《【書籍化】生贄になった俺が、なぜか邪神を滅ぼしてしまった件【コミカライズ】》占い師
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「どうじゃなオババよ?」
水晶に手をかざした占い師は眉をひそめると……。
「間違いありませぬ國王様。エルトなる年は生きておりますぞ」
その場の全員が息を飲んだ。周囲からはひそひそ聲がする。その中の言葉を拾うと「一どうして?」「生贄のでどうやって生き殘った?」「邪神からの要求は無いのか?」
混が広がらぬように王國でも極一部の人間のみが集められている。そんな中……。
「やっぱりエルトは生きていたっ! ああ……エルト。良かったよぅ」
アリシアは涙を浮かべて喜んだ。
今回の件だが、アリシアが転移魔法陣がまだ稼働しているのを発見し、その事実を報告した。
王國としても今年の生贄の儀式は終わったという認識だったので、まさに寢耳に水だ。
そんなわけで國1番の占い師に依頼をしてエルトの生存を確認したのだ。
「それでオババ? その年はいずこへ?」
アリシアと違い、國王としてはエルトが生きていてそれでおしまいとはいかない。
「その者の気配は………………地図をここにっ!」
慌てて1人の人間が地図を持ってきてテーブルに広げる。
占い師はその地図に指を這わせる。
まずイルクーツ王國のある場所を指さす。イルクーツ王國は大陸の東に位置する中堅國家だ。そこから占い師は指をぐるりと大きく回し西まで持っていく。大陸の真ん中にある海を避けるように指を這わせた。
「ここは……」
眉をひそめるアリシア。その指の移からそうとう遠い場所だと認識したからだ。
「エリバン王國の領地ですね。この深い緑が示すのはれば生きて帰ることはかなわないと言われている強力なモンスターの巣窟【迷いの森】。生贄の年がいる場所はここだと私の占いで出ております」
先程と同じような衝撃が走った。
「そうするとその年はまもなく死ぬのでは?」
「転移魔法陣は邪神の元へと送られる魔法陣。つまり邪神はエリバン王國に城を構えているということか?」
「いずれにせよ手出しできる場所ではありませんな」
重鎮たちが渋い顔をしながら意見を換しているのだが……。
「エルトは死にませんっ!」
そんな彼らの話し合いをアリシアは遮った。
「邪神の生贄に捧げられても生きていたんです! エルトはきっと今も元気でいるに決まってます!」
最悪の予想が浮かんでしまったのか、アリシアは涙を浮かべるとその場の全員を睨みつけた。
イルクーツ王ジャムガンは自分のひげをでながらアリシアを観察していた。そして……。
「ここで話をしていても仕方あるまい。これまで我が國を苦しめていた生贄制度。それがここにきて異常をきたしたのだ。邪神からの要求は途絶えた」
いずれにせよ報が足りない。ジャムガンはそう考えた。
「その年の生死についてはわからぬが、打てる手は打っておくべきだろう。……アリス」
「はい。お父様」
名前を呼ばれて1人のしいが前に出る。この國の王のアリスだ。
「お前はすぐにエリバンへと向かうのだ。そこで報を収集し、例の年がどうなったか調べろ」
今回の件は極に片付ける必要がある。その為には王國最強と名高い自分の娘を向かわせるのが最善とジャムガンは考えた。
「かしこまりましたお父様。その命令確かに承りました」
凜とした様子でお辭儀をするアリス。彼は早速任務を遂行するために部屋を出ようとするのだが……。
「まっ、待ってくださいっ!」
アリシアがそれを遮った。
彼はアリスの前まで駆け寄ると……。
「私も連れて行ってください。癒しの魔法が使えるので足手まといにはなりません!」
「治癒魔法の使い手なら宮廷魔道士がいます。場合によっては迷いの森近くまで行く可能がある。あなたはそんな危険な場所についてくると?」
エルトはただの街人なのでこの手の報には疎かったが、迷いの森の悪名は冒険者の間で広く知れ渡っている。アリシアは治療の傍ら彼らと話す機會があったのでその恐ろしさは十分に知っていた。
「覚悟の上です」
し脅せば引き下がるだろうと思っていたアリスだったが、アリシアの真剣な瞳を正面からけ止めた。
「なぜそこまでするのです? エルトという年はあなたの代わりに生贄になった。つまり今のあなたは役割を果たして安全ななのですよ。それをわざわざ危険を冒してまでついてくるなど」
國への獻が認められたアリシアはその容姿も相まってか貴族からの縁談が舞い込んでいる。このまま國に住み続ければ裕福な生活が保障されているのだ。
それを放棄しようという行にたいしアリスは問いかけた。
「そんなの決まっていますよ王様」
アリシアは強い意志を持ってアリスを見つめると、誰もが見惚れそうな笑みを浮かべると宣言した。
「私がエルトに會いたい。エルトに會って伝えたいことがある。だから私はどんな場所だろうと構いません」
「気にったわ。あなたを従者に任命します」
「ア、アリス様宜しいのですか?」
1人の重鎮が詰め寄ってくる。彼は自分の息子とアリシアをくっつけようと計畫していたの1人だ。
「構いません。全ての責任は私がもちます。元々戦闘なら1人で十分ですから。このプリンセスブレードがある限り私に敵はいませんから」
そういうと腰にかけている剣を見せつけた。
「ありがとうございます王様」
「アリスでいいわよ。あなたはこれから私の旅の仲間になるのだから」
アリスは腰を落とすとアリシアと同じ目の高さに揃えるとウインクをした。
「どうしてそこまでしてくれるんですか?」
自分のような人間に手を差しべる意味が解らない。アリシアはそう疑問を口にする。
アリスはふと笑みを浮かべると、
「あなたとエルト君に興味を持ったからかしらね」
そう答えるのだった。
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