《オーバーロード:前編》會談-5
ジルクニフを乗せた6臺の馬車と、20人の騎士たちは草原のど真ん中にあるナザリック大地下墳墓に到著する。
騎士たちや者の視線はログハウスり口の部分に立つ、1人の――ユリ・アルファに向けられていた。6臺の馬車からは全鎧を纏った3人の騎士――4騎士の殘りの3人が降りる。巨大な盾を持つ者、ハルバードを持つ者、立派な鎧を著た者の3者だ。その他にフールーダの高弟たる魔法使いなどが降りだした。
各員が慌しく行する中、本來であれば一番最後まで開かれるはずが無い馬車のドアが開かれた。
降車臺すら準備されていないのに、姿を見せたのは全員の中で絶対最後に降りるべき人――皇帝たるジルクニフだ。慌てて、降車臺を準備しようとき出す者たちに手を差し出して止めると、ひらりと飛び降りる。
そして優しい微笑を浮かべると、ユリの方に向かって歩き出した。後ろではジルクニフと同じようにフールーダたちも飛び降り始めていた。流石に皇帝がああやって降りたのに、降車臺を待つなんていう行は取ってられない。
周囲の反応でその登場した――そして自分に向かって歩いてくる人が誰かわかったユリは丁寧に頭を下げる。
「お待ちしておりました」そして頭を再び上げと、自己紹介を行う。「私は皆様を歓迎するよう任せられたユリ・アルファと申します」
「それはありがたい。私はバハルス帝國の皇帝。ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスだ。まぁ隣國での地位など聞いてもしょうがないだろうから、単なる1人の人間としてこの場合は親しみを込めてジルで結構だよ」
笑顔をジルクニフはユリに向ける。
皇帝というよりも非常に気さくな1人の青年という笑い方だ。好青年という言葉を當てはめるとしたら、今のジルクニフほど似合う者がいない。であれば心がいてしかるべきの笑みをけても、ユリのまじめな表は崩れない。
そしてそんな瞳を覗き込んでいたジルクニフも、僅かな波紋すらユリの中に起こらなかったことを悟る。
趣味じゃないのか、はたまたは仕事中は仕事と自分から切り離すタイプなのか。はたまたは絶対の忠誠を捧げるべき対象に命じられた仕事の最中だからか。
読み取れないな。
そんな呟きはジルクニフの心のだけに留める。
「お戯れを。主人――アインズ・ウール・ゴウン様より皇帝陛下を歓迎するようにけておりますので」
「そうかい。それは殘念だ」
おどける様に、ジルクニフは肩をすくめる。
「それはゴウン殿は?」
「準備を整えているということですので、もうしばらくお待ちいただければと思います」
「なるほど。ではどこで待たせていただけるのかな? あのログハウスかな?」
「いえ。せっかく、日差しも良いのです。ここでお待ちいただければと思います」
「ふむ」伺うように、ジルクニフの視線が細くなる。「了解した。では我々は馬車に戻るとしよう」
その聲に幾人かの騎士の瞳に憤りに似たがわきあがっていた。例え隣國の――場合によっては敵となっているかもしれない者の居住地とはいえ、一國の皇帝に対してこの場で待てというのは無禮ではないかという思いだ。しかし、そんなことを言い出すものはいない。自らの主君が納得しているのに、臣下である自分たちが言えるはずも無いから。
「お待ちください」ユリの靜かな聲が響く。「こちらでお待ちいただく以上、失禮の無いように持てせとアインズ様よりお仰せつかりました」
アインズ様という言葉にちょっとだけの驚きを浮かべ、それからジルクニフは楽しそうに頷いた。その作を了承ととったユリはログハウスに向き直る。
「では準備をさせていただきます。來なさい」
ユリの命令に従い、ログハウスの扉が開き、巨大な何かが出てくる。
「げぇ!」
1人のび聲が起こった。ここが調理場であれば、鶏が絞め殺されるときにあげたものだと思っただろう。
