《【WEB版】劣等賢者のケモノ魔法革命〜「獣人は魔法が使えない劣等種だ」と宮廷魔師から追放されたけど、弟子とFランク冒険者を満喫してたら、いつの間にか最強の魔法學院ができていた〜:書籍化+コミカライズ》31.賢者様、ライカがついに魔法の階段を上り始めましたよっ!
「お師匠様、できました! なんだかポカポカします!」
今日も朝からライカのトレーニングである。
先日から魔力作ができるようになった彼はとんでもなくやる気を出しているのだ。
普段でさえ、めちゃくちゃ元気なのに、もう朝の5時からはっふはっふ言い出す。
勘弁してほしいよ。あたしゃ眠いんだよ。
「えらいよっ! その調子!」
とはいえ、鉄は熱いうちに打てっていうし、やる気のあるうちに鍛えるのもいいことだ。
私は眠い目をこすって、彼のトレーニングに付き合うのだった。
ライカは冒頭の通り、魔力をじ、それをの一點に集めることができるようになったと大喜びである。
どこに集めてるのかって?
「見てください! すごいですよっ!」
ライカが魔力を集めているのは尾だった。
とんでもないスピードでぶんぶん左右に振れる茶い尾。
風きり音さえしてきそうなスピードで、こちらに心地よい風すらじさせる始末。
彼の尾をよぉく見ると、確かに魔力が集まっているのがわかる。
なるほど、魔力によって尾の筋を強化してるんだね。
「すごいよ、すごいんだけど、すごいのかな?」
「えへへへ! 褒めらましたぁああ! ほら、いつもより三倍速く振ることができます!」
ライカは褒めてびるタイプだというわけで、とりあえず褒める。
いつもの三倍っていうのはわかんないけどなぁ。
この子、嬉しい時はほとんどぶるんぶるんやっているし。
「ご、ごでが魔力(ま゛り゛ょ゛ぐ)! お、おで、づがえるようになづだんだぁああ」
ライカは魔力を尾に集めたというだけでし、目には涙を浮かべている。
そうだよね、ずーっと魔力ゼロって言われていたんだものね。泣きたくだってなるよね。
だけど、口調が不用なゴーレムみたいになっているのはなぜなのか。
「それじゃあ、ついに出ますよっ! ほとばしれ、我が魔力よっ! 渾のぉお、ウインドブラストぉおおお!!」
ライカは涙をごしごし拭うと、杖をぶるんっと振って魔法を発させようとする。
しかし、予想通り、お目當てのものは一切現れなかった。
そりゃそうだ、尾に魔力を集めただけなのである。
次は集めた魔力を形に変える訓練をしなきゃ、あかんですわな。
「わぁうううう……、どぼぢで、どぼぢでなんでずがぁあああ」
ライカは魔法の失敗にショックをけて、地面に突っ伏す。
ふぅむ、もっと自分の本能に差した形で魔力をイメージしなきゃいけないんだよね。
普通人によって與えられた教科書通りの魔法じゃ、獣人の魔法は発現してくれないのだ。
「本能だなんて言われても困りますよぉ。私、ペットとか飼ったことないですしぃ……」
私の説明に、ライカはふくれっ面をする。
確かに私だって「お前の本能を目覚めさせてみろ」なんて言われたら、困ってしまうだろう。
だから、ライカの気持ちはよぉくわかるのだ。
私の場合、おばあちゃんの飼っていた貓の使い魔がたくさんいたので、貓の習をイメージするのが簡単だったにすぎないのだ。
言わば、完全なるラッキーなのである。
せっかく魔力をじることができたのだが、ここが次の壁ってものらしい。
すなわち、魔力をどう発現させるかっていうこと。
はっきり言って、それこそが魔法であり、それができれば魔法使いなのである。
「お師匠様! 私、頑張ります! 魔法使いになります!」
私の話を聞いたライカはさっきよりももっと尾をぶんぶん振るのだった。
すごく、いい風です……。
もうちょっとでウインドブラストが出るんじゃないの、それ?
◇
「あっちゃあ、雨が降ってきた!」
そんなこんなの訓練をしていると、突然、空の様子がおかしくなってきた。
突然、ざざぁっと雨が降り始め、外にいた私たちは家の中に避難することにする。
「うひぃ、濡れちゃったよ~」
想像以上に強い雨で、私もライカも雨で濡れてしまった。
私は貓人ということもあり、雨にぬれると髪のが変になっちゃうので非常に困る。
こんなときは一刻も早くタオルドライをせねば。
「ライカ、タオル使ってね。……ん? どうしたの?」
タオルをとってライカにも渡そうとする私。
しかし、ライカはタオルをけ取らずに、目をし大きく開けてぼんやりとしている。
ど、どうしたんだろうか?
まさか柴犬族は雨で膨らむとかじゃないよね?
「あ、ありがとうございます! えぇと、今、すっごく懐かしいことを思い出したんです」
ライカはぼーっとしていたことを詫びると、その理由を話してくれる。
「私のおばあちゃんがぽんちゃんっていう犬を飼ってたんです! 猟犬ですけど」
彼はいころに、犬と一緒に暮らした経験があるというのだ。
彼のおばあちゃん、すなわち剣聖のおばあさんが連れていたその犬は人懐っこくて、い彼にも優しかったのだという。
「とはいえ、2、3歳のころの記憶ですから、ほとんど覚えてないんですけどね」
ライカはそう言って、ふふと笑い、私は「そうなんだぁ」と返す。
まぁ、とりとめのない會話の一つと言っていいだろう。
だけど、私はしだけ思うのだ。
ライカが犬との暮らしを思い出したことは修行のプラスになるかもしれないぞ、なんて。
「ライカ、もしできるなら、そのワンちゃんのこと思い出してみて。きっと、いいことがあると思うよ」
「そ、そうですかねぇ? えへへ、多分、何の役にも立たないと思うんですけどぉ……」
ライカは照れたような表で笑う。
私が思うに、この子の中にはしだけ魔法の兆しが見え始めている。
獣人であっても魔力作はできるようになったのだ。尾の振れはすごいもんだ。
そうなれば、何らかの魔法が発する可能はあるはず。
どんな初級魔法であっても、もしそれが実現したならすごいことだよね。
「それじゃ、朝ごはんを食べたら、ギルドに行くよっ!」
「はい! お師匠様!」
そして、私たちはいつものルーチンにる。
一緒に朝ごはんを作って食べて片付けて、準備を整えたらギルドまで向かうのである。
ふぅむ、毎日、王都まで通うのも面倒くさいし、そろそろ宿を借りた方がいいかもしれないな。
「面白かった!」
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「ライカがついに目覚めそう!」
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