《[書籍化]最低ランクの冒険者、勇者を育てる 〜俺って數合わせのおっさんじゃなかったか?〜【舊題】おい勇者、さっさと俺を解雇しろ!》到著しちゃった

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しっかりと向かい合って話をすることができて宮野達チームのわだかまりも、すぐさま完全に、とはいかないだろうがそれでもなんとかすることができた。

そんなこんなで々とあったが俺たちは集合地點に集まって空港まで行き、飛行機に乗ったのだが……

「空港に著いたわけだが……遂に來ちまったか」

想像以上に著くのが早かった。

數年前までは日本からヨーロッパ方面までは十何時間とかかかってたのに、今ではダンジョン産のアイテムを使っているおかげで飛行時間は従來の半分程度しかかからなかった。

それ自は構わない。どうせ何時間も飛行機に乗ってても暇だったし、十何時間もじっとしてんのは辛いからな。

それでも數時間はかかるのは間違い無いんだが。

だがしかし、著いたらついたで問題がある。問題っつっても俺の気持ちの問題だけどな。

「今更そんなこと言ってないで、楽しみましょうよ」

宮野は飛行機に乗っている間に多なりとも整理をつけることができたのか、まだいつものような明るさはないものの元気になっていた。

……ま、そうだな。せっかくこいつらが楽しめるようになったってのに、俺が暗くなってちゃ——

「久しぶりだな、伊上浩介」

——だめだろう……え? ……誰だこいつ?

「え? ……どちら様でしょうか?」

突然名前を呼ばれたのでその方向に視線を向けたのだが、そこには見覚えの全くない男が立っていた。まじで誰だ?

男の歳は四十くらいだろうか? 短く刈り上げた金茶の髪に、かなり筋質なをしている。プロレスラーとかか?

けど、そのまとっている雰囲気がどうにも違和がある。

そんな生半可な、って言ったらあれかもしれないけど、プロレスラーとか格闘家とか、そんなじの雰囲気ではないように思える。

「私のことがわからないか?」

「……申し訳ありませんが、どこかでお會いしたでしょうか?」

「ああ、會ったとも。とはいえ、前回の姿ではわからないのも無理はない」

會ったことがあるようだが、これだけのやつならあったことを忘れないような気がする。

しかも外國人となれば、俺の友の範囲だと知り合いなんていない。

んー、以前俺がこっちに旅行に來たときに會った誰かか?

でもやっぱり覚えがないんだよな。こっちでこんな名前を呼ばれるような知り合いを作った記憶もないし……。

目の前の人が誰だったのか思い出すことができずに悩んできると、男は背後にいた似たような格をしているが、男よりも若い青年から何かをけ取り、それを頭に被った——って、まじかよ……。

「これならばわかるか?」

「…………あ」

男が頭に被ったのは、西洋風全鎧の兜だった。

その姿を見た瞬間、俺の頭の中には過去の記憶が浮かび上がり、背中に冷や汗が流れるのをじた。

もしかしてこの方、俺がこの國から出てくる時にコケにしたお方? ……まずくね?

「思い出したようだな」

「あ……あー、いえ、その……日本語、お上手ですね」

「そうか? そう言ってもらえると嬉しいものだな。何せお前と會って々と話したいことがあったからな。あの時は話すことどころか、聞くことすらままならなかったが、あれから必死になって學んだのだ。ああ、本當に々と話したいことがある」

々と思い出した。

ジークが俺のことを待ってる奴がいるって言ってたが、それってこいつのことか?

こいつは……そういや名前すら知らないな。

まあそれはいいとして、こいつはこの國の『騎士』だ。

騎士、なんて冗談みたいな呼び方だが、間違いでも冗談でもない。

どうやら日本にも師だとか対魔師だとかがいたのと同じように、他の國にも隠れた『力』の持ち主ってのはそれなりにいたらしい。

そしてこの國にも『騎士』と呼ばれる奴らがいて、そいつらはゲートが現れてからすぐにその対応に乗り出した。

こいつもその一人。というか、その騎士達のまとめ役をやっているっぽい。はず。

かっこよくいえば騎士団長か?

