《[書籍化]最低ランクの冒険者、勇者を育てる 〜俺って數合わせのおっさんじゃなかったか?〜【舊題】おい勇者、さっさと俺を解雇しろ!》佳奈とニーナ

そう言ったのは、まあわかりきったことだが淺田だった。

どうやらそんな挑発をするほどにニーナの態度が気にらなかったようだが、なぜか俺の方も睨んでいる。なぜだ?

もしかして、父親なんだからもうしニーナを教育しておけとかか?

それにニーナもこれでも十分に長してわけだし、そもそも淺田はそんなことを言うようなやつでも、そんなことで腹を立てるやつでもないと思う。

だがそうなると、なんで俺のことまで睨んだのかまじでわかんねえな……。

「あなたでは遊び相手にならないと言ったばかりのはずですが? 私、弱いものいじめは嫌いなのです」

淺田の言葉にニーナは反応を示すと、宮野へと向けていた視線をかし、今度は一瞥ではなくしっかりと淺田のことを見た。

「弱いかどうか、自分の目とで確かめてみたら?」

尚も挑発を続ける淺田だが、ニーナはスッと目を細めた。

そして淺田のことを威圧しながら睨みつけたのだが、淺田もそんな威圧と視線に怯むことなくニーナのことを見返している。

そして負けしたのか、ニーナは息を吐き出して頭を橫に振ると俺の方を向いた。

「はあ……仕方がありませんね。お父様」

どうやら宮野ではなく淺田と戦う気になったらしい。

「あー、言っても無駄だろうが一応聞くぞ。——まじでやんのか? それに今のお前は武がないだろ?」

今日は戦う予定なんてなかったので、淺田たちは武を持っていない。

冒険者として予備の武は持っているだろうが、所詮は予備だ。本気の裝備で全力を出して戦っても勝てるかどうかわからない、というかほとんど負ける可能の方が高いだろう相手に対して、予備の武で挑むのは無理がある。それは淺田だってわかっているだろう。

だがそれでも淺田は引くことはなかった。

「ったり前じゃん。こんなバカにされたまんまで、いられないもん。それに——」

そこで言葉を止めると、淺田は俺でもニーナでもなく、宮野のことを見た。

……そうか。まあ、そうか。ライバルだと思っている宮野はニーナに認められているのに、宮野のライバルを自稱する自分は認められていないなんてなったら、そりゃあ悔しいし、認めさせたいって思うか。

「武は……なんかない? ここならあたしが使うようなやつもあるでしょ?」

「……まあ、あるだろうな」

ここはゲートやダンジョン関連に関しての研究所だし、覚醒者の裝備の百や二百はあるだろう。

そしてその中には淺田が使う大槌のような普通から外れたような武だってあるはずだ。

だから聞けば用意してもらうことくらいはできるだろうが、用意すれば二人は戦うことになるだろう。

俺が武を用意しなかったとしても、どうあっても戦うことになるような気はするが、気は進まない。

「? 電話——佐伯さん?」

を用意した方がいいんだが、本當に用意していいものか悩んでいると、佐伯さんから電話がかかってきた。

壁の上部についているガラス窓を見上げると、そこでは耳に攜帯を當てた佐伯さんがこっちを見下ろして手を振っていた。

『こっちで用意するし場所も用意するよ。使ってくれ』

それだけ言うと、電話はすぐに切れてしまった。

ここでの會話が聞こえているのはわかっていたが、なんでこうも早く……それこそ俺が尋ねる前に対応したのかってーと、多分だがただの善意ではないだろう。

もしニーナを抑えられるような人材がいるのならそれを確認したい、とでも思っているんだと思う。

この辺りは俺もし前まで似たような考えをしていたので、そう間違っていると言うことはないずだ。

「佐伯さんからですか?」

宮野は今の電話かられた音で俺が誰と何を話していたのか聞こえていただろうし、普段は聴こえていても聞こえないフリをするはずだ。

なのにこの場に限ってはっきりと言葉にしたのは、それをみんなの共通の認識とするためだろう。

「淺田の武と戦う場所を用意するから、使えとさ」

お膳立てされてしまえば仕方がない。どのみち戦うことにはなっていたんだ。しっかりとした武を使う事ができるようになったことで、淺田の勝率が上がったんだと喜ぼう。

そう考えてため息を吐いてから説明すると、淺田は部屋の壁の上部についているガラス窓から見える佐伯さんに向かって一禮した。

「じゃあせめてルールを決めさせろ。せっかくのクリスマスだってんで集まったのに、こんなことで命をかける必要ないだろうし、下手に長引かせるのもアレだからな」

とはいえ、流石に一対一で限界まで戦うってのは容認できない。

なので、ニーナが淺田のことを認められるが、できる限り危険のなく淺田に勝率のある戦い方をさせたい。

「そうですね。せっかく一緒にいられるのですから、時間は無駄にしたくありません」

「こっちも時間を無駄にするつもりはないからすぐに終わらせてあげる」

「あら、そんなに早く負けるつもりですか?」

「すぐに負けるのはあんただって言ってんのがわかんないの?」

……やっぱり、どうあっても二人が戦う流れからは逃れられなかったじだな、これ。

この様子を見ていると、ニーナが淺田のことを認めたところで仲良くなれるか心配になるが、認めさせないことには話にならない。

しかし、どうしたものか。

純粋になんでもありの戦闘では淺田がキツいだろう。何せニーナは魔法使い。空を飛んで魔法を連打されたら淺田にはどうしようもない。

ジャンプして攻撃、ってのはできるだろうけど、ニーナの能力を考えると避けるか防ぐかするだろうし、一撃で仕留め切れなかったら空中では的にしかならない。

なので淺田でも対等