《[書籍化]最低ランクの冒険者、勇者を育てる 〜俺って數合わせのおっさんじゃなかったか?〜【舊題】おい勇者、さっさと俺を解雇しろ!》全部終わって
──◆◇◆◇──
「うわっ、ずいぶんひどい格好してるね。大丈夫?」
最低限の処置をしてからしばらく壁に寄りかかって待っていると、ジークが戻ってきた。
その聲は心配そうなを宿しているが、焦りなどはないようなので多分敵は倒すことができたんだろう。
「ああ……まあなんとか生きてるさ。一応こっちの狀況を伝えて助けも呼んだし、そのうちくるだろ」
今の俺は左の手足が取れている狀態だ。後で魔法を使って治癒すればどうにかなるから、と思って強引でもやったんだが、流石にちょっと……いや結構きつかった。
今も鎮痛剤が効いてるはずなのに、自分の手足を見ると痛い気分になってくるし、実際薬が効いているはずなのに痛い。
「……お疲れ様」
「そっちもな。問題なかったか?」
「まあね。戦車程度じゃ意味がなかったよ」
「戦車か……俺が行ったら死んでたな」
こんな地下に戦車なんて用意してどうするつもりだと思ったが、多分外に出ることのできる搬口とかあるんだろう。
後は……ああ。ゲートを好きに開けるんだったらそれをどうにかして使うつもりだったのかもな。
だがまあ、なんにしても、倒すことができたんならそれでいいか。
「そっちはどうだった?」
「……さあな。迷わず逝けたんならいいんだがな」
「そっか。……お疲れ様。それと、ありがとう」
「禮なんて必要ないだろ」
「……そうだね」
それだけ話すと、ジークは目を瞑って黙り込んだ。
「——で、だ。他の狀況はどうなってんだ?」
しばらくするとジークが目を開けてこっちを向いたので、狀況を確認するために問いかける。
「奧で他の部隊と合流したんだけど、ここが一番マズかったみたいだね。他のところはまだ終わってないところもあるけど、なんとかなりそうみたい」
「そうか。ならよかった」
後のことはこいつに任せて、しばらく眠ってもいいだろうか?
……大丈夫だろ。そろそろ限界だし。
起きた時には全部終わってるといいんだがな。
──◆◇◆◇──
「ねえ、なんで楽しい旅行のはずが、あんな怪退治になっちゃったの?」
「しかも伊上さん、なんだかすごく大怪我してません?」
今俺は病院のベッドの上だ。まあ當然だな。あれだけの大怪我をしたんだ。むしろこうして起きて會話してられるだけでも上出來だろう。
だがそれでも俺の前にいる宮野と淺田は、不機嫌そうにしながら俺の足や手を突いたりしている。
「知るかそんなん。俺が知りたいくらいだっての」
だがそれでもまだマシな方だ。
何せ最初に手足が取れた狀態でこいつらに會った時、文句を言われたし、泣かれたんだから。
それに比べれば、多怒っていようがなんだろうが、マシだろ。
「あー、ほら、あれだ。神様の思し召しってやつだ」
「こんな理不盡を起こす神様ならお斷りしたいんだけど?」
それには完全に同意見なんだが、それは神様本人に言ってくれ。俺にはどうしようもない。
「でも、ほら。またこの國に招待してくれるみたいだし、次に楽しめばいいんじゃない、かな?」
宮野と淺田と一緒にいながらも後ろで黙っていた北原がそう言って話を逸らしてくれたが、その話は本當のことだ。
今回せっかくの修學旅行中になんやかんやと起きたせいで、學生達は旅行を楽しむどころではなかった。
なので、まあ俺が関係しているからだろうが、今回ここにやってきた生徒達は全員もう一度この國に旅行に來る機會が與えられた。
それも宿泊先は最高級の場所を用意してくれて、旅行費用自は全部あっち持ちだ。
「でもさー、次っていつよ?」
「うーん。春休みだと早過ぎる気もするし……卒業旅行とかじゃないかしら?」
「だいたい一年後?」
まあそうなるだろうな。今が十一月な訳だから、春休みや夏休み、後は一応冬休みもか。まあその辺に來ることもできるが、冬と春の休みは今回の件から早過ぎるってじがするし、こいつらも來年には三年生なんだから夏休みは々とやることがあると思う。
で、三年だからって理由だと、夏休みだけではなくその後も々あるかもしれないし、そう考えると卒業旅行として、ってのが妥當なところだろうな。
まあ別にいつ來ても構わないんだが、あまり早過ぎると向こうも今回の件後始末で忙しいだろうし、対応も雑になるだろうからお勧めはしないけど。
「なっがぁ。一年後って聞くと結構あるようにじるんだけど……」
「それは仕方ないだろ。普通の學生は年にそう何回も外國旅行なんてしないんだから、來年も旅行出來るだけでも満足しておけや」
中には長期休暇のたびに旅行するようなボンボンもいるんだろうが、普通はそんなことはしない。
俺なんか三十何年生きてきた中で外國に來たのはこれで二度目だぞ。
「じゃあさ、その時はあんたもまた一緒に來てくれんの?」
……えー? もう外國とか來たくねえよ。
いや、外國はいいけど、この國は嫌だ。だって絶対目ェつけられたし、またなんかあるかもしんねえし。
だが、俺が嫌そうな顔をしていたのか、宮野が逃げてを阻むように笑いながら口を開いた。
「來てくれるに決まってるじゃない。だって、伊上さんもわれてるんだし、それに、自分から言ったんだもの。ですよね?」
どうやら俺が來ないというのは許してくれないらしい。
どうせ反論したところで無駄なので仕方ないと諦め、ため息を吐來ながら緩く首を振ってから答えた。
「……その時の狀況次第でな」
「約束だかんね!」
「また一緒に來ましょうね」
なんだか押しの強めな宮野と淺田と約束し、俺はまたこいつらとこの國に來ることになるらしい。
……はあ。もう何も起きないといいんだけどな。いや、ほんと、まじで。
To Be continued……
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