私はアガサさんと顔を合わせてうなずき合い、ディアーシュ様の部屋にった。

まだ本調子ではないのか、部屋の椅子に腰かけたディアーシュ様は、し億劫そうなきをしていた。

私とアガサさんは、看病が必要だった場合のために余分に置いていた椅子に座る。

「単刀直に言う。復調次第、もう一度魔王に攻撃を行う。そのために、後でまた私の魔力をれたものを渡しておく」

「わかりました」

アガサさんは冷靜にけ止め、うなずく。

しかしディアーシュ様の話は続いた。

「ただ、今回は必ず果を出さなければならない。魔王をれなかった場合は、私が魔王となる」

「え……」

ディアーシュ様が、になるという意味？

もう人生が終わってしまうかもしれないのに、ディアーシュ様は淡々としていた。

「魔王のとなったら、目的を達するだけで一杯になるだろう。がれ替わっても、まだ以前のの人格が殘り続けて、お前達を攻撃するかもしれない。その場合には私を放置して逃げるように」

逃げる。

ディアーシュ様を山に一人で殘していくのだ。

他人の魔力に飲み込まれて自分が消えていく恐怖を味わっているディアーシュ様を。

ふと、王陛下の言葉を思い出す。

――どうする気なのだ？

王陛下はそう尋ねていた。私はそれを魔王の倒し方だとばかり思っていたけど、違う。

（ディアーシュ様が魔王になるのかどうかを、確認したんだ）

だから、苦しそうな表になった。

でも彼は王だから、國を救うことを考えたら、ディアーシュ様を止めることもできない。

どれほど苦悩しただろう。

両親を失ったディアーシュ様を、王陛下が養育したと聞いている。もう一人の子供のように思っていただろうに。

そして私は……。

「まだ、諦めたくありません」

ぐっと目に力をれて、ディアーシュ様を見る。

アガサさんはもう覚悟してしまった表をしているけど、私は嫌だ。

「一日だけ待ってください」

自分で考え出せないのなら、知っていそうな人を頼るのみ。

「確実に、ディアーシュ様がそのままで魔王だけをる方法がないか。ディアーシュ様の行を手助けできるアイテムがないのか、考えさせてください」

私の頼みを聞いたディアーシュ様は、「一日だけなら」とけれてくれた。

その晩。

私は錬金の研究をしたいからと頼み込み、個室をもらい、レド様を召喚した。

「お願いします！」

私は床に膝をついて頭を下げた。

目の前に置いたままだった椅子の座面に頭がぶつかったけど、そんなに痛くなかったので無視無視。

頼まれたレド様は、きっと渋い表をするだろうと思った。

けれど見上げたその貓顔には、微笑みすら浮かんでいる。

「魔王に勝負を挑もうという心意気は良いな。吾輩のみにも合う。助力をしてやろう」

「吾輩のみ？」

変な言葉が聞こえた。

「レド様は、炎の魔王と戦いたいのですか？」

「々因縁があってな。魔王はお互いに仲が良いわけではない」

何やら魔王同士でも嫌い合ったりしているらしい。

私の計畫にしても、魔王を殺すわけではないので、気軽に手を貸してやろうという気になってくれたのだろう。

「さて、何がふさわしいかな……」

と、レド様は可い貓型の姿で腕を組み、考え始めたとたんのことだった。

閉じた目をカッと開き、私の寢臺の方を見る。

その橫には椅子があって、著ていた服の他に、リュックにった荷を置いていた。

荷は一日分くらいの食糧やいくらかの金銭、水なんかをれている。萬が一の場合には、これを持ってすぐ逃げられるようにしているのだが。

「あれにっているを見たいんだが？」

レド様がリュックを指さしたので、言われた通りに持って行く。

「何か使えそうながあるんですか？」

レド様は無言でリュックを開け、中を見る。やがて引っ張り出したのは、私の服だ。

しかも子供姿の時の。

大人の姿になったら、罪人服のような貫頭に服が変わってしまったのだけど、アガサさんが用意してくれた服に著替えたとたん、貫頭は元の子供服に戻ったのだ。

ポケットに手を突っ込んだレド様は、青い石と金屬の欠片がくっついたを取り出す。

「あ、火山に落ちてただ」

なんとなく拾っておいたのだ。

あんな場所にあるにしてはおかしいのだけど、だからこそ気になってしまって。

「これがどうかしましたか？」

「おそらく、今の炎の魔王に関する品だ。今そのを乗っ取られている自のな」

「え……」

そんなだったの!?　私はびっくりしてしまう。

レド様の方は「ふふふ」と笑い出す。

「いいが作れそうだな。ああ、きっと魔王の活を一時的に止められるくらいには効果があるだろう。そこに、魔王の魔力をいくらか奪える効果を與えておけば、さぞかし……ふふふ」

なんだかレド様の表が不気味だったけど、とにかく目的のが作れそうだ。

「急いで作るぞ！」

そう言われて、私はレド様と一緒に急きょアイテム作をすることになった。

最初はレド様に案だけ聞いて、あとでゆっくり……と思っていたのだけど、レド様いわく、時間がないらしい。

「吾輩はなんでも知っているから、エセ聖とやらがかなりここに近づいていることがわかるのだ。到著まで三日というところだ」

「もうそんなに近くに!?」

王都から連絡が発された頃、同時に出発したとしても、こんな遠い場所にそんなに早く來られるものなのか。王陛下からの報だって、早馬を乗り継いで急いで屆けられただろうに。