《【書籍化】男不信の元令嬢は、好殿下を助けることにした。(本編完結・番外編更新中)》19.採取の旅へ
ジルベルトが突然やってきた日から、三週間後。
冷たく冴えた空気が冬の到來をじさせる、早朝。
クレアは、街で買った薄紅のワンピースを著て、自室の姿見の前に立っていた。
魔法で髪のと目のを濃茶に変え、上に紺の新しいローブを羽織る。
そして、鏡の前でくるりと一周。満足げに息を吐いた。
「いいわね。悪くないわ」
壁の時計を見ると、五時し前。
もうすぐ約束の時間だ。
クレアは、街で買った新しい斜め掛けの布カバンと、小さくまとめた荷を持って、玄関に急いだ。
鍵をかけ、転移魔法陣に向かう。
そして、森のり口近くの窟から出ると、そこには馬と、旅人風の服裝に黒いマントを羽織ったジルベルトが立っていた。
ゴーグルのような眼鏡に、帽子をかぶっている。
この格好もとても素敵ね、と、思いながら、クレアは聲をかけた。
「おはようございます。ジル様」
事前に決めた呼び名で呼ぶと、ジルベルトがし嬉しそうに頷いた。
「おはよう。クレア。荷はそれだけか?」
「はい。見かけよりるんです」
クレアの荷を馬の後ろに縛り付けるジルベルト。
そして、馬に飛び乗ると、クレアに手を差し出した。
「さあ、行こう」
*
遡ること一週間前。
ジルベルトは、手にった材料を持って、再びクレアの元を訪れていた。
東屋のテーブルに、ジルベルトが持參した材料を並べてチェックするクレア。
「どうだ? 信用できる魔法士に頼んだんだが」
「素晴らしいわ。狀態もとても良い」
流石は王族パワー。早いし、高品質だし、言うことなしね、と、思うクレア。
そうか、と、ホッとした様子のジルベルト。
「ただ、殘念ながら二つだけ、どうしても手にらなかった」
「月見花のと、瑠璃の鱗、ですね」
「ああ。月見花のは、魔でなければ製できないため、ほとんど市場に出回らないらしい」
月見花とは、海の近くに群生する植で、月の晩にのみ花を咲かせ、數時間で枯れてしまう。
製するには、魔の魔力が必要のため、幻の素材と言われている。
これについて既に調べていたクレアは頷いた。
「今は幸い秋ですし(秋は天気が良くてほぼ毎日月が出る)、月見花のは、私が直接咲いている場所に行って、製しようかと思っていますわ」
魔の本によると、最も近い場所は、この國の最南端にある半島。
クレアの予定では、四日ほどかけて馬車を乗り継ぎ、現地で製。また四日ほどかけて戻ってくる、というつもりであった。
しかし、ジルベルトが、「一人では危なすぎる」、「乗合馬車では時間がかかりすぎる」と、言い出し。
あれよあれよという間に、一緒に行くことになってしまった。
初めての遠出。
一緒に行くのは好きな相手。
でも、理由は、相手の好きな人を助けるため。
嬉しいような切ないような気分になりつつも、クレアは気を引き締めた。
相手は王族、自分は魔な上に、王妃に探されているお尋ね者。
一緒に居るのを見られただけで、ジルベルトにダメージが行きかねない。
(とりあえず、外見は私だと分からないように変裝していかないと)
そんな訳で、クレアはわざわざ街に行って服を買い、念りに変裝(決してお灑落ではない)。
ドキドキしながら待ち合わせ場所に向かったのだが、まさかの馬一頭に二人乗り。
しかも、抱きかかえられるように前に乗せられて、クレアの心臓は発寸前だ。
ジルベルトが、これからの道中の説明をしている気もするが、茹で上がった頭に全くってこない。
(お、落ち著くのよ、クレア。ケットッシーの時は、よく肩に乗ってたじゃない)
顔にっていたこともあるし、なんなら耳につかまっていたこともある。
ちょっと相手の心臓の音が聞こえるくらい、た、大したことない。
息を、すーはーすーはー、ゆっくり吸うクレア。
何とか心を落ち著かせて、ちらりと上を見上げると、ジルベルトと目が合った。
「な、なんです?」
裏返った聲で詰問するクレアに、ジルベルトが軽く目をそらして呟いた。
「……そのも似合うな」
ぼん
クレアの許容量が限界突破。
そこからしばらく、彼はボーっと馬に乗ることになった。
*
その日は天気も良く、二人の旅は極めて順調だった。
街道沿いにある宿場町で休憩を取りながら、どんどん前に進む。
ジルベルトはとても良いパートナーだった。
途中で綺麗な景があれば立ち寄り、常に疲れないように気遣ってくれる。
おで、クレアは快適に旅を楽しむことができた。
そして、傾いたが二人の影法師を細長く斜めに地に映す頃。
ジルベルトが、前方を指さした。
「モルベンの街だ。今夜はあそこに泊る」
街にると、すでに街燈に燈がともり始めていた。
クレアを乗せた馬を引きながら、慣れた様子でゆっくりと街を歩くジルベルト。
到著したのは、繁華街から一本ったところにある、小さな宿。
裏手にある廄に馬をつなぎ、クレアをエスコートしながら宿の中にっていくジルベルト。
彼を見て、宿の主人が頭を下げた。
「ようこそ、ジル様」
「ああ。世話になる」
案された部屋は、三階。
どうやら三階は特別らしく、階段を上がるときに見えた二階より、部屋の數がかなりない。
心なしか裝も豪華な気がする。
「こちらにどうぞ」
クレアが案されたのは、ジルベルトの向かいの部屋。
