《[書籍化]最低ランクの冒険者、勇者を育てる 〜俺って數合わせのおっさんじゃなかったか?〜【舊題】おい勇者、さっさと俺を解雇しろ!》キメラ
「でも、その程度ならよくあることではないですか?」
ゲートの突発的な発生なんて、言ってしまえばよくあることだ。
これが最初のゲート発生から時間が経ってない時だったらわかるが、今ではもう珍しくもない。
だからあの時だってそう騒ぐほどのことでもないと思うんだがな。
「はい。この國だけではなく様々な國でも突発のゲートとモンスターの出現は起こります。ですが、ゲートの出現が年々増えているのはご存知でしょう? 元々ゲートがどうして発生するのかわかっていなかったので、そういうものだと言われてしまえばそこまでなのですが、その時にはゲートを意図的に増やしている集団がいるという報……というよりも噂の類ですね。そう言ったものが我々の耳にっていたのです」
「意図的にゲートを? ……本當にそれができるんだったら警戒するのもわかりますが……どうして私が?」
多分、その集団ってのは『救世者軍(セイヴァーズ)』だろうな。それ以外にそんなことをするような目立った組織はないし。なくとも、俺は知らない。
しかし問題は、なんで俺がそんな奴らと間違えられたのかって話だ。
「突然の狀況に怯えた様子がなく、まともに武を持って戦うでもない輩が戦場を彷徨いているのであれば、話を聞きたいと思うのは普通であろう?」
「戦うでもないって……俺、あの時戦ってたんだが?」
「かもしれん。だが、一見しただけではあの時のお前は我々騎士団のきを観察し、に隠れながらちょろちょろとき回り、時折何かをしているだけにしか見えん」
反論は、できねえなぁ。実際を移しながら適當にを投げた時々魔法を使ってたりしてただけだし。
それに、仮にゲートを意図的に発生させることができるとして、そのことに必要なものも條件もわかっていなかったんだ。
ならその近くで不審なきをするやつを怪しんでもおかしくはないか。
「けていただけたのでしたら我々の施設を無償で使用してくださって構いませんし、必要とあらば武裝の貸し出しも行ないます。その際の案はカーターになりますが」
まだけるかどうかどころか話すら聞いていない狀態だが、こいつらの施設を使えるってことは一般では使えないような國の施設を使えるってことで、普通ではできないような道の加工やなんかができるようになるってことだ。
しかもだ。無償で、となったらそこにある材料とかも好き勝手できるわけだし、一般には許可されないような裝備も使えるようになるってことで、條件としては結構……いや大分優遇されている。
だが、俺はそう言われてカーターへと視線を向けると、奴はニヤリと笑ってこっちを見ていた。
「よろしく頼む」
「チェンジで」
ふざけんな! こんな奴と一緒にいられるか!
「そう言ってくれるな。言っただろう? 話したいことがあるのだ、と」
言われたが、それを聞くとは言ってねえよ!
なんだこれ。なんかの罰ゲームか? こんなやつと一緒に行しろとか、そうじゃなきゃありえんだろ。
いくら條件が良くっても、けたいとは思えない。
それに、裝備を貸すって言われたが、所詮は貸し出しだ。自分のものにできないんだったら今回限りってことになるわけだし、意味はない。
まあ、自作した裝備の方はそのまま持ち帰れるだろうが、言ってしまえばそれはその程度のことだ。
それだってそのうち冒険者を辭めるつもりでいる俺には必要のないものになる。
々が辭めた後にもを守るための保険程度なもんにしかならない。
そもそもの話、こいつはなんのつもりで、俺と話なんてしたいんだ?
いや、としてはわかるが、一応俺はこいつらの組織的には許されたはずだろ?
「なあ、今俺に処罰はないってシャロンさんが言ってなかったか?」
「そうだな。だが、処罰はないだけで、私個人としてのは別だ」
「ずるいだろ。んなもん屁理屈だ。『上』から許されたんだからキッパリと割り切れよ。なんでそんな卑怯なこと言ってんだ、騎士様よぉ?」
「一度『ずるい』戦いをする者に負けてしまったのでな。多は學んだのだよ」
騎士を名乗るやつがそんなんでいいのかよ。お前らは俺と違って才能あるんだから正々堂々と戦っとけや。
「ふふっ」
俺とカーターの話を聞いていたシャロンが楽しげに笑い聲をらし、それに反応して彼の方へと視線を向けたのだが……なんだ?
