《【WEB版】劣等賢者のケモノ魔法革命〜「獣人は魔法が使えない劣等種だ」と宮廷魔師から追放されたけど、弟子とFランク冒険者を満喫してたら、いつの間にか最強の魔法學院ができていた〜:書籍化+コミカライズ》42.賢者様、めちゃくちゃ兇悪なピタゴラな方法で敵をスイッチする。

「なんだこのモンスターは!?」

「君たちは下がっているんだ!」

「くふふ、腕が鳴りますね!」

どうしてこうなった。

そもそも、あのイケメンだと思っていた冒険者たちは、男裝のお姉さんたちだった。

紛らわしいことこの上なしである。

さらに、である。

ダンジョンの調査中、とんでもなく強そうなモンスターに出くわしたのだ。

口の中に目ん玉があるという強烈な見た目のやつで、手がうねうねしている。

イビルアイとかいう魔に似てるけど、かなり大きめだ。

低ランク冒険者なら卒倒しちゃうかもしれないよ。

「くそぉっ、強すぎる! ここは私たちに任せて君たちは先に行けっ!」

「そうだ、Fランク冒険者は明日の! 唸れ、俺の左腕ぇえええええ!」

「ふふふ、まだまだやれます。今日は死ぬのに一番いい日かもしれませんね?」

たちはぎげぇええとび聲をあげる魔を前に、自分たちが囮になると言って駆け出していく。

格がいいうえに、かっこいい。

非常に味しいシチュエーション。

そう、つまり、私が囮になれるチャンスはこれっぽっちも殘ってないということである。

あぁ、お姉さま方、私たちに「おらっ、てめぇらは囮だ! ここでじっとしてろよっ! 死ぬときぐらいは役に立ちやがれ!」って言ってくれれば良かったのに。

そして、すたこらさっさと逃げ出してくれればよかったのに。

この人達、見た目もいい上に格もいいなんて、どうして天は二を與えてくれたのだろうか。

あたしゃ本當にけないよ。

「あ、あの人たち、行けって言ってますよ? 行くなら行きましょうよぉお? 私、あぁいう、目がぎょろっとしてるの苦手です!」

がっくりしている私の隣で、ロマンもへったくれもないことを言い出すライカ。

さっきから私の袖をぐいぐいと引っ張ってくるのはかわいいけど、どうやら敵のモンスターが怖いようだ。

確かに目の前の魔は私でさえ見たこともない種類の奴で、ちょっぴり強そうである。

だけど、彼たちを置いて逃げちゃうことはできない。

「ライカ、あいつらやっつけちゃうよ! 囮になるのは私だけでいいんだよ!」

「さ、さすが、お師匠様です! しびれました!」

私の深い囮哲學に目をキラキラさせるライカ。

そう、私が囮になるのはいいけれど、他人が囮になるのは許せないのだ。

そもそも、私は安全快適なダンジョン探索を約束した。

降りかかる火のは排除しなきゃいけないよね。

とはいえ、ここで私が本來の力を見せちゃったら困ったことになる。

あくまでも偶然を裝ってやらなきゃいけないわけで。

「ライカ、あの三人が危なくなったら救助をお願いね!」

「わ、わかりました!」

二秒ほど考えた私の結論は、あの冒険者を助けに行くことした。

だけど、ごく自然に、自分の力を見せない範囲で。

どうするかって?

こうするのさ!

「【貓仕掛けの悲劇製造機(ファイナルデスティネーション)】!!」

私が必殺の貓魔法を発すると、沢山の歯車が現れ、それを幻獣の貓様がぽすっと貓パンチを食らわせる。

「ひ、ひげき製造機ですか? そんなの大丈夫なんですかぁ!?」

不安そうな聲を出すライカ。

しかし、この魔法、地味に見えて、とんでもなく凄いのである。

よく見ておきなさい!

「どおりゃああ、ぅわたしぃが相手だぁあっ!」

私はいかにもFランクっぽく、逆ギレしたじで戦いの場にダッシュする。

すると、私は右のつま先で小石を軽く蹴り飛ばす。

さぁ、ここからだよっ!

こつん、と勢いよく転がった小石は、ちょうど絶妙なバランスで立っていた巖に衝突。

ぐらん、と巖が揺れ始めると、それは猛烈な勢いで転がり壁に激突。

どがぁん、と壁が音をたてた瞬間、天井がみしみし、ぴしぴし、変な音をさせ始める。

どがぁあああああん!!!