そこは、白が基調の清潔のある部屋だった。
ベッドやソファ、テーブル等の家も比較的新しく見える。
クレアは荷をテーブルの上に置くと、ベッドに寢転んだ。
「は~。著いたわ~。楽しかった~」
興のせいか、疲れはじない。
むしろ、これからちょっと外を散歩したいような気すらする。
こんなに楽しめる旅になったのはジルベルトのおだと、心の底から謝するクレア。
そして、何となくじっとしていられなくて、荷を解いていると、コンコンコン、と、ノックする音が聞こえてきた。
「お食事が出來ております」
はい、と、返事をするクレア。
荷を適當にクローゼットに突っ込んで、下に降りていくと、既にジルベルトが座って待っていた。
クレアが座ると同時に料理が運ばれてくる。
二人は、「いただきます」と、フォークとナイフを手に取った。
「うーん、味しい!」
「ここの宿は、料理も自慢なんだ」
ジルベルトの話によると、この宿は騎士団幹部がよく利用する宿らしい。
「クレアが気を遣わないように、今回は貸し切りにしてある」と、さらりと言われ、クレアは思わず俯いた。
違うと分かっていても、何かを勘違いしてしまいそうになる。
そして、食事が終わった後、ジルベルトが「せっかくだから外を歩かないか」とい。
二人は夜の街を散歩することになった。
ゆっくりと歩くジルベルトの橫を歩きながら、クレアは気になっていたことを尋ねた。
「ジル様は、四日も休んで大丈夫なのかしら?」
「大丈夫だ。三カ月前に遠征から帰ってきたばかりで、休みがたまっている。それに、休まないと、『団長が休まないと、団員は休めません!』と、言われるからな」
騎士団で見た若手騎士達を思い出し、くすりと笑うクレア。
釣られるように、珍しく微笑のようなものを浮かべるジルベルト。
しばらくして、ジルベルトが尋ねた。
「ところで、クレアはを探すような魔を使えないか?」
「やろうと思えばできると思いますけど、何を探しているのかしら?」
「ケットッシーだ」
クレアは思わず咳き込みそうになった。
まさか、そのケットッシーって、私?
「小型のケットッシーが俺の部屋に頻繁に來ていたんだが、ここ三週間ほど現れていないんだ。どこかで怪我でもしてけなくなっているのではないかと心配している」
「い、家に帰ったということはないのかしら?」
「だったら良いのだが、食い意地が張っていて、間が抜けているところがあるケットッシーだから、トラブルに巻き込まれたのではないかと気になっている」
溜息をつくジルベルト。
食い意地が張っていると間が抜けているは余計だが、どうやらジルベルトは本気でケットッシーのクレアを心配しているらしい。
(何とか心配させないように消える必要があるわね…)
「分かりましたわ。帰ったら本で調べてみますわ」
「ああ。頼む」
その後、二人は、夜の街を話しながら散歩した後。
明日も早いから、と、ゆっくり宿に戻った。
【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
『醜穢令嬢』『傍若無人の人でなし』『ハグル家の疫病神』『骨』──それらは、伯爵家の娘であるアメリアへの蔑稱だ。 その名の通り、アメリアの容姿は目を覆うものがあった。 骨まで見えそうなほど痩せ細った體軀に、不健康な肌色、ドレスは薄汚れている。 義母と腹違いの妹に虐げられ、食事もロクに與えられず、離れに隔離され続けたためだ。 陞爵を目指すハグル家にとって、侍女との不貞によって生まれたアメリアはお荷物でしかなかった。 誰からも愛されず必要とされず、あとは朽ち果てるだけの日々。 今日も一日一回の貧相な食事の足しになればと、庭園の雑草を採取していたある日、アメリアに婚約の話が舞い込む。 お相手は、社交會で『暴虐公爵』と悪名高いローガン公爵。 「この結婚に愛はない」と、當初はドライに接してくるローガンだったが……。 「なんだそのボロボロのドレスは。この金で新しいドレスを買え」「なぜ一食しか食べようとしない。しっかりと三食摂れ」 蓋を開けてみれば、ローガンはちょっぴり口は悪いものの根は優しく誠実な貴公子だった。 幸薄くも健気で前向きなアメリアを、ローガンは無自覚に溺愛していく。 そんな中ローガンは、絶望的な人生の中で培ったアメリアの”ある能力”にも気づき……。 「ハグル家はこんな逸材を押し込めていたのか……國家レベルの損失だ……」「あの……旦那様?」 一方アメリアがいなくなった実家では、ひたひたと崩壊の足音が近づいていて──。 これは、愛されなかった令嬢がちょっぴり言葉はきついけれど優しい公爵に不器用ながらも溺愛され、無自覚に持っていた能力を認められ、幸せになっていく話。 ※書籍化・コミカライズ決定致しました。皆様本當にありがとうございます。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※カクヨム、アルファポリス、ノベルアップにも掲載中。 6/3 第一章完結しました。 6/3-6/4日間総合1位 6/3- 6/12 週間総合1位 6/20-7/8 月間総合1位
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