「いくぞ！」

誰かが、そうんだ。

すると、森の中にを隠していた冒険者たちが一斉に鎧ノ大熊(バグベア)の前に躍り出る。

「ウゴォオオオオオオオオッッ！！」

冒険者を見た鎧ノ大熊(バグベア)が雄びをあげる。

戦闘が始まった。

「ティルミお嬢様、手はず通りに」

「ええ、わかっているわ」

作戦はこうだ。

他の冒険者たちが鎧ノ大熊(バグベア)を引きつけている間に、ティルミお嬢様が威力の高い魔の準備する。

そして、準備ができ次第、冒険者たちはその場から離。それを確認できたら、お嬢様が魔を放つ。

僕の役割は、魔の構築をしている間、無防備になるお嬢様を護衛すること。

冒険者たちはそれぞれ武を振り回し、鎧ノ大熊(バグベア)に攻撃していた。

中には吹き飛ばされて、戦線離する者もいる。そういう人は後方で神が治癒をしていた。

「おい、もっとこっちに引きつけろ！　このままだと魔がお嬢ちゃんを襲ってしまうぞ！」

冒険者の一人がそうぶ。

確かに、鎧ノ大熊(バグベア)はティルミお嬢様の存在を気にしているのか、時々視線がこちらと差する。

恐らく、お嬢様が放とうとしている魔が脅威であることに気がついているのだろう。

とはいえ、冒険者がヘイトを稼いでいるおかげで、ティルミお嬢様には近づけないでいた。

「準備、できたわ……」

お嬢様がそう口にした。

「離れてください！」

なので、僕は他の冒険者たちにそう呼びかけた。

瞬間、冒険者たちは一斉に鎧ノ大熊(バグベア)から距離をとるよう後方に走る。

「〈火炎撃滅砲(ディオフィルゴ)〉！！」

火系統魔、第七位階〈火炎撃滅砲(ディオフィルゴ)〉。

お嬢様から放たれたそれは火炎は渦巻きながら、鎧ノ大熊(バグベア)まで一直線に出された。

數々の木を巻き込みながら鎧ノ大熊(バグベア)のを抉るように焼き盡くす。

の一部を抉られた鎧ノ大熊(バグベア)はゴテッと力なく地面に倒れた。

倒したのは誰の目にも明らかだった。

「うぉおおおおおおお！！」

「すげぇええええええええ！！」

お嬢様の魔を目の辺りにした冒険者が歓聲をあげる。

あれだけすごい魔を見せられたら、誰だってそうしたくなるだろう。

「はうっ」

見ると、お嬢様が息を吐いてよろめいていた。

「お嬢様、大丈夫ですか？」

慌てて彼が倒れないように支える。

「ちょっと魔力を消費しすぎただけよ。し待っていれば、回復するはずだから」

あれだけの魔を放ったんだ。

力を消耗するのは當然か。

「いやー、すげぇな。お嬢ちゃん」

「あんな魔、初めてみたぜ！」

興鳴り止まない様子で冒険者たちがティルミお嬢様に話しかけてくる。

「ええ、ありがとう」

それにお嬢様は笑顔で応えていた。

ともかくこれで無事、鎧ノ大熊(バグベア)を倒すことはできたし、皆で村に戻れば、全て解決だ。

「そうだ、アメツ。先に村に戻って、無事魔を倒したことを伝えてくれないかしら。村人たちに討伐されたことをしでも早く伝えたいの」

「えっと、お嬢様は？」

「私は疲れたから、ゆっくり戻るわ」

ということは僕はお嬢様と一時的に離れるということだ。

そのことに不安がよぎる。

「お嬢ちゃんなら、俺たちが責任もって護衛するから安心してくれ！」

冒険者の一人がそういってを張る。

他の冒険者たちも頷いていた。

これなら任せてもよさそうだ。

「わかりました。それじゃ、僕は先に戻っていますので」

「ええ、お願いね。アメツ」

「お嬢様もお気をつけて」

そう返事をすると、僕は森の中を駆け足で抜けていく。

道は覚えてるので、迷うことはない。

「おい、戻ってきたぞ！」

村に戻ると、どうやら村人たちは僕たちが戻ってくることを待っていたようで、外に集合していた。

「皆さん、安心してください。魔は無事討伐しました。他の方たちもすぐ戻ります」

そう僕が言うと、村人たちはそれぞれ歓聲の聲をあげた。

「よかったー！」だとか、「これで安心できる」「これもティルミお嬢様のおかげだ！」など、會話が聞こえてくる。

「よっし、今日は宴だー！」

「「うおーっ！」」

誰かが拳をあげてそう言った。

「當然、お前も參加するよな？」

「えっと、ティルミお嬢様次第ですかね」

突然話しかけられたことに困する。

ティルミお嬢様は參加する、と言うだろうか？

「よしっ、それじゃあ準備をするぞー！」

と言いながら、村人たちは宴の準備を始めるのだった。

◆

アメツの姿を見えなくなった直後。

冒険者たちは鎧ノ大熊(バグベア)の解を始めた。

魔を解すると必ず手にる魔石はもちろん、皮やなんかも貴重な素材だ。

素材ごとに解したら、手分けして運ぶ。

「私もなにか運ぶわよ」

「いいのか、お嬢ちゃん？　疲れてるんじゃないのかよ」

「疲れているのはあなた方も一緒でしょ」

そういうことなら、と冒険者の一人は素材をれた大きな袋をティルミに手渡す。

魔力を消費したティルミには疲労がうかがえたが、それは他の冒険者たちも同様だった。

皆、戦闘をして疲れているので、ゆっくりとした足取りで森の中を歩く。

とはいえ、標的の魔を退治した後なので、一向は警戒心もなく和気藹々と談笑しながら森の中を進んでいった。

特に、ティルミが會話の中心となり、皆を盛り上げていた。

彼はあまり親しくない人とも、會話を盛り上げることができる天の才能があった。

そんな折――。

「おい、なにかいるぞ！？」

誰かがそうぶ。

確かに、遠くになにかがいた。そのなにかはこちらへと近づいてくる。

「クゴォオオオオオオオオオオオオッッッ！！」

近づいてきたのは鎧ノ大熊(バグベア)だった。

「うそ！？　まだいたの！？」

ティルミは驚愕する。

てっきりこの森にいる鎧ノ大熊(バグベア)は一だけだと思っていた。

「おい、まだ、なにかいるぜ？」

「他にも、鎧ノ大熊(バグベア)がいるぞ！！」

出現した鎧ノ大熊(バグベア)は一だけではなかった。

１、２、３……と數えて５いることに気がつく。

どうやら五ものの鎧ノ大熊(バグベア)は、すでに自分たちを取り囲んでいるようだった。

「おい、どうする……！？」

「こんな勝てるわけがねぇ……」

誰もが揺していた。

このままだとまずい。気持ちで負けてしまってはどんな戦いでも勝つのは難しい。

「私の指示通りにいて！　そうしたら、絶対に勝てるわ！」

ティルミは前に進み出て聲を張り上げる。

絶対に勝てる拠なんてどこにもなかった。

けれど、自分がそう言うことで、他の者たちが自信を持つことができることをティルミは知っていた。

「お前ら、行くぞ！」

「おう！」

狙い通り、彼らは揺をぎ払い、やる気に満ちあふれていた表をする。

これなら、もしかしたら勝てるかもしれない。

ティルミはそう思った。

ジャンル別６位に落ちてしまいました(´・ω・｀)

評価いただけると嬉しいです。

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この後、もう一話投稿予定です。