《[書籍化]最低ランクの冒険者、勇者を育てる 〜俺って數合わせのおっさんじゃなかったか?〜【舊題】おい勇者、さっさと俺を解雇しろ!》ジークとの戦い

「そんなことより、真面目に訓練しとけ。二週間後には修學旅行でまともに訓練できなくなるんだから、今のうちくらいはしっかりやっとけ」

あと二週間もすればこいつらは修學旅行で四日、休みをれて五日は最低でも訓練ができなくなる。

普段ならそれくらいの休みはなんともないが、今は新しいことを覚えたばっかりだ。

一日休むと三日分の遅れが出る、的なことはよく聞くが、それはこいつらにも言える。

し間を開けると、それだけで今功している覚を忘れてしまうかもしれない。

「はーい」

なのでそのことを注意しながら準備を終えると、およそ二週間ぶりの全員での訓練を再開させたのだが、しばらくすると來てほしくない奴が訓練室にってきた。

「やあやあ。みんな頑張ってるね」

ドアが開く音と同時に、どこかじを殘したようにも聞こえる楽しげな聲が聞こえてきた。

聲の主は、來てほしくない奴こと『竜殺しの勇者』のジークだ。

「なんのようだ?」

「うん、すっごい邪険にされてるじがするけど、気にしないよ」

邪険にしたつもりはないんだが、自然とそんな聲と表と雰囲気になってしまったようだ。仕方がない。

「明日には帰るからね。せっかくだったら君たちが向こうに行く時に一緒に帰ろうかとも思ったんだけど、僕も僕で呼び出されてるんだ。ごめんね?」

「何も謝ることなんてないさ。呼ばれてるんだったらさっさと帰っていいぞ」

むしろ連絡なんてせずに帰って構わない。大歓迎だ。

「そんな〜。どうせ明日には帰るんだからしくらい話でもしようよ〜」

「気持ち悪い聲ですり寄ってくんなよ」

こいつは、元々なんらかの用事があってこっちに來ていて、そのついでにランキング戦で問題が起きた時の対処係としてこの學校に協力していた。

が、そのランキング戦ももう終わった。

こっちにきた用事ってのは俺に會うこと、なんて言ってるが、多分噓だ。

本當の容がなんなのか、だとかそこまで深く聞くつもりはないけど、まあその用事ってのも終わったんだろう。

なので、両方ともやることが終わったので國に帰ることになったのだろう。こいつもこいつで立場があるわけだし、いつまでも日本に殘ってるわけにはいかないからな。

「あははっ。まあ冗談はさておき、せっかくだし、最後くらいもう一回手合わせをしてあげようかなって思ったんだ。この間の戦いで負けちゃったし、必要かなってね」

ジークはそう言いながら手に持っていた剣を前に出し、俺に見せつけてきた。

なんで剣を持ってんのかと思ったが、そう言う理由かよ。

だが……え〜〜〜。確かにこいつとの手合わせってのはいい経験になるだろうけどさぁ……。

「伊上さん」

ためにはなるのだが、そばに置いておきたくないという俺の理の葛藤が頭の中で繰り広げられていると、宮野が期待の眼差しで俺を見てきた。

「……っはああぁぁぁ〜〜〜……わかった。好きにやれ」

問題があるのは俺の面ってだけの話だし、今はジークも真面目に相手をしてくれるようだし問題ない。

元々悪いやつではないのはわかってるしな。ただ、趣味が絶的に俺とは合わないってだけで、人柄自は嫌いではないんだ。

その趣味の違いがどうしても見逃せない大問題だから距離を取りたいと思っているわけだが。

「それじゃあ許しも出たことだし、やろっか」

ジークはそう言うと、著ていた上著をいで、それを俺に渡してきた。

その際にウィンクしてきたのでちょっと鳥がたった。これ、放り捨ててやろうか?

俺が手元の服に視線を落としているうちにお互いに準備は終わったようで、

久しぶりのチームでのきだが、大丈夫だろうか。

そう心配したが、宮野達のきに問題はなく、いつも通りにけている。

だが、なんだな。誰も新しく覚えたことは使わないんだな。

しかしその理由もわからなくもない。

こいつらは今日久しぶりにチームで合わせるわけだが、新しいきを取りれての連攜は練習していない。

いきなりやったとしてもミスる可能があるので、控えているのだろう。

とは言っても、ジークみたいに強者と戦うのはそうそうないことだし、今回の経験を活かすためにも多分そのうちどこかで試し始めるだろうな。

なんて考えていると、宮野が新技を使った。

新技って言っても、いつもより魔法の発がスムーズになって、前までは剣を振るか魔法を使うかのどっちかしかできなかった狀態から、剣戟の途中でも魔法が使えるようになったってだけだが。

だが、たったそれだけの違いであっても宮野達レベルの戦いになるとかなり変わる。

特に宮野は速さを活かした戦いが得意なわけだし、いちいち作を區切る必要がないってのはそれだけで大幅な強化になるだろう。

安倍は宮野が戦い方を変えたのを見て、宮野と同じように『魔法を使う魔法』を使い始めた。

あらかじめ決められた魔法を決められた威力や角度でしか放てないが、速やかに放つことのできるので、牽制として魔法を放っている間に本人は別の魔法を用意している。

北原は結界を張って自と安倍を守り、宮野と淺田に魔法をかけて強化と保護を施しているが、それだけでは普段と変わらない。

まあ、こいつの場合は一度準備を整えてしまえば何が変わるってわけでもないからな。

淺田は、どうだろう? あいつのはわかりづらいんだよな。

魔法が発しているかしていないかだったらわかるんだが、常に発し続けている狀態なわけだし、それに魔力を注いでいるのかいないのかってのはわからない。

ただ……きがいか?

