《【WEB版】劣等賢者のケモノ魔法革命〜「獣人は魔法が使えない劣等種だ」と宮廷魔師から追放されたけど、弟子とFランク冒険者を満喫してたら、いつの間にか最強の魔法學院ができていた〜:書籍化+コミカライズ》50.賢者様、仮面の男に逆ギレされるも、タオル魔法でさくっとやっつける
「くそぉ、何もかも邪魔しやがって! 貴様の、貴様のせいだぁああ!」
せっかく最小限の犠牲で事なきを得たというのに、変質者は苦し紛れというべきか、私達に対して激昂する。
こっちは謝されたいぐらいなのに、なんて奴だ。
「この斷の魔道でぇええ! ふぐがぁああ!」
彼は自分の腕に針のようなものを突き刺す。
わぁびっくり、頭がますますアレになっちゃったかと思ったよ。
あわわ、大丈夫、お気を確かに!?
そう思ったが、さにあらず。
次の瞬間、彼のは數倍に膨れ上がったのだ。
おそらくはあの魔道の影響だと思うけど、原理は呪いのたぐいだろう。
張り裂けたにはおかしな模様が浮かび上がっているし。
それにしても、彼のつけている仮面はそのままだった。
信じられないほどの粘著力である。
「これこそ失われし古代魔法帝國の呪! 魔筋の鍼(デモンズスティング)! この姿を見たものはすべて消え去るのみっ!」
彼はふっとい腕でこちらめがけて毆りつけてくる。
そのスピードも伊達ではなく、彼が言っていることも噓ではないのだろう。
「お師匠様っ!?」
ライカは相手の剛腕に恐れをなしたのか、悲鳴のような聲を上げる。
確かに、これをまともに食らうとやばいかもしれない。
とは言え、私はのこなしには自信があるのだ。
ひょいひょいっと避けて、さくっとやっつけちゃおう。
「甘いわぁああ!」
しかし、油斷大敵。
私が著地した瞬間を狙ってジャストミートの右ストレートが放たれる。
目前に迫る、怒濤の巨大な拳。
食らえば骨が砕け、壁にたたきつけられて命を落とす。
しかし、奴の拳はむなしく空を切るのだった。
「なぁっぁああああんだこれはぁああああ!? この緑のものは!?」
その拳の先には緑のタオルがからみついていた。
そう、私の髪の、そっくりの緑のタオルが。
「殘念、それは偽だよ」
「なぁっ!?」
私はとっさに緑のタオルを代わりにしていたのだ。
これこそ、幻影魔法【白貓と白タオル】である。
実家のおばあちゃんの使い魔の中にはしい白貓がいる。
この貓、床の上にだらーっとびているのが常なのだが、おばあちゃんがベッドなどに置いた白タオルとしょっちゅう間違うのだ。
というか、白タオルを見たら、もはや白貓に見えてしまうほどである。
この魔法はそんな驚きから開発された、回避魔法なのである。
「す、すごいですっ! 私もわかりませんでしたっ!」
優れた視力をもつライカでさえ目で追うのが困難な変わり魔法。
いわんや、呪いでを大きくした程度のおっさんでは話にならない。
「じゃ、そういうわけで」
私は彼の首筋に強化した手刀を一発れる。
哀れなおじさんは「ぐぅ」と聲をあげると、かなくなるのだった。
まぁ、仮面がくっついたままなので本當はどうなってるか分からなかったけど。
そんなこんなで彼は三人目の変質者の捕縛となるのだった。
「お師匠様、すごいです、今の! 私も絶対に使えるようになりますよぉっ! ドーナツと変わりします!」
ライカは変わり魔法に大層心して、目に炎をともしていた。
確かに彼の戦闘スタイルとよく合っている気がする。
それにしてもドーナツかぁ、合いは確かにあってるかも。
◇
「ありがとう、ありがとうございましたぁああ! 怖かったですぅううう!」
リス獣人のの子はよっぽど怖かったのか、ライカに抱き著いて震えていた。
そりゃそうだよね、いけにえにされそうだったんだもの。
「それにしても、すごいですねっ! お二人とも獣人なのに魔法が使えるなんて! あなたは、まるで、新緑の賢者様みたいです! もしかして、賢者様の妹さんですか!?」
リス獣人のの子はめちゃくちゃ大興である。
うわちゃあ、どうしよう。
分を偽裝している手前、あれこれ話したいわけじゃないんだよなぁ。
この子は悪い子じゃないってわかってるけど。
「ふふん、お師匠様は凄い獣人なんですよっ! わけあって分は明かせないんですけど、今は偽裝していて、とにかく魔法の使える凄い人で、私はその一番弟子なんです!」
私がどう答えようか迷っていると、ライカが橫からってくる。
しかも、である。
獣人で魔法が使えて分を偽裝してるだなんて、ほとんど事を言っちゃってるじゃんよぉ、それ!?
「み、分を明かせないんですか……!? わ、わかりました! 事があるんですねっ!」
「そうです、お師匠先輩にはすごい事があるんです!」
「これ以上、詮索いたしません! すみません!」
しかし、どういうわけか、ライカの言葉がすとぉんと決まり、リス獣人のの子は納得してくれたようだ。
いいのかそれで。
私はとりあえず、三人の冒険者が三人の変質者を捕まえたというストーリーを考え、その記憶を彼たちに植え付ける。
ご存じ、【午後3時のまどろみ(ドリームオンドリーム)】の魔法である。
「へぇえええ、すごい魔法ですねぇええ! 初めて見ました!」
リス獣人のの子、名前はソロ、は心したように聲をあげる。
あんたは一度、この魔法を味わってるんだけどね。
「変質者を捕まえたぜっ!」
「手ごわい相手だったな」
「それじゃ街に戻りましょう。新人の皆さんもお手柄でしたね!」
冒険者のお姉さま方は何事もなかったかのように男三人を連れて、意気揚々と冒険者ギルドに戻っていくのだった。
男三人は未だに気絶していたので、私が夢遊病魔法で歩かせたのは言うまでもない。
私たちは「変質者がいて、襲われかけた」とだけギルドに申告。
厄介ごとは嫌だから、それ以上の報告はしないのだった。
まぁ、どう考えても、変質者が古代魔法で遊んでて冒険者を襲ったってことだと思うけど。
魔法陣については掻き消えちゃったし、今さら確認のしようがないからね。
よぉし、被害者もでなかったし、一件落著!
……あれ?
一人だけ被害者が出たような気がするけど、気のせいだよね!
「面白かった」
「続きが気になる!」
「白貓と白タオル、區別がつかない……」
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