《[書籍化]最低ランクの冒険者、勇者を育てる 〜俺って數合わせのおっさんじゃなかったか?〜【舊題】おい勇者、さっさと俺を解雇しろ!》瑞樹:ドラゴン戦・開始
──宮野 瑞樹──
浩介達がドラゴンと対峙している頃、瑞樹達も突如として発生したゲートから現れたドラゴンを相手戦っていた。
「くっ! やっぱり、ドラゴンは、強いわねっ!」
初撃——まだドラゴン達が瑞樹達のことを敵とは見ておらず、ゲートをくぐり抜けてきて油斷していたときに攻撃をして一倒しただけで、それ以降はもうすぐ三十分経つだろう時間戦っているにもかかわらず傷をつけることはできても倒すことはできていなかった。
今もそう。ドラゴンの鱗はく。瑞樹の剣戟を持ってしても鱗の下のまで刃を屆かせることはできなかった。
「でもっ!」
それでも諦めるわけにはいかないと瑞樹は立ち上がり、剣を構える。
しかし、柚子の魔法によってある程度は守られているものの、いつまでも戦い続けられるわけではない。
柚子の魔力が切れれば防用の結界は効果を失うし、自分にかかっている強化の魔法だって消える。
そうなればどうなるかなんて、簡単に分かった。
自分1人では四のドラゴンを相手にすることなんてできるはずもない。
ただ戦っているだけでも力を使い、ジリ貧になっていく。
ならば、余力が殘っているうちにできるかぎり倒す必要がある。
だから、多の無茶があったとしても突っ込んでいこう。
と、瑞樹がそう考えたその時。
ドラゴンの足元から何かとんでもない重量が衝突したような音と衝撃が発生し、それと同時にドラゴンがび聲を上げながら橫倒しに倒れた。
「瑞樹っ!」
いつの間にかドラゴンの足元まで近寄っていた佳奈がドラゴンの足を叩き、弾き飛ばしたようだ。
そして、今のうちにやれ、とでも言うかのように佳奈が瑞樹の名前を呼ぶと、瑞樹は返事することなく、だが即座にいて反応を示した。
「ハアアアアアアッ!」
倒れたドラゴンに向かって全力で走り出した瑞樹。
その剣には雷が宿っており、雷は進むごとにその力と輝きを増していった。
そして——
「二目!」
橫倒しになったことであらわになった腹部。その心臓があるであろう場所に目掛けて剣が振り下ろされ、ようやく二目のドラゴンがきを止めた。
「ねえ佳奈。あなた、なんだかすごく強くなってないかしら?」
瑞樹はドラゴンを倒すなり即座に後退して距離をとったのだが、そばにやってきた佳奈に対し、自分でも知らず知らずのうちにそう問いかけていた。
ドラゴンのような強力な存在を吹き飛ばすなんて、以前の佳奈にはできなかったことだ。
だと言うのに今はドラゴンの勢を崩させるほどの一撃を放った。
さらによく見ると、瑞樹でさえも傷つけることが一杯だったドラゴンの鱗が、佳奈が叩いた場所だけ放狀にひび割れているのが見て取れる。
相、と言うのもあるのだろう。
だが、それでも自分にはできなかったことをやられたのを見て、瑞樹が反応しないわけがなかった。
「あったりまえじゃん! あたしだって、遊んでるわけじゃないんだから」
瑞樹の問いかけに佳奈は瑞樹をチラリと一瞬だけ見て、だがすぐに目の前に立ちはだかるドラゴン達に視線を戻しながらそういった。
そんな佳奈の様子に瑞樹は何を思ったのか、小さく口を開いた。
「下がって!」
だが、瑞樹が何かを言う前に後方にいた晴華から発せられた言葉を聞いて、2人は同時に背後へと飛び跳ねた。
一だけではなく、まさか二目までやられるとは思っていなかったのか、ドラゴン達には一目がやられた時よりも強い揺が見てとれた。
晴華の攻撃はそんな揺によってできた隙を突くものだった。
ドラゴンの真下から炎の柱が螺旋の如く吹き上がり、天を衝く。
炎の中から絶が聞こえるが、それも炎が消える頃には収まり、天を衝いた炎があった場所には所々黒く焦げていたドラゴンのがあった。
