《【WEB版】劣等賢者のケモノ魔法革命〜「獣人は魔法が使えない劣等種だ」と宮廷魔師から追放されたけど、弟子とFランク冒険者を満喫してたら、いつの間にか最強の魔法學院ができていた〜:書籍化+コミカライズ》44.ライカ、突然の敵の襲來に活躍してくれます!

「貴様ら、何者だっ! その子を放せ!」

「そうですよっ! 暴する人は徹底的にぶっとばしますよっ!」

アンジェリカの捜索を開始したライカたちである。

ダンジョンにいる他のモンスターは弱く、下の階層まで行っても問題ないと思われたからだ。

しかし、そこで彼たちは思わぬ敵と遭遇する。

それは仮面をかぶった、見るからに怪しい男たちだった。

「ひきゃああああ!? 助けて下さぁああい!」

悪いことにモンスターの手にはリス獣人の冒険者の姿がある。

の名前はソロ・ソロリーヌ。

ダンジョン探索をしているところで、男たちに捕まってしまったのだ。

「お前達、ワイへの冒険者だなっ!?」

「やれっ、ゲシュタルト!」

「レッドアイを倒してくれた恨みを晴らすのだっ!」

彼らはモンスターをり、ライカ達を威嚇する。

そのモンスターは先ほどの目玉のモンスターに似ているが、なんと目玉が二つもある。

つきも大きく、手はさらに多い。

「くっ、人質の救出が最優先だ!」

「行くぞっ!」

「ライカ君は、早く逃げるんだっ!」

冒険者たちは覚悟を決めた表になり、手の化け戦し始める。

目指すはソロの解放である。

ぐごがぁあああああああ!

しかし、目玉が二つもあるその化けはぐいんとを膨らませると、猛烈な音量の雄たけびをあげるのだった。

人は大きな音を不意に浴びてしまうと、がすくんでけなくなる。

「「「ぐはっ!?」」」

三人の冒険者達は敵の手になぎ倒されてしまうのだった。

実力差は歴然としており、勝てるはずのない戦い。

冒険者たちは意識を失ってしまう。

「はーっはっはっ、レッドアイを倒したからと言っていい気になるなよ!」

「これはレッドアイを二つつなげた忌の魔!」

「わしらの生んだ不死の怪に敵はおらんわぁああっ!」

男たちは吹っ飛ばされた冒険者たちを前に大きな聲で笑う。

仮面をしているため顔は見えないが、邪悪に歪んでいること間違いなしである。

「うぅう、耳が痛いですね」

しかし、ライカだけは無事だった。

はとっさの判斷で耳に魔力を集め、聴力を守ったのだった。

アンジェリカとの修行の果と言ってもいいだろう。

「ぐぬぬぬっ、暴するなんて許せません! こうなったら、私が相手ですよっ!」

ライカは杖を振りかざし、神を集中させる。

目の前に迫る無數の手に恐怖を覚えないわけではなかった。

しかし、このまま躙されるわけにはいかないし、冒険者を置いて逃げるわけにもいかない。

は強い正義の持ち主でもあったのだ。

「くはははは! 何だその構えは!」

「魔法でも使うというのか!?」

「貴様ら劣等種に崇高なる魔法が使えるものか!」

三人は大きな聲で嘲笑う。

ライカの膝が恐怖で震えているのもあるだろう。

しかし、それ以上に、彼らはライカが獣人であるにもかかわらず魔法を使おうとしていることを嘲笑ったのだ。

そのことはライカの心を否が応でも刺激する。

「劣等種なんかじゃない、私はっ! 私たちはっ!!」

ライカの脳裏に自分を拾ってくれた、貓人の師匠、アンジェリカの顔が浮かび上がる。

アンジェリカはいつだってライカが魔法を使えるようになると信じてくれた。

そして、実際に使えるようになったのだ。

笑われる筋合いなんて、ないはずなのだ。

「でえぇりゃああああ、柴犬ドリルぅううううう!」

ライカは飛んだ。

もはや格好をつけることさえせず、ただただソロを助けるためだけに。

ライカは全に魔力が溢れていくのをじる。

そして、耳に水がった時を思い出す。

ぶるぶるぶるっと水をはじく様子を思い出す。

あの素晴らしい姿を、回転し過ぎて顔のパーツがわからなくなる様を。

そう、絶大なる祖先の回転速度を!!

しゅばばばばあぁあああああっ!

ライカの背後に神々しい柴犬が現れ、彼を鼓舞するように頭を回転させる。

ぴぎゃアアアアア!?

ダンジョンに響く、モンスターの悲鳴。

の放ったドリルは猛烈な回転によって、モンスターの一部を切り裂いたのだった。

モンスターは捕まえていた獣人のソロを投げだし、床に倒れる。

「ありがとうございますぅううううう!」

ライカは投げ出されたの子のもとに向かい、彼を確保する。

ドリル魔法からの見事な早業だった。

「なぁっ!?」

「なんだぁあああっ!?」

「い、犬が、茶い犬が背後に現れよったぞぉおっ!?」

これには當然、びっくり仰天の仮面三人組である。

彼らのモンスターがまさか魔法で攻撃され、あまつさえ人質を奪い返されるとは思ってもいなかったのだろう。

「私の魔法の前に、あなたたちの魔は無力でしたよっ! さぁっ、おとなしく私に毆られなさい!」

ライカは男たちをびしっと指さし、観念するように促す。

その瞳には正義の炎が燃えていた。

「ふははは! あの程度の攻撃で我らがゲシュタルトを倒せると思ってかぁああ!」

「妙な幻を使うようだが、わしらの相手ではないわ!」

男たちが再び嘲笑を始めると、腹部にをあけたはずの魔がむくりと起き上がるではないか。

まるで何事もなかったかのように、手をしゃあああっとばしながら。

「そ、そんな……」

その異様にライカはの気が引いていくのをじる。

敵に致命傷に近い打撃を與えたさえあった。

それが、ものの數十秒で復活することなど、あっていいのだろうか。

ライカはこのまま逃げるべきか、それとも戦うべきかの選択肢を強いられる。

リス獣人の娘を抱えて走ればなんとかなるかもしれない。

自分が戦わなければ、失神した冒険者の三人は殺されてしまうだろう。

しかし、勝てるだろうか?

ライカの額に汗が流れ、頬を伝って地面に落ちる。

はぽつりと「お師匠様……」とつぶやくのだった。

「さぁ、命乞いを始めるがいい!」

「今日が貴様たちの命日だ!」

「そして、ワイへ王國を滅ぼしてやる!」

邪悪な企みを口にして嘲り笑いをする男たち。

まさに絶絶命といった狀況の中、ダンジョンの床にとある人のシルエットが現れる。

貓耳の影はこう言うのだった。

「ふふ、楽しそうだね。私もまぜてよ?」

ライカが振り返ると、そこには口元に笑みを浮かべたアンジェリカの姿があった。

「面白かった」

「続きが気になる!」

「まさかあのセリフで割り込んでくるとは……」

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