《【書籍化】男不信の元令嬢は、好殿下を助けることにした。(本編完結・番外編更新中)》27.七年前
會場が騒然とした。
七年前の事件と言えば、大雨の日の転落事故。
ジルベルトの母である側妃メアリーと、名家の息子達である騎士八名、合計九人が亡くなった痛ましい事件だ。
ぬかるみの上を馬が暴走した後が見られたことから、當時は、「運の悪い事故」として処理されたが、族達はずっとどこかで思っていた。
『あれは事故ではなく、故意だったのではないか』と。
とある貴族が呟いた。
「唯一の生き殘りであるコンスタンス嬢が意識を取り戻したということは、何か覚えているのではないか?」
「もしかすると、何か見た可能もありますな」
「ああ、私の可い息子に一何が起こったの……」
更に騒然となる會場。
父親の辺境伯と一緒に後方に立っていたクレアは、気を引き締めた。
(いよいよ始まったわね)
彼が見守る中、白いドレス姿のコンスタンス侯爵令嬢が、正裝したフィリップにエスコートされながら、ゆっくりと壇上に上がった。
一か月前よりも、頬がふっくらとしており、可らしい容姿を取り戻している。
コンスタンスは、國王にぎこちなくカーテシーをすると、観衆の方を向いて一禮。
祈るように手を組むと、震える聲で話し始めた。
「……ずっと、意識をきちんと取り戻したら、皆様にお伝えしなければならないと思っていたことがあります。メアリー様と私を守ってくれた騎士達は、最後まで本當に勇敢に戦ってくれました。この場を借りてお禮を言わせて頂きたいと思います。本當に、ありがとうございました」
目に涙をためながら、深々と頭を下げるコンスタンス。
事件で息子を亡くした公爵が、たまらずといったふうに聲を上げた。
「待ってくれ! 息子は事故で亡くなったのではないのか?」
「…事故ではありません。私たちは襲われたのです」
シンと靜まり返る會場。
コンスタンスは、つっかえながら、當時の狀況を話し始めた。
「あの日は、大雨でした。騎士の方が『急ぐと危険だ』と言って、馬車はゆっくりと走っていました。そして、崖の近くまで來たとき、急に馬車が止まったのです」
何事かと窓の外を見ると、馬車の進行方向に、紺のローブを著たが現れたという。
「騎士がに何かを尋問しましたが、は答えませんでした。そして、次の瞬間、が何かをび、馬車を引いていた馬が突然暴れ出しました。何人かの騎士がに向かって剣を抜きましたが、乗っていた馬が次々と暴走して、騎士達は崖から落ちていきました」
顔を押さえて泣き崩れる、騎士の母親と思われる貴婦人。
コンスタンスは、ギュッと手を握った。
「騎士達は必死で馬車が崖から落ちるのを止めようとしてくれました。でも、馬が暴走している狀態では、どうすることも出來ず……」
目を伏せ、顔を歪める貴族達。
コンスタンスの頬を涙が伝った。
「馬車のドアが開かず、私たちは馬車ごと崖から転落しました。メアリー様が私をかばって下さって、私は何とか一命をとりとめました。騎士の何人かが生きていて、けがをしているにも関わらず、必死に私を助け出してくれました。でも、すぐにローブのが現れて…。騎士達がかなくなりました」
シンと靜まり返る會場。
あちこちで、がフラフラと倒れ込む。
コンスタンスは、フィリップに支えられながら、必死に話を続けた。
「ローブのは、恐怖でけなくなっている私を見てこう言いました。『こんな小さな子供がいるなんて聞いていない』と。
そして、私の頭にって言いました。『あんたはまだい。殺すには忍びないから、運に任せよう。あんたの運が良ければ、誰かがこの魔法を解いてくれるだろう。恨むならあんたの國の王妃様を恨みな。王妃様にとってあんたたちは邪魔なんだよ』と」
會場が騒然となった。
突然飛び出た王妃の名前に驚愕する貴族達。
そんな中。
「……何を言い出すかと思えば、隨分ね」
壁際に立っていた王妃が、悲しそうな顔で口を開いた。
彼は壇上の近くに歩み寄ると、潤んだ目でコンスタンスを見上げた。
「なんてことを言うのかしら。とんだ濡れだわ。七年ぶりに出てきたと思ったら、一何を言い出すのよ。何か証拠でもあるの?」
(今ね)
クレアは軽く息を吸い込むと、聲を張り上げた。
「私も聞きました」
一斉にクレアの方を振り向く貴族たち。
クレアは、続けて聲を張り上げた。
「私が十歳の頃。王宮で、王妃様と紺のローブを著た赤の魔が話しているのを聞きました。『憎たらしいメアリーを事故に見せかけて始末できた。これで次期王太子はオリバーのものだ』と」
王妃が、引きつった笑みを浮かべた。
「何を言っているの。その時に聞いたのなら、なぜ今更言い出すの」
「覚えています。王妃様ですよね。『この娘は使えるから、私の言葉を絶対に信じて逆らえない魔法をかけておけ』と、赤の魔に命令したのは」
あちこちで息を飲む聲が聞こえる。
とあるご婦人が、隣にいる夫に囁いた。
「確かに、先ほどの、王妃様のクレア嬢に対する高圧的な行は異常でしたわね。あれはおかしいと私も思いましたわ」
「あれが魔法が効いていると思っての行であれば、説明がつく」
「そういえば、クレア嬢は王妃様を盲目的に信じ過ぎていると思ったことが何度もありましたわ」
會場のあちこちでされる、同様の話。
王妃が口の端をあげた。
「七年前に聞いたなんて、そんな話が信じられると思っているの? そんなものは証拠とは言わないのよ」
「では、なぜ私はこれまで七年間、王妃様に逆らえなかったのですか?」
「そ、そんなもの、知らないわよ!」
鋭い目でクレアを睨みつける王妃。
その目を靜かに見返すクレア。
すると黙って聞いていた國王が、大きなため息をついた。
「もう良い」
そして、マントの隠しから小さな水晶球を出すと、王妃に見せた。
「これに見覚えはないか?」
一瞬でを失う王妃。
國王は靜かに言った。
「中には、お前と赤の魔が結んだという契約容がっている。ここに來るのが遅れたのは、お前の部屋を探していたからだ」
「う、噓っ!」
「噓ではない。しっかりとっていたぞ。『側妃暗殺に手を貸せば、森を焼くのを止めてやる』とな。
―――言い訳は、尋問にするといい」
王妃が、カッと、悪鬼の如く目を見開いてんだ。
「なによ! なんなのよ! あなたたち! こんなことをして許されると思っているの!」
王妃が狂ったように喚き出した。
ジルベルトの指示をけた騎士數名が、騒ぐ王妃を丁重に連れ出した。
「らないで! 無禮者! あんたたちなんてー―……」
王妃の喚き聲が遠ざかっていくのを聞きながら、呆然とする貴族達。
國王は、彼らに頭を下げた。
「當時、暗殺ではないかという話があったが、政局不安になることを恐れ、事故で処理させたのは私だ。この場を借りて詫びさせてしい」
突然の國王の謝罪に、シンとする會場。
厳しい顔つきで、會場を後にする國王。
そのどこか寂し気な後姿を見送りながら、クレアは呟くように思った。
これで呪われた七年間が終わったのね、と。
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