《[書籍化]最低ランクの冒険者、勇者を育てる 〜俺って數合わせのおっさんじゃなかったか?〜【舊題】おい勇者、さっさと俺を解雇しろ!》飛鳥:苛立つ男

「よお、お嬢様。隨分と荒い再會だな」

しかし、殺すつもりはなかったが、それでも一撃で仕留めようと足を狙った攻撃は、余裕を持たれたまま回避された。

まさか避けられるとは思っていなかった飛鳥は、ピクリと眉を寄せると、反撃を警戒してその場を飛び退いた。

その時にはすでに飛鳥の視界を邪魔していた炎は消え去り、その場には浩介と飛鳥の二人だけが殘された。

「……なかなかやりますわね」

「これでもダンジョンで四年も生き殘ってきたんでな。危険を察するのは得意なんだよ」

「そのようですね」

だが、そうして話をしている間にも、浩介は飛鳥が武を構えているのに相変わらずこうとしないのだが、飛鳥には浩介の考えが読めなかった。

一見するとゲーム開始前と同じようにヘラヘラと隙だらけの構えで立っている。だが、そんな男が先ほど自分の攻撃を避けたのを飛鳥は自の目で見ている。

何か隠し球を持っていて、下手に攻撃すれば反撃をけるかもしれない。

飛鳥は浩介のことを気に食わないと思っているが、浩介の言ったとおり、彼がダンジョンで五年近く活し続けてきたのは紛れもない事実なのだから、警戒せざるを得ない。

それでも飛鳥は負けるつもりはないが、この戦いは一対一の勝負ではないのだ。ここで浩介を倒したところで、自分が負傷するような狀況になったのならばまずい。

それ故にしばらくの間お互いにきを止めて見合った狀態でいたのだが、仲間にはすぐに追いつくと言ったのに〝三級程度〟に足止めされている狀況に焦り、苛立ち、飛鳥は狀況をかすためにグッと足に力を込め、走りだろそうとする。

「で、これからどうするつもりだ?」

だが、その出鼻を挫くかのように浩介が飛鳥へと話しかけた。

「……あなたはこれからはどうされるおつもりですの? あなたの仲間はいませんよ?」

そんなものは無視して仕掛けてしまえばいいものを、飛鳥は浩介の話に応じることにした。

それは彼格ゆえというのもあるだろう。だが、それだけではなく飛鳥自が浩介のことが気になったのだ。

もちろんそれは方面や好意的なによるものではないが、それでもし話をしてみようと思う程度には思えたのだった。

「そうだなぁ……一つ聞きたいんだが、いいか?」

「なんでしょう? あなたを倒して仲間を追わなければならないので手短にお願いします」

「なんだ、聞いてくれるのか?」

「手短に、と言ったはずですが?」

話は聞くが、馴れ合うつもりはない。とでもいうかのような飛鳥の雰囲気に、浩介は肩をすくめると軽くため息を吐いてから口を開いた。

「なんでそんなに特級を……というか力を求めるんだ?」

「なんで? そんなの決まっているではありませんか。國のため、そして、人類のためです」

それは自に特級の才能があるとわかったときから飛鳥が抱いた夢。

ゲートを壊し、モンスターに襲われている人を助け、人々を笑顔にする正義の味方。

その夢を葉えるために飛鳥は努力をしたが、それでも長するにつれ、自分一人では誰も彼もを助けるなどできないということを理解した。

だからこそ、誰も彼もを助けるというその夢は、自分と同じ特級を揃え、チームを組んで安全に、迅速にできる限り多くのゲートを壊すという目標へと変わった。

「人類のためとは、また大きく出たもんだな」

「……あなたは今の世界の狀況をわかっているのですか? 二十年前、突如としてこの世界とは異なる世界とつながる『ゲート』が現れ、そこから異形の化たちが現れた。ゲートは放っておけば徐々に大きくなっていき、周囲を飲み込む。そして、代わりにこちらの世界にどんどん化を送り込んでくる」

「これでも冒険者やってんだ、それくらい知ってるさ。まあ、常識だな」

(なら、なぜそんなヘラヘラと笑っていられるのですか!)

が真面目に話しているにも関わらず、それを真剣に聞いているようには思えない浩介の態度に、飛鳥は顔を顰め、槍を握る手に力を込めた。

(——ああ、苛立つ)

それが浩介と話している飛鳥の気持ちだった。

「ならばなぜ戦わないのですか? 冒険者という才に目覚めたというのに、國を守るため、人々を守るために、なぜ戦わないのですか! この瞬間にも誰かがどこかで襲われているかもしれません。助けてしいとねがっているかもしれません。わたしには、私たちにはそれを葉えることができる。助けることができる! だというのに、なぜあなたは戦わないのですか!?」

『夢』から『目標』へと変わった……変えざるを得なかったその道だが、それでも誰かを助けるという本は変わっていない。

だが、浩介と話しているとそんな自の想いさえバカにされているように思えてしまった。

「……なぜ? なぜってそりゃあ──めんどくさいから」

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