その聲を上げた人。それが誰か理解した帝國の人間、全員に揺が走った。
それは帝國主席魔法使い、フールーダ・パラダイン。かの伝説の13英雄に並ぶとも上回るともされる男。それほどの人間が、驚愕のために目を大きく見開いて、ログハウスから出てきたものを凝視していた。
それに引っ張られるように、全員の視線が同じ一點を凝視する。
ログハウスから出てきたのは、暴力の匂いが立ち込めるような黒鎧を著た者だ。その巨軀で大理石でできたようなテーブルを擔ぎ上げながら、外に出てきたのだ。
どさりと言う音が聞こえる。
フールーダの近くにいた高弟の1人が真っ青な顔で力なく、両膝を地面につけていた。いや、連れてこられた4人の高弟。ほぼ全員が同じような狀態だ。真っ青な顔を驚愕という形に凍りつかせ、ぐような短い呼吸を繰り返す。
「ありえん。馬鹿な……いや、ありえん。あれはデス・ナイトなのか……?」
まるで我を忘れたように、言葉をぼそぼそと呟くフールーダ。その景は誰がどう見ても非常事態だ。フールーダの狀況から騎士たちは危険と判斷し、黒鎧に対して僅かながらの警戒態勢をとる。
フールーダは信じられなかった。
目の前での景。
自らがいまだ支配することのできない最強のアンデッドが、持ってきたテーブルを草原に下ろす姿は、まさにメイドのシモベのようだ。それが何を意味するのか理解できないほど、現実からは逃避してはいない。
小船が嵐の日に波に弄ばれるように、フールーダは神的は強い揺によって翻弄されていた。
しかしフールーダは鋼のごとき意志を取り戻す。
その可能だってあったのだ。ガゼフに匹敵するアンデッドを使役するという段階で。
自らよりも上位の魔法使いには會いたかったのは、フールーダの願いだ。
それがいま葉っただけじゃないか。そうやって必死に自らの心の安定を保つ。それができないフールーダの弟子たちは強いストレスから過呼吸を起こしていたのだが。
「どうした? じい」
ジルクニフの心配そうな聲。親しい人間の異常を不安がっているような態度は演技であり、その面にあるのは、何が起こったのか説明しろという強いものだ。フールーダは普段であれば即座に説明をしただろう。
しかし、今はそれがわずらわしい。お前に説明することすら時間が勿無い。そういった態度を表に出し、フールーダはジルクニフを完全に無視する。それに驚くのは周囲の人間だ。
自らの主君にそのような行為をとるのだから。
「問いたい! あれはデス・ナイトでよろしいのですかな?!」
「はい。左様です」
フールーダの張したような聲に対して、ユリの聲は何も変わらない平然としたものだ。
「あれは、ゴウン殿の?」
「はい。アインズ様のシモベの一です」
「なんと! あれをゴウン殿は支配しているというのか!」
ここまでくれば周りで聞いている誰でも話の中はわかる。つまりはあのデス・ナイトを支配するというのはフールーダをして偉業といえるのだろうと。
では――では、だ。
あれはどのように判斷すればよいだろうか。
ログハウスから再び、デス・ナイトがテーブルを持って出てくる。
そして先ほどのデス・ナイトに渡した。それはバケツリレーと言われる行為に近い。無論、姿を見せるのは2では終わりではない。計5のデス・ナイトによるバケツリレーだ。
フールーダのが揺らぐ。
その表はあまりにも信じられないものを見たように、凍りついたまま一切かない。
「あ……あ……」
ぺたりとフールーダは地面に座り込む。その口を大きく開けた呆けたような表で。
「フールーダど、殿?」
騎士の1人がぐ様に問いかける。問いかけたのは1人だが、周りにいた騎士全員の顔に同じようなものが張り付いていた。それは帝國最強とされる4騎士の上にもだ。
フールーダはかの13英雄に匹敵するとも超えるとも言われる男。騎士からしてもその圧倒的な魔法の數々は驚愕に値し、帝國最大の守護者と尊敬するものは多い。そんな尊敬を一心にける男のその小さな姿。それは圧倒的な混を招くものだった。
