おかげで青銀樹は葉をむしられずに済んでいる。

腐葉土も、あちこちキラキラと輝いている場所があって見ていて楽しいが、おそらく分的には種と変わらないだろうし、含有量もなそう。

実を袋にいっぱい採取した私達は、そこでお弁當を食べ、しゆっくりしてから帰ることにした。

ただし……公爵邸へ直行することにはならなかった。

アガサさんが寄り道を提案したからだ。

「もうし回らない? し北へ行ったところに公爵家所有の耕作地があるの」

私は(きっと、畑の様子を見に行きたいんだな)と思って了解する。

今まで公爵家の兵士や騎士が王都周辺を見回っていたし、その時に畑のことも見ていただろうけど、手れとかできなかったはず。

「葡萄畑でしたかね。食われちまいましたかね」

畑のことを知っている壯年の兵士が言うと、アガサさんが苦笑いした。

「魔どころか、にも食べられてしまいかねなかったものね……。先日の報告だと、小や鳥が食べた跡があって、収穫量もちょっと心もとないみたい」

「わしらには酸っぱくても、には十分なんでしょうなぁ」

「魔って葡萄も食べるんですか?」

「葡萄ぐらい食べるだろ。芋とか作を荒らす奴がいるじゃないか」

疑問を口にしていた若い兵士が、目をまたたいている。

私は魔が雑食だとは知っていたけれど、がいないと作を食べるだけで、主にはが好きなのは本當だ。

散策に來て時間が経ち、打ち解けた雰囲気が加速したからか、兵士達も気軽に會話を始める。

私もそうしてくれると一緒に行していてほっとするので、みんなの會話を聞いて楽しんでいた。

でもそんな楽し気な雰囲気は、葡萄畑が遠くに見える場所へ行くまでの間だけだった。

悲鳴が聞こえる。

遠くに、逃げる人の姿が小さく見えた。

家ほどの大きさの黒いイノシシが走り回り、人を追いかけている。

このあたりは巡回した後だったのか、近くに騎士や兵士の姿がない。

「魔法をかけるわ、急行して討伐を!」

アガサさんが魔法をかけながら指示をする。

兵士のうち三人が、緑の風を足元にまとった馬を走らせた。

その手にはすでに剣が握られている。

殘り二人とアガサさんは、私を連れてその後を追った。

全員を討伐に向かわせなかったのは、アガサさんの魔力の溫存のためもあるんじゃないかな。全員の馬に魔法をかけると負擔が重いから。

先行した三人に追いつく頃にも、まだイノシシ型の魔は倒しきれていなかった。

きは鈍くはなっていたが……。目が戦意にあふれてるし、口の端からは紫の吐息がれ出ている。

……あの煙の分って何なんだろう。研究してみたいようなしたくないような。

私はアガサさんに提案した。

「アガサさん、弾を使わせてください」

畑からし離れてるので、被害を広げずにいけると思うし、イノシシにもっとダメージをれて、一気に倒してもらった方がいいかもしれない。

なんか、耳や傷口からも紫の煙が上り始めてるし……。

アガサさんはし迷ったみたいだ。

何が問題なったのかはわからないけど、悩むように眉間にしわが寄ったが、ややあってうなずいてくれた。

「わかったわ。その魔から一度離れて!」

號令に、近くにいた兵士達がじりじりと遠ざかる。

さらにアガサさんは、遠巻きにしていた農民にも振りで離れるよううながした。

イノシシ型の魔の方は、じりじりと離れる兵士の一人が三十メートルほど離れたところで、急に姿勢を低くした。

マズイ。

私は急いで持っていた弾を投げた。

黒く固めた弾玉は、小さな火花を散らしながらイノシシの前に落ちる。

一気に走り出したイノシシ。

「もっと遠くに!」

アガサさんが兵士にぶ。

イノシシは弾の落ちた場所へさしかかり――轟音が鳴り響いた。

一気に火花とが弾け、イノシシがと土煙で見えなくなった。

土煙から、イノシシが飛び出した時は、私も弾が効かなかったのかと思ったけど。

數歩走って、その勢いのままイノシシは橫倒しに地面をってかなくなる。

やがてじわじわと、魔はその姿を黒い靄に変えていき、空気に溶けるように消えていった。

「倒した……」

ほっとした私は、乗っている馬にべったりともたれかかりそうになった。

「倒せてよかったわ。魔法の威力が戻ってから、ここまで手こずる魔が王都近くに出るのは珍しいわね」

アガサさんは周囲を見まわしながら疑問を口にした。

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