《[書籍化]最低ランクの冒険者、勇者を育てる 〜俺って數合わせのおっさんじゃなかったか?〜【舊題】おい勇者、さっさと俺を解雇しろ!》超常対策局

「それで、あのー、どこまで行くのでしょう?」

男の後についていったのだが、なぜか俺の後ろは男についてきていた他の奴らに固められた。

多分俺が逃げないようになんだろうが、いつ背中から襲われやしないかと警戒しながらだったので、疲れてきた。

「……話し方を変えなくてもいい。以前あった時は、そんな気持ちの悪い話し方はしていなかっただろう?」

なので後どれくらいで著くのか聞きたかったのだが、返ってきたのは答えになっていない答えだった。

「……言葉がわかんねえんじゃなかったのかよ」

「わからなかったさ。わからなかったが、雰囲気というものはわかる」

確かに前回はこいつらから逃げる時に悪態をつきまくった気がするし、どうせ言葉がわからないんだから、わかりやすく馬鹿にしていることがわかるようにと、雰囲気もそれっぽいじにした気もする。

「それで、なんのようなんだ? どこまで行く?」

こいつの後をついてきてもう十分は歩いたと思うんだが、まだ歩かせるつもりか?

そもそも、こいつらはどこに行こうとしてるんだ?どこかで話をするだけなら部屋を借りておしまいでいいはずだ。他國の學校に話をつけられるくらいの奴らなんだから、自國の空港に一室部屋を借りるくらいならなんてことはないだろうに。

考えられる可能としては、誰かが待っているか、もしくは一眼につかないところで前回の報復だな。

前者ならいいんだが、後者になるとこの人數相手だと結構きついかもしれない。

「地獄まで——と言ったら、どうする?」

「あの時の報復か? あれは仕方なかったろ。あんたらが寄ってたかって囲んできたのが悪いんだ。人の話も聞こうとせずに……。だから俺は悪くない」

「確かにあの時は我々も逸っていたのは認めよう。だが、お前が悪くないというのはどうだろうな? やりすぎだったのではないか? それに、もっと別の方法があったと思うが?」

「俺としてはあの時思いついた中であれが最善だったんだよ」

前回俺がこの國に來た時に何があったのかってーと、ゲートからモンスターが出てきたんだ。

その時になんかちょうど居合わせてしまった俺は、仕方なしに出てきたモンスター——ドラゴンの相手をすることにした。

だが、しばらく戦っていたら援軍が來たらしく、こいつらが現れ、その時戦っていた冒険者達は撤退した。

のだが、しばらく離れた場所から様子を見ていてもなんだか押され気味に見えた。

手を出そうかどうか迷っていると、當時はまだ『竜殺し』なんて呼ばれていなかったジークがやってきて參戦した。

しかし、経験の淺い當時のジークでは、モンスターの中でも強い種族と言われていたドラゴンには勝てず、負けそうになっていた。

このままでは負けてしまう。放っておけないと判斷した俺は、ドラゴンの口の中に近くのコンビニの殘骸の中から発掘した香辛料を投げ込んで咽させたり、眼球に塩をぶつけたり、鼻のに粘著剤投げ込んだりして援護した。

他にも鱗の隙間に圧した水を流し込んでから膨張させて鱗を剝がしたりとか、傷口に砂を流し込んで削ったりとか々してた。

そうして大打撃にはならないが隙を作ってたらジークがドラゴンの首を落として終わりになり、ジークは『竜殺しの勇者』として名を挙げるようになった。

「ふむ。つまり普段からあのような卑劣なことばかりを考えていると」

「生き殘るためには々と考えないといけないもんでね。卑怯卑劣を理由に生き殘ることを諦めんのは命への冒涜だと思うが?」

が、話はそれで終わらない。それだけだったら俺がこんなに嫌がる理由だってないんだからな。

ドラゴンを倒し終わった後、俺はなんでか知らないが高圧的な態度の全鎧の集団に囲まれた。

最初はその時のドラゴン退治について話があるもんだと思ってたんだが、なんだか様子が々しいじがした。

ので、俺はその場から逃げ出そうとしたのだが、まあそう簡単に逃してくれるはずもなく、止められたところを……まあ、々やって逃げ出したのだ。

「だとしても、多なりとも配慮などがあってもいいものだと思うが、どう思う?」

「配慮なんて、無事に生き殘って落ち著いた後にすればいい」

「だがそれだと、生きるためには周囲を顧みず、悪事にも手を染めると言っているように聞こえるが?」

「流石に法を犯すようなことはしないさ」

その際に多……いや、そこそこ卑怯な手段を取ったかもしれないが、いきなり攻撃的な雰囲気を出して囲んでくるほうがいけないと思う。

「だが、正義は勝つというが、それはつまり、勝った方が正義で、前回の俺とお前達の諍いに関して言えば、俺が勝者だ」

まあ、そんなこともあったが、俺としてはなんで俺を止めようとしたのかすら知らなかったし、すっかり忘れていたことだった。

それを何年も経ったってのに、今になってあたってくんなよ。

俺にやり込められたこいつらからしてみればふざけんなと言いたいかもしれないが、それが俺の正直な気持ちだ。

「今更ネチネチとみみっちいこと言ってんじゃねえよ」

そんなわけでちょっとイラついてしまい、俺は名前すら知らない男へとはっきり言ってやった。

——のだが、言ってからそういえば今囲まれてるんだったと思い出した。

日本語がわかっているか、わかっていなくても雰囲気で理解できたんだろう。周りからの怒気がすごい。

「やはりそちらの方がお前らしい」

しかし、男は仲間達の反応など気にしていないようでくつくつと笑っている。

その男の様子に、先程のチクチクと刺すような會話はわざとなんだと気づき、なんとなく顔をしかめてしまった。

「で、こんな奧の方まで來て、なんのようだ? 話があるなら、その辺の部屋でいいじゃねえか」

だがそんな男の態度も、その態度にじた不快も無視して、改めて問いかけてみることにした。

こっちだっていい加減歩き疲れたし、お前らとの関係を終わらせたいんだってんだ。

「それとも何か? この先にはお前の上司だとか『上』のお偉いさんがいて、人には聞かせられないような話でもすんのか?」

「よくわかったな。その通りだ」

「……ちっ。まじかよ」

できればそうであってほしくないなと思いながら聞いてみたんだが、まさか本當にその通りだとはな。

こいつらと戦うことになるのも嫌だったけど、お偉いさんに呼ばれるのも嫌だ。だって絶対なんか巻き込まれるし。

「目的は教えてやったのだ。大人しくついてこい」

今から逃げられないかと思いながらチラリと背後を見てみたんだが、後ろは男の仲間達に固められ、他の道に逃げようとしてもそもそも他の道が存在していない一本道だ。

仕方がない。ついていくしかないか。

元々ついていくしかないんだ。逃げたところで學校行事で行する以上、どうしたって見つかるからな。

だが、逃げることができる狀況とそうでない狀況とでは心構えが変わってくる。

俺はため息を吐きながらも、男の後をついていくしかなかった。

「ここだ」

それからさらに數分ほど、部屋も窓もないただひたすらにまっすぐな通路を進んでいると、いくつかの部屋が再び姿を表した。

そして俺たちは、男の後に続いてその中の一つの部屋へとっていった。

「この方はロンドンにおいて、覚醒者や異形、モンスターなどによる被害の解決にあたる超常対策局の局長だ」

部屋にると、中には年嵩のが一人が部屋の真ん中に置かれているソファに座っており、その周りに二人ほどスーツを著たが立っていた。

男の言っているなんとか局の局長ってのは、この座っているのことだろう。

その年嵩のは、俺たちが部屋の中にるのを認めると、こちらを向いて笑いかけてきた。

「初めましてシャロン・ベルです。紹介いただいたように、この街において超常による騒ぎの取り締まりを擔當しています。そして、そちらのカーターの上司でもあります。あなたの話はよく聞いていますよ。この度は會えて栄です」

カーターってのは誰のことだ、と一瞬思ったが、狀況から判斷してここまで先頭を進んできた男のことだろうな。

しかし、話を聞いている、か……。絶対ろくでもない話だな。

「あー、初めまして。俺……私は伊上浩介と申します。その、それほど聞くようなことはなにもないと思いますが、こちらこそお會いできて栄に思います」

なんか偉い人だって割に、腰が低そうな人だな。

まあ、こういう輩は大抵が演技なわけだが。じゃないとこのご時世、それなりに力がありそうな部署の長なんてやってられないだろ。

「ふふ、そんな謙遜はいりませんよ。調べた限りでは、もっと違う話し方をするのでしょう? 気楽にしてくださって構いません。どうぞおかけください」

「あ、どうも」

俺は——確かシャロン、だったか? の対面に座ると、俺が座ったのを見計らって目の前に飲みが出された。

毒はっていないと思うが……まあ飲んでみるか。多の毒ならどうにかなるし、もし毒がってたならそれはそれで向こうがどういう対応をするつもりなのかわかるからな。

と思ったのだが、毒はなかった。なくとも、すぐに効果が出るようなものではないみたいで、純粋に味しいコーヒーだった。

俺が出されたコーヒーを飲んで確かめている間も、シャルロットは優しげにニコニコと笑っていた。

その優しげな態度は演技なんだろうなと思うが、それでもここまで一緒にいたのが背中から睨みつけてくる野郎どもと、初っ端から威圧してきたおっさんなので、どうしても親しみというか、安心のようなものをじてしまう。

「突然お呼び出ししてしまって、申し訳ありません。驚かれたことでしょう?」

「いや……ええ、まあ。それなりに」

「その件については謝罪いたします。ですが、多強引であったとしても、あなたをお呼びしたい理由があったのです。以前の騎士団との諍いにつきましては、ジークさんの口添えもありましたし、カーターのミスということで処理されていますので、あなたを罰することもありません。お話を聞いていただけませんか?」

こいつ、処分けてたのか。……笑えるな。あ、口には出してないんだからこっち見んな。

しかしまあ、なんだな。俺としては話を聞くこと自は構わないと思ってる。

でなければ何かあるだろうと思いながらもこんなところまでついてきたりしないし。

というかだな、俺にとっちゃああの時の出來事はもう忘れてたことだ。なんでああなったのかも知らないし、特に蟠りはない。

「諍いって言われても……そもそもなんであの時絡まれたのかすら知らないので、特に気にしていません。ですので、私なんかでよければお話を聞くくらいでしたら構いません」

俺が知らないと言った瞬間にカーターがぴくりと反応して顔を歪めたが、多分自分たちは覚えていたのにお前は忘れたのか、的なあれだろう。

だが、忘れていたものはしょうがないし、知らないものは知らない。

「あら、そうなのですか? カーターは隨分とあの時のことを話していたのですけど……」

シャロンが驚いた様子でカーターへと顔を向けたが、カーターは不機嫌そうに俺を見ているだけだ。

視線を俺に戻すと、シャロンはあの時に何があったのか、なんであんな攻撃的な雰囲気で囲まれることになったのかを話し始めた。

「あの時あなたを捕らえようとしたのは、ゲートが突然開き間を置かずにモンスターが出てきたせいです」

初っ端から驚きなんだが、あの時は絡んできたんじゃなくて捕まえようとしてたのかよ。

まあ雰囲気的にそうかもしれないなとは思ってたけどさ。

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