フールーダの瞳に力が宿る。しかし、その瞳には周囲の混はってこない。當たり前だ。それ以上に先に確認しなくてはならないことがあるのだから。
フールーダはユリに問いかける。
「お聞きしたい。あ、あれも?」
「はい。アインズ様のシモベですが?」
「あ、ありえない……どんな魔法で……いや、私との能力の差……。質問が、ゴウン様は第何位階までの魔法をお使いになるのですかな?」
「それはアインズさまに直接お尋ねください」
すっぱりと切り捨てるような冷たいユリの発言にフールーダの表が凍る。
そして沈黙が支配した。
騎士たちは単なる一介のメイドの言葉とは思えず、ジルクニフは興味深げに、そして――
「ふふはははははは」
――それを破壊するように笑い聲が上がる。心の底からの歓喜に満ち溢れた、この場には――そして今までのフールーダの行からすればイメージに合わないそんな笑い。
あまりの気持ち悪さにバジウッドは眉をひそめる。いま、そんな笑いを浮かべる狀況だろうか。どう考えても警戒すべきタイミングであり、笑いは相応しくない。それともユリの言葉に、自らでは理解できない何かがあったのか。
自らの仲間である他の騎士に警戒の合図を送ると、立ち上がったフールーダに近づき問いかける。
「フールーダ殿。ここは危険な場所なのか? 陛下の警護に――」
「――馬鹿が」
フールーダがはき捨てるようにバジウッドに言い切った。罵聲を飛ばされても、バジウッドは何も言えなかった。正面から見つめてくるフールーダの瞳に宿った危険な、それに威圧されて。
「お前にはここがどのような場所か理解すらできていない。……桁が違うのだよ。あのデス・ナイト1で軽く見ても騎士がどれだけ必要となるかわからない化けだ。それを5。お前たち4騎士が全力でかかって何とか1け持てて終わりだ。それすらじ取れず、どのように警護するんだ? この狀況下で守れると思っているのか? 武裝を解いているからといってもその特殊能力はいまだあるのに?」
英雄のオーラ。
フールーダから叩きつけてくる気迫はまさにそれだ。ただ、心地よいものではない。
宿った魔法の力は巨大であり、帝國最強の4騎士すら同時に相手にできる。そういう英雄たる人の狂気が、まるで聲とともに荒れ狂うようだった。
騎士たちが鳥を立てたのも仕方が無いだろう。
そんな中、ナザリックに所屬する者、そしてジルクニフのみが平然としたままだった。
「しかし……デス・ナイトを支配する。それもあれだけの數を! 素晴らしい! 素晴らしい! こんな近くの地にかくも偉大な人がいたとは! 素晴らしい! ふははははは!」
瞳の端には涙があり、その顔には壊れたような笑いがあった。
――いや、違う。違うのだ。
それは帝國の主席魔法使いという地位をかなぐり捨てた、魔法という深遠を覗き込もうとする1人の男の素顔だ。フールーダの英雄然とした表の下にいつもあったものが、強大な魔法使いの存在を確認したことで剝げただけにしか過ぎない。
「陛下。さて、さてどうしますか? 転移の魔法を使って逃げますか? 今ならお逃げになることもできると思いますぞ? いやいや、この地の方が寛大であればですがね」
フールーダの嘲笑を浮かべるような表に、ジルクニフは笑いかける。
「そっちの顔の方が好きだぞ、じい。そして聞き返そう。俺が逃げると?」
フールーダの顔に亀裂が走る。その裂けたような狂人の笑いは、見る者に恐怖を與えた。
「流石ですな、陛下。私と同じですな。私は見てみたい、會ってみたいですな。あのデス・ナイトを使役する稀代の大魔法使い。アインズ・ウール・ゴウン殿に」
「それほどか」
1ですら支配できないフールーダに対して、5を支配するアインズ・ウール・ゴウン。単純に考えればフールーダの最低でも5倍は優れた魔法使いということになる。