かっこいい呼び方だが、まさか現実で聞くことになるとは思わなかった名前だよな。ファンタジー世界に生まれ変わってろ。……まあ、今じゃこの現実だって相當ファンタジーしてるけどな。

前回會った時はこいつは全鎧を著ており、兜もつけていてので顔はわからなかった。

だが、し話しかけられたじでは日本語はできなかったはずだ。

だってのに今は違和じないくらい流暢に話している。相當勉強したのだろうと思うが、それほどまでに俺と話したかったのかよ。嬉しくない。

「だからついてきてくれないか?」

どう答えたものか悩んでいると、男は鋭い眼を放ちならが俺を睨みつけてきた。

ついてきてくれないか、だって? ふざけんな。行きたくねえよ。

「……ど、どちら様でしょうか?」

「とぼけるな。気付いていないとは言わせない。それとも……」

男がそこで言葉を止めると、その瞬間——

「っ!」

「もう一度あの時の再現をすれば思い出すか?」

尋常ではないほどに危険をじる威圧が俺を襲った。

その殺気とも呼べるほどの鋭く突き刺すような気迫に、思わず腰に仕込んでおいた短剣に手をばして構えようとした。

だが、男からの威圧はごく一瞬だけで収まったので、俺は短剣を抜くことなく止まることができた。

空港で武を構えたりすれば、いくら所持が認められているとは言っても問題になるので、思いとどまることができてよかった。

だが、それはそれとして、目の前のこいつにどう対応するべきか……。

「さあどうだ? 答えろ、『生還者』伊上浩介」

「……その名前まで知ってんのかよ、くそっ」

この男が前回の遭遇で俺の名前を知ったとしても、俺の通稱の方は知らないはずだ。

だというのに口にしたってことは、それなりに俺のことを調べたってことだろう。

勘違いや誤魔化しなんかで逃げられるはずがなかった。

が、その時こちらを心配した様子の宮野達がふと目についた。

宮野達もさっきの威圧じたからか武に手をばしたが、俺が抑えているのを見てかまだ武は抜いていない。

しかし、そんな宮野達の姿を見てどうにかできるかも、と思いついた。

「いや、あの。今學校の教師やってるんですけど、その集団行中なんで……」

そう。今の俺は個人でここにきているわけではなく、學校での集団行中だ。

一人だけ勝手に行するわけにはいかないし、それを理由にすればこの場から逃げることは——

「ああ、気にするな。話は通してある」

——できなかったよ。

視線を巡らせてこの旅行の責任者を探したのだが、その教師を見つけてもこっちを見ているだけでこうとはしない。

どうやら本當に話を通してあったようだ。

はあ。ため息しか出ねえや。

……しかしまあ、話は通してある、か。

なんか様子もすぐにリベンジとか憂さ晴らしとか復讐ってじじゃないし、話を聞くくらいはしても良いんじゃないだろうか?

嫌なことには変わりないし、できることならこのまま逃げ出したいが、それだといつまで立っても追いかけてきそうなじするんだよな。

だったら一旦話を聞いて落ち著かせて、もう関わらないようにしたほうがいいだろう。

「……あー、宮野。この後の予定はどうなってるんだ?」

俺が突然構えを解いて無防備に振り返ったことで宮野は困した様子を見せるが、すぐに旅行のしおりを取り出して行を確認していった。

「え? えっと、ちょっとまってください……この後はみんなで観した後はホテルに泊まって、翌日からは自由行ですね。ちなみにホテルはここです」

宮野がしおりを見せてきたので、それを覗き込むと指で示して説明をしてくれた。

「そうか、なるほどな」

一日教師達と一緒に行するんなら、教導がいなくても問題ねえわな。

仕方ない。こいつらについていくか。

「それじゃあ、後でホテルで會おう」

「伊上さんはこっちに來ないんですか?」

「こいつらを放ってか? それとも引き連れてか?」

俺は男達を指で示したが、その指の先には俺と話していた男以外にも男に兜を渡した青年を含めて何人かが集まっていた。

そいつらを引き連れて旅行するとなると、まずまともに旅行できる気がしない。

「……無理ですね」

宮野の顔が若干引き攣ってるのは、自分たちが屈強な男どもを引き連れて街を練り歩く姿でも想像したからだろう。

「だろ?」

「話は終わったか? ならついて來い」

俺たちの話がひと段落ついたとみたからか、男が急かしてきた。

まあどうせ行くことには変わりないんだ。無駄に時間を引きばすこともないし、さっさと言ってさっさと終わらせるか。

「お前ら、悪いがそういうわけだ。今日は一緒にいてやれないが、喧嘩しないで仲良く楽しむんだぞ」

あまり心配させないようにし戯けたように肩をすくめて言ったのだが、それでも宮野達は心配そうな顔を向けている。

「大丈夫なの?」

「平気だ平気。萬が一襲われても、逃げ出すくらいならなんとかなる」

淺田の言葉に軽く返すと、俺は振り返って男へと視線を送り、俺の視線をけた男はを翻して歩き出したのでその後を追っていくことにした。

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