《【WEB版】劣等賢者のケモノ魔法革命〜「獣人は魔法が使えない劣等種だ」と宮廷魔師から追放されたけど、弟子とFランク冒険者を満喫してたら、いつの間にか最強の魔法學院ができていた〜:書籍化+コミカライズ》29.ジャーク大臣の悲劇と野:カヤック、不死の軍団があわわわわとなるが、次の四天王がウォーミングアップを始めましたよ

「ぐふふふふ、これぞ私の不死の軍団ですよ!!」

ランナー王國の宮廷魔師の重鎮、カヤックはほくそ笑んでいた。

彼の使役する本命の魔、トロル軍団が戻ってきたからである。

先日まで期限付きでその軍団を借りていた帝國は、隣國との戦爭のためにそれを使ったという。

その結果は騒然とするものであり、鋭ぞろいと言われた隣國の騎士団を完なきまでに叩きのめしたという。

騎士団がいかに苛烈に攻め立てようとも、異常な回復力を誇るトロルを蹴散らすことはできなかったのだ。

のトロルならともかく、群れのトロルを敗北させるには、それこそS級並の大量破壊的な攻撃ができなければならないと言われていた。

よって、トロル軍団をることのできるカヤックは、大臣から一目も二目も置かれていた。

「さぁ、いけぇっ! さっさとくのだ!」

カヤックはトロルをびしばししごきながら大聲をあげる。

トロルは回復力に優れた魔ではあるが欠點もある。

それは頭がよくなく、きも遅いという點だ。

群れを指揮する場合には複數人數できを観察しながら、目的地へと導しなければならないのが通例なのである。

しかし、この魔使いのカヤック、なかなかの人なのである。

彼は一人でトロルの軍団をることができるのだ。

「この道を通ってワイへ王國の王都に向かうのだっ!」

カヤックはあらかじめ見つけておいたルートにトロルたちを導する。

そのルートは崖の下にできた天然の道で、スムーズにワイへ王國の王都を襲うことができるものだった。

また、落石やがけ崩れの心配があるため一般人に使われることは滅多になかった。

つまり、奇襲を行うにはうってつけのルートなのである。

「ぐひひひ、キラーベアを殺してくれた者どもに復讐してやるっ!」

カヤックはトロルの軍団が王都を襲う様を想像し、ニマニマとほくそ笑む。

キラーベアの作戦時にはつい目を離したすきにやられてしまった。

おそらくは偶然、凄腕の冒険者か、通りすがりのドラゴンが森にっていたに違いない。

しかし、今は違う。

見つけようのないのルートでの行軍なのだ。

失敗するはずがない。

「よぉし、前夜祭だ、祝い酒でも飲んでやろう」

カヤックはいそいそと酒を取り出すと、勢いよくあおり始める。

この男、もう勝ったつもりになっていたのであった。

カヤックは手製のつまみなども用意し、さながら一人だけの酒宴を開催する。

うまいうまいと舌鼓をうっているうちにトロルの軍団は遠くに歩いていく。

しかし、心配はいらない。

トロルの軍団は自でワイへの王都を襲うことになっているからである。

それに々休憩したとしても、トロルの足に追いつくのは簡単だ。

「ぐふふ、いい気分だぁ」

カヤックは酒と食べをたらふく飲むと、居眠りさえ始めてしまうのだった。

彼は大臣にどのように褒められるだろうかとニマニマしながら夢の世界にっていく。

その眠りから彼が目を覚ますのは1時間後のことだった。

「ほ、ほげぇええええ!?」

そして、トロルの軍団に追いついたカヤックは信じられないものを目にすることになる。

彼の不死の軍団が、どんな攻撃にも屈さないトロルの軍団が、倒れているのだ。

しかも、3分の2ほどのトロルは絶命していた。

かろうじて生き殘っているトロルたちも様子がおかしい。

目の焦點が合わず、ふらふらうろうろとしており、錯狀態にあるようだ。

「な、な、何が起こったぁああ!?」

驚くべきはトロルたちに攻撃された形跡が一切ないことだ。

致命傷を浴びた際にはトロルであっても傷は回復しない。

しかし、トロルはついさきほどまで生きていたかのようなをしていた。

まるで死の宣告という高位の闇魔法をけたかのような死にざまなのだ。

「ひ、ひ、ひぃいいいいい」

この場所にいたら自分も殺されるのではないか?

そう直したカヤックはトロルに命令を出して、ランナー王國に戻ることを指示する。

大臣にはワイへ王國にとんでもない化けがいることを進言しなければならない。

トロルの損失については叱責をけるかもしれない。

しかし、3分の1でもトロルが殘っていれば、平和ボケのワイへ王國を襲うことは十分に可能だ。

その時だった。

どたどたどたっと何かが頭上から落ちてきた。

それは大と呼ばれる野菜のように見えた。

「なぁっ、どうしてここに大が!?」

驚き焦るカヤック。

うぐがあああああ!!?

しかも、である。

トロルどもは雄たけびをあげると、その植にかぶりつき始めるではないか。

そもそもが貪な生きである。

狀態にあっても、目の前にエサをぶら下げられたら食いついてしまうのは必然ともいえた。

そして、これが殘ったトロルたちの最期の愉しみとなった。

ぐぃげぇえええええ……

彼らは落ちてきた植を殘らず食べ終わると、その場で泡を吹いて絶命するのだった。

これが不死の軍団と呼ばれたトロルたちの結末だった。

「ひ、ひ、ひぃいいいいいい!!?? 俺の、俺のトロル軍団がぁあああ!!」

カヤックは腰を抜かし、這う這うので逃げ出す。

トロルがどうして死んだのか、何を食べたのか、一切の検証をしないままで。

恐怖は人の眼を狂わせるものなのである。

「なぁああにをやっとるのだぁああああ!! カヤック、あなたはしばらく謹慎しなさぁあああい!」

圧倒的な不始末である。

當然、カヤックは大臣に叱責されるのだった。

「くぅううううう、愚か者どもめぇええ!!」

ランナー王國の誇る不死の軍団を失った大臣はぎりぎりと歯がみをする。

本來であれば、トロルの軍勢だけでワイへ王國など落とすことができたはずなのである。

それをあろうことか、攻めることなく全て失ってしまったのだ。

トロル軍団のためにかけた費用も全て失ってしまったということでもある。

「おのれ、ワイへ王國めぇええええ!!」

大臣は目を走らせて怒り狂う。

せっかく裏から謀略をしかけて楽に攻め落とそうとしているのに、裏目裏目に出ているのである。

「くくくく、大臣様、お久しぶりです。お困りのようですな……」

「お、お前は……!?」

そんな時に現れたのは、フードをかぶった老年の男だった。

この男の名前はジャグラム、かつてこの國の宮廷魔師だったが忌魔法を試したことで閑職に追いやられた男である。

レイモンド、カヤックと並び、宮廷魔師の四天王などと呼ばれたこともある。

彼は単刀直に話を切り出す。

「ワイへ王國の件、わしに任せてもらえんかのぉ。久しぶりに実験してみたくなったのでな」

ジャグラムは邪悪な笑みを浮かべて、ひゃははと笑う。

「じ、実験ですか……」

大臣の背中に嫌な汗が流れ始める。

そう、この男は邪悪極まりない魔法実験をすることで有名なのだ。

死者を生き返らせようとしたり、モンスター同士を合しようとしたり、倫理から最も遠いところにいる男なのである。

「うひひひ、ワイへなぞすぐに滅んでしまうじゃろうがのぉ」

男は薄気味の悪い笑みを浮かべて、下品に笑う。

のかけらもないが、大臣は男の実力自は認めていた。

定石通りいかないのなら、奇策に打って出るのもいいだろう。

そう、彼であれば、この膠著した狀況を打開してくれるのではないかと思ったのだ。

「いいでしょう、ジャグラムさん。思いっきり暴れていらっしゃい」

「ははぁっ! わしにお任せあれ! しっかり予算は頂きますぞい」

ジャグラムはいひひなどと笑いながら、大臣の部屋を出ていくのだった。

そして、ここにワイへ王國の新たな危機が始まろうとしていた。

「面白かったで」

「続きが気になるっ」

「また新たなる強敵の予……」

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