「ははは、まさにそうですぞ、陛下。おそらくは私をはるかに凌駕するでしょう。私が生きているうちこれほどの力を持つだろう魔法使いに會えると思うと興しますな」
フールーダの弟子たちはみな顔悪く、騎士たちも自分たちがどんな存在の庭にいるのか悟ったようで顔が悪い。平然としているのはジルクニフ、フールーダぐらいだ。
「陛下、どうすればいいんですか?」
バジウッドが困したように、ジルクニフに問いかける。ジルクニフは全員を見渡す。
フールーダや弟子たちは別としても、騎士たちの神は徐々に張り詰められていっている。それはいつ切れてもおかしくは無いほど。これはかのフールーダの異常っぷりや、いまの話で聞いたデス・ナイトの強さ。そういったものによって対策がまるで浮かんでいないことに対する不安が起因している。
抗えない死が近くにあるよといわれて、平然としてられるジルクニフが異常なのだ。ちなみにフールーダは魔法という叡智への興味が死への恐怖を凌駕している。
「どうしようもなかろう?」
「はっ? それでよろしいので?」
「……魔法に関してはもっとも詳しいじいがあれなんだ。もはやすべて向こうに任せるほかあるまい」
「逃げるとかどうですか?」
「逃げられると本気で思っているのか?」
バジウッドは逃げる算段の相談が聞こえているにもかかわらず、平然と々な準備を整えているメイドに目をやる。
「人質にとったらどうですかね?」
「取れるのか?」
「……無理っぽいですね」
実際、取れそうな気がしない。バジウッドからすると、デス・ナイトよりもあの1人のメイドの方が底が知れない。他の3人の騎士たちもそれには同意の印を送ってくる。全力で戦いを挑んで、數十秒持ちこたえられるかなんて、馬鹿な想像をしてしまうほど。
「……準備ができました。こちらでおくつろぎください」
その言葉に反応するように見れば、草原の上に椅子とテーブルが複數用意されていた。純白のテーブルクロスがかけられ、パラソルが影を作っている。荷運びをしていたデス・ナイトたちは全員、邪魔にならないようログハウス橫に並んでいた。
「飲みもご用意させていただきました」
テーブルの上に置かれた、デキャンターには冷たそうな水滴が付著しており、中にオレンジのの揺らめきがあった。そしてその橫には明かつ薄いガラスで出來たであろうグラス。そのどれもが巧な細工が施されていた。
皇帝という最高級のものに包まれて暮らすジルクニフをして、驚きのために目を見開くほどのものばかりだ。
「それと何かございましたら、私どもにお聲をかけてください、皆」
ログハウスが開き、メイドたちが出てくる。あまりのしさに、今まであったことを一瞬とはいえ忘れてしまうほどのメイドたちだ。
ジルクニフたちは當然知らないが、ルプスレギナ・ベータ、ナーベラル・ガンマ、シズ・デルタ、ソリュシャン・イプシロン、エントマ・ヴァシリッサ・ゼータの戦闘メイド5人だった。
「ぐぶっ!」
再び奇怪な聲がれ、全員の視線が再びフールーダに集まる。フールーダはよろよろと歩くと、今回このためだけに強制的に呼び戻されたナーベラルに話しかける。
「……お、お1つ聞きたいのですが、よろしいでしょうか?」
非常に敬意を込めた、禮儀正しい話し方だ。もしかするとジルクニフに話しかけるとき以上に心がこもっているようなじさえある。
「はい、なんでしょうか?」
「あ、ぁあ。アインズ・ウール・ゴウン殿――いや」フールーダは大きく頭を振った。「アインズ・ウール・ゴウン様はあなた様よりも上位の位階の魔法を使えるのでしょうか?」
「……はい。當然です」
ナーベラルの目がき、自らの何もしてない指を捕らえる。見れば僅かにそこには今まで指をしていたような跡があった。
「おお……。失禮ですが……あなた様は……第8位階は使えるのでは?」
「……左様です」