結果、天井が崩壊し、巨大な巖がモンスターの頭めがけて落ちてくる。

目玉のモンスターは「ぴぎし」などと悲鳴を上げて絶命するのだった。

「あひゃああああ!?」

「ひょわわぁあああ!?」

「っきゃああああ!」

お姉さま方は悲鳴をあげるも、何とか無事。

三人とも間一髪命が助かったのもあって、ガタガタ震えているのであった。

まぁ、ちゃんと距離があるから大丈夫だって分かってはいたけどね。

「いやぁ、偶然、落盤が起こるなんてびっくりですねぇ。あはは、びっくりしたぁ」

そんなことを言いながら、三人を救助する私なのである。

三人はちょっと放心狀態にっちゃってるけど、無事でよかった。

実際のところ、これは偶然ではない。

私の魔法によるものなのだ。

そう、これこそが48の殺人魔法の一つ、【貓仕掛けの悲劇製造機(ファイナルデスティネーション)】である。かっこいいでしょ?

これは貓がもたらす偶然の悲劇を參考にして作られた魔法である。

例えば、貓はこんなことを平気で起こす。

・偶然、飛び降りた先に飼い主の顔がある

・偶然、歩いていた場所にあったインクの壺を倒し、貴重な書類をダメにする

・偶然、壁を登ってみたら絵畫が落ち、さらにはその下にある花瓶を割る

貓とは「まさかそれがそうなるんすか」といった、摂理を超えた悲劇を引き起こす存在。

まさに運命の神の申し子なのである。

かっこよく言えば、環境利用型魔法なのである。

「ぐ、ぐ、偶然を裝って人を殺すやつですよね、これ!? え、えぐすぎますよっ!?」

ライカは私のことを極悪人を見るような目で見てくるも、別に人を殺めるための魔法ではない。

見ての通り、魔をやっつけるためのものなのだ。

人に向かって放ったことなんてないし、48の殺人魔法っていうのはあくまでも表現だからね。殺したことはないよ。

「それにしても、妙だね、これ」

放心する三人や唖然とするライカをよそに、私は落盤でつぶれた魔念に観察する。

明らかにここらへんにはいないはずのモンスターなのである。

どっちかというと、古代の跡とかそういうところにいるタイプ。

そんな時だった。

ぴしっ……

私の足元の覚が消え、視界がぐらりと揺れる。

「でぇええっ!? うっそおぉおおおお!?」

落盤が起きたせいで、ダンジョンの床がもろくなっていたのだろうか。

私の足元が崩壊し、真っ逆さまに大の中に落ちていく。

え、ちょっと待ってぇええええ!

◇ 一方、その頃、レイモンドたちは?

「おい、冒険者が來ているぞ?」

ここはワイへ王國にあるとあるダンジョン。

錬金師のレイモンド、魔獣使いのカヤック、そして、マッド魔法使いのジャグラムは己の分を賭けた最後の戦いの準備に臨んでいた。

彼らは一致団結して仕事を完遂するという気合を込めて、同じ服裝と仮面にを包んでいるのだった。

彼らは城にしているダンジョンに冒険者が侵してきたことを察知する。

もしかすると、自分たちのことを嗅ぎつけて討伐に來た可能もある。

しかし、彼らはひるむことはない。

「ふはは、それならばちょうどいい。この古代の魔、レッドアイのエサにしてやろう」

「ぐはは、それがいい!」

彼らは新たに魔を召喚し、それを冒険者にぶつけることにしたのだった。

はふしゅるふしゅると気持ちの悪い音を立てて、冒険者のもとへと向かう。

古代モンスター、レッドアイ。

無數の手を攜え、人とあれば貪に襲い掛かる化けである。

に魔力を蓄えることによって大化し、やがては城のサイズまで大きくなった例もある。

一般的な冒険者であれば、レッドアイの相手にはならないだろう。

しかし、レイモンドたちは知らない。

が向かった先には、より兇悪な魔じみたがいたことを。

【賢者様の使った貓魔法】

貓仕掛けの悲劇製造機(ファイナルデスティネーション):貓とは運命の神にされた存在であることは言うまでもない。偶然に偶然を掛け算し、もはや必然ともいえる結果を導き出す。この魔法は者の些細な作が機転となり、敵を必ず仕留める理を持っている。発條件が難しいが、ダンジョンなど障害が大きい空間だと向いている。四十八の殺人貓魔法の一つ。

「面白かった」

「続きが気になる!」

「兇悪すぎる……」

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