流石に魔法と炎への耐を持っているドラゴンを一度の魔法だけで倒すことはできなかったのか、ドラゴンはまだ生きているようで微かにいている。
だが、それもあとわずかな時間だけだろう。なくとも、この後も戦闘できるかと言ったら、それは不可能だというのが誰だって判斷できるほどだ。
「これで三、か。ものすっごい疲れてるけど……いけるっ。あたしだってやれてる! まだやれるんだからっ!」
ドラゴンをひっくり返すほどの一撃を放った佳奈も、ドラゴンを焼くほどの威力の魔法を放った晴華も、それなり以上に消耗している。
だが、最初は五いたドラゴンも、もう殘りは二となっており、佳奈達の心にも余裕ができてきていた。
だからだろう。
「瑞樹。あたし言ったよね。あんたの隣に立ってやる、追い越してやるって」
佳奈は殘っているドラゴンへと注意をしながらも瑞樹へと顔を向け、真剣な眼差しで話しかけた。
「ちょうどいい機會だし、あんたの『先』に行ってあげる」
佳奈はそう言うと、両手で持っていた武を左手一本で持ち、腰につけていた再度ポーチから親指程度の小さな石を取り出した。
それは奧の手だ。佳奈が瑞樹を超えるため浩介に頼んで修行をつけてもらったその集大。
まだ完全に使いこなせているとは言えないが、それでもここで使わずにどうする、と覚悟を決めて取り出した。
それがなんなのか、瑞樹にはわからない。
だが、言葉通り自分よりも『先』に行くためのものだろうと言うのは理解できた。
「そんなの——」
自分が仲間であるはずの佳奈達を『下』に見ていたことを浩介に告げられて自覚していた瑞樹。
そのことを思い出して、言葉に詰まってしまった。
だが、その『下』に見ていた相手から向けられた挑発的な笑み。
加えて、先ほど見た自分にはできなかったドラゴンへの有効打。
そしてそれらを呼び水にするかのように佳奈に対するいろんな記憶が、思いが頭の中に一瞬にして流れていき、瑞樹は知らず知らずのうちに拳を握りしめてしまっていた。
負けられない。負けるわけにはいかない。
……いや、そうじゃない。負けられないとか、負けるわけにはいかないとかそんなのじゃなくて、自分自が、『負けたくない』。
——だって私は、友達で、仲間で……ライバルだから!
瑞樹は自分の中ではっきりとその想いを理解すると、ニッと口元に笑みを浮かべてから一歩前に出て佳奈の隣に並び、そこからさらに一歩前に出た。
「まだまだ追い付かせないに決まってるでしょ」
挑発的な自分の言葉に返すように行なわれた瑞樹の行に、佳奈もまたニッと笑うと新技を使うために魔石を握っている手に力を篭め——
「何っ!?」
「あれはっ!?」
——ようとしたところで異変に気がついた。
晴華の攻撃によって焼かれ、倒れ伏しながらもまだ生きていたドラゴン。
ドラゴンとしての——最強の種族としてのプライドが傷つけられた。
こんなこと認めてなるものか。このままただやられるだけなど、認められるかっ!
そのドラゴンがはっきりとそう考えたのかはわからない。
だが、そのとしては間違っていないだろう。
故にそのドラゴンは、命を懸け、自分をこんな目に合わせた奴らを殺すため、自分の存在全てを一つの魔法へと注ぎ込んだ。
つまるところ——自。
死にかけとはいえ、特級の存在がなりふり構わず命をかけて放った攻撃は、それまでのものとは比べにならないほどの衝撃を周囲に撒き散らした。
「っ——!」
ドラゴンの命をかけた攻撃によって、柚子が瑞樹と佳奈にかけていた防の結界は砕かれ、2人はその発の衝撃によって悲鳴すら出すことなく吹き飛ばされていった。
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