見ていると、予想していたよりもほんの數瞬攻撃のタイミングがずれている時がある。

多分強化の度合いを変えようとしているんだろうが、訓練でも上手く行っていないのに実戦で扱いこなせるわけがない。

そのせいで、自分が思っていたきと異なっているんだろう。

だがそれでも時折ジークに一撃をれ、あいつのきを止めたりしているので、強化に功したのだろう。

しかもその強化した一撃は、一回限りのまぐれ功ではなく、この戦いの最中に何度もあった。

今まで練習しても功率はそう高くなかったのに、実戦になると何度も功するとは……やっぱりあいつは機に向かって勉強する理論型じゃなくて、実踐で覚える脳筋型みたいだな。

「お疲れ様〜。いやー強さ自は問題ないんだよね。負けちゃったのはただの偶然っていうか、ルールのせい?」

お互いにまだまだ戦えるが、千日手になっていたので勝負は終了となった。

膠著を破る方法はお互いにあっただろうが、それをするともう訓練じゃなくなるからな。

「あの」

「ん? 何かな?」

さっきの試合の検討をしていると、宮野が真剣な様子でジークに聲をかけた。

「私と戦ってもらえませんか?」

そんな宮野の聲にジークは笑いかけながら答えると、宮野は意を決したようにジークを見つめて言った。

「それは、一人でってことでいいのかな?」

それを聞いたジークは笑顔から一転、真剣な表になって問い返した。

「はい。それと、できれば実剣でお願いします」

「んー、なるほど。本気で戦いたいわけか。いいよ。そうなると僕が勝てるかどうかわからなくなるけどね」

普通なら四人相手に余裕を持って戦ってたのに一人に負けるはずがない。

だと言うのに宮野一人と戦って負けると言うことは、それは宮野が一人で戦った方が手強いと言っているのに等しい。

つまり、宮野の戦いにとって仲間が足手纏いになっているのだと、ジークは言っているのだ。

しかし、正直に言うならそれは間違いではないと俺も思っている。なくとも半分は。

宮野は、仲間が攻撃されたらそっちを守りに行くだろうし、守りに行かなくても気にする。

高速でき回るから自分の他に接近戦を仕掛ける奴がいるとそのきまでも考えて行しないといけないので、その分きが制限されて鈍くなる。

だが完全に要らないのかと言うと、そう言うわけでもない。

接近戦の際に仲間が邪魔になると言うのなら、それはただ単に宮野の訓練不足ってだけだ。

仲間との連攜、魔法と剣を併用しての戦い。それらがうまくできるように訓練すればいいだけの話だ。

それに、後ろの仲間を気にしてしまうと言うのなら、それも宮野のせいだ。

仲間なんだったら、戦闘中に大丈夫かななんて気にしないで、信じて自分のやることに集中すればいい。

それは俺だって教えてきたはずだ。

だってのに宮野が後衛の補助にる時があるのは、勇者って稱號のせいだろうな。この間の負けの影響もあるかもしれない。技は向上しているが、心構えが以前よりも引け腰になっている。

勇者だから守らなくちゃいけない。勇者だから負けちゃいけない。

そんなふうに思い込んでいるんだ。

要約すると、気負いすぎなんだよ、こいつは。

だから仲間がいると後ろを気にして全力で突っ込んでいけないし、仲間を巻き込むかもしれないきはできないし、大技も使えない。

「ただし、武は鞘付きでやらせてもらうよ。……ああ、君は抜きでいいよ」

宮野は抜きでいいって言ったのにジークは鞘付きなのは、舐めているからじゃない。むしろ本気でやるからだろう。

ジークの場合、一撃が強過ぎるんだ。だから抜きで戦ったら、萬が一にでも殺してしまうかもしれない。それは鞘付きでも死ぬ危険があるってのは同じだが、抜きで斬るよりは生存する率が高い。

そんな力押しのジークに対して、宮野は速度型の戦いをする。鞘程度とはいえ、重さは軽いほうがいいだろう。

だからジークは本気で戦うためにそう言ったのだ。

「あ、あたしもお願いっ」

だが2人の戦いが始まる前に、淺田がし慌てた様子で割り込んでいった。

「君も? ……まあ、いいか。なら先に君から始めようか」

ジークは淺田の言葉を聞いてしだけ眉を寄せたが、一瞬だけ俺の方に視線を向けると、淺田の言葉を了承した。

だが、ジークの言葉は自分を侮っているものだとでも思ったのか、淺田は不機嫌そうだ。

まあ聞き様によってはそう聞こえるかもしれないな。

宮野との勝負は厳しいものになるだろうから、先に雑魚との戦いを終わらせてしまおう——ってなじで。

だが今のジークの表は……まあそういうことだろうな。ジークもわかっているんだろう。

この中で一番警戒が必要なのが、宮野ではなく淺田だってことに。

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