その言葉を聞くとフールーダはよろよろとテーブルの所まで戻り、椅子にどすんと腰を下ろす。本來であれば最初に座るべき皇帝を差し置いての行為だ。誰かが叱咤してもおかしくは無いだろう。しかし誰も注意できない。
フールーダのプルプルと肩を震わせながら、溢れている歓喜の笑みを手で覆うことで隠そうとしている姿。そしてそのメイドが言った第8位階魔法の行使を可能とするという発言。それがどれほどの意味を持つか、それがわからないほど馬鹿なものはこの場には來ていない。
騎士たちが互いの顔を伺う。
英雄たるフールーダが到達しているのが第6位階魔法。それを超越した領域にある第8位階魔法。それがどれほど桁が違うのか、理解は當然出來ないが予測は十分に出來る。
それは単純に目の前のメイドはフールーダをはるかに超越した存在だということ。そしてそんな存在がメイドをしているというイカレた事実。
もはやあまりの事態過ぎて頭が痛くなったとしてもおかしくは無かった。
「はははははっはっは! 凄い! 凄いぞ! もはや個人では到達できるはずが無い、第8位階の魔法を可能とする存在がここにいたんだ! 聞いたか、お前たち!」
フールーダの狂気すらじる視線が、自らの弟子たちに向けられる。
「メイドがだぞ! 久遠にも等しい壽命を持つドラゴンや、人間をはるかに凌駕する種族ではなく、単なる人間のメイドがだぞ! さらにアインズ・ウール・ゴウン様はそれを超える力を持つという!」
フールーダは椅子からガタリと音を立てるほどの勢いで立ち上がり、小走りにナーベラルの前に來ると、膝を大地に付けて哀願する。
「おお! 早く、早く、アインズ・ウール・ゴウン様に會わせてしい。本當にしでも良いから、その宿している魔法の力を愚劣なるこのに授けてはくれないか!」
フールーダは再び視線を自らの弟子たちに向ける。
「私たちは今、最高の伝説の場所に足を踏みれつつあるんだ! 良いか! ここから瞬き1つもするな! すべてが寶だ! この地はまさに伝説の雰囲気を十分に宿している地だ!」
「フールーダ、し落ち著かないか!」
流石にこの狂は看破できなくなったと、ジルクニフが聲を張り上げる。一瞬、ジルクニフにも何か言いかけたフールーダの瞳にようやく理のが戻ってくる。
「フールーダ。勘違いするなよ? 今回は帝國として來たのだ。お前の魔法に関する知識を求めに來たのではないと」
「……陛下、失禮しました。々興してしまったようです。皆様方にも失禮しました」
フールーダは立ち上がり、ペコリとメイドたちに頭を下げた。
「そうだぞ、じい。飲みでも飲んで、しは落ち著け。さて、いただけるかな?」
「畏まりました」
ジルクニフの前に置かれたグラスに、ユリによって金のが注ぎ込まれる。周囲には柑橘系の甘い香りが漂いだした。
果実水をジルクニフは一口含む。そしてその味さに笑いを浮かべてしまう。それは今まで自分が飲んできた飲みは何だという笑いだ。そして回りでも騎士たちが驚きの表を浮かべている。皇帝と言う贅を盡くしているジルクニフですら驚いたのだ、騎士たちの驚きはジルクニフの非ではないだろう。事実、禮儀というものを忘れて、勢いよく飲む者の姿は珍しくは無かった。
そして口々に驚きの聲が上がっていた。
「味いぞ」
「なんだこの飲み。酸味と甘みがちょうど良いところで調和している」
「越しが最高だ。口の中にしつこい甘みが殘らない」
そんな驚きの聲を耳にしながら、再びジルクニフも飲みでを潤す。
ナザリックは飲みすら最高だというのか。ジルクニフは苦笑いを浮かべる。飲み1つに敗北を強く抱かせてくれるとは、という思いと共に。
日差しを避けながら、草原を走る風の音を聞くという時間をどれだけすごしたか。やがてユリがジルクニフがんでいた言葉を告げた。
「お待たせしました。アインズ様の準備が整いましたので、こちらにどうぞ」
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