なんだかどこか寂しげというか悲しげというか、その笑顔に違和が混じっているようにじた。
「今回あなたに協力を願ったのは、先程の話も多関係してくるのですが、『救世者軍』への対処です」
そうだった。もうすでにこの場所から逃げたくなったが、そもそもまだ話を聞いてすらいないんだった。
「調べた限りでは、あの者らはどうやらこの街でよからぬことを企んでいるようなのです」
「またゲートの発生を?」
今の話と関係してるって言ったらそうなんじゃないかって思ったんだが、どうやら違ったようでシャロンは首を振った。
「いえ、それとは別件ですね」
「けど、この國にだってちゃんとした組織があるのではないですか? 私みたいなのをわざわざ呼ばなくたって、対処はできると思うのですが?」
「ええ。組織はあります。私がその組織の長ですし」
そういやそうだった。最初にそんなことを言ってたな。
だが、ならどうして俺なんかを、という疑問に戻る。
確かに俺はこいつらの記憶に殘るような行をとったかもしれないが、戦闘力で言ったら比べにならないほどに低い雑魚だ。自分で言ってて悲しくなるけどな。
だが、そんな雑魚だからこそなんで呼んだのか本當にわからない。
「ですが、こちらをどうぞ」
そんなふうに考えていると、シャロンからいくつかの寫真が差し出され、俺はテーブルの上に置かれたそれらを手に取ってみる。
寫真に寫っているのは獣のような耳の生えた人間だった。
だが、次の寫真を見ると全がに覆われている二足歩行の獣のような人形だった。
それを見て、俺はお話なんかに出てくるファンタジーの定番と言ってもいいような獣人じゃないかと思ったんだが、すぐにその考えを変えた。
「獣人? ……いや、これは……」
三枚目の寫真には、目が昆蟲のようなものに変わっているものが寫っており、その次には顔の一部が爛れたような、だがその狀態が自然であるかのように思える者が寫っていた。
そしてどんどん寫真をめくっていくが、そのどれにもなにかしらの異形がある者が寫っており、最後の寫真には、どう考えても獣人なんて言葉で済まないような者が映っていた。
人型に獣の耳はいいとしよう。だが、背中から蝙蝠のような翼が生え、足はほど太くなっているとなればどう考えてもおかしい。まるで複數のを混ぜたような、そんな姿だ。
自然に、ってかダンジョンには複數の種類の生が混ざったモンスターってのはたまにいる。山羊のにライオンの頭を持つやつとかな。
そいつは『キマイラ』っていうんだが、そいつらはこんな人間らしい人型じゃないし、人型をしていても、もっとモンスターらしさってもんがある。
故に、普通ならありえない存在。
だがそれに説明をつけられる存在はいる。それは——
「——キメラ」
キメラってのは、別の種族を合して人工的に作られた生きだ。
キマイラが先天的な種族だとしたら、キメラは人の手がった後天的な狀態だ。
新種のモンスターって可能もないわけではないが、そうなると最初の一枚目の寫真はあまりにも人間に近すぎている。
こんなのがいるってことは、誰かが人間のをいじくり回してキメラを作ったってことだ。
誰か、なんてのは先程までの會話を聞いてりゃあ言うまでもなくわかりきってるがな。
救世者軍。
奴らが関わっているとなれば、この寫真の子供達は自然発生のモンスターってより、人工的なモンスター化って方が可能は高い。
「その通りです。……ですが、本當にわかるものなのですね」
シャロンから発せられた心したようなその言葉だが、それはどういう意味だろうか?
「は? それはどういう……」
「実は、私たちが最初にこのような者を発見した際、その正がわかりませんでした。新種のモンスターかダンジョン由來の呪い、もしくは病気だと考えていました」
まあ、その可能もないわけではないな、と言われてから思い至った。
最初に寫真を見たときはついに獣人が現れたのか、と一瞬だけ思ったが、すぐに違うと分かったし、キメラって発想にも至った。
が、言われてみれば病気だとか呪いだとか、後はそうだな……モンスターの寄生だって可能もないわけじゃない。
「それが人工的なキメラだというのは親日の局員が真っ先に気づきましたが、その際、あなたと同じようなことを言っていました」
「同じようなこと、というのは?」
「獣人、と。ですがすぐにそれが人工的なものであるキメラだと気づきました。なぜ気づけたのか尋ねたのですが、「俺なんてまだまだだ。この程度日本人なら誰でもわかる」と。日本とは凄い場所なのですねと心したほどです」
局員ェ……。お前、それ絶対に二次元系のオタクだろ……。
お前の常識を日本人全部に當てはめんな。
「……それを日本の常識と思わないでください」
「そうなのですか? ですがあなたはすぐにわかったようですが……」
「それは俺が……あー、俺やその局員が特殊なだけで、全員が全員わかるってわけじゃない、です」
多分そう言った俺の表は歪んでいただろう。だって……なあ?
……とりあえず、話を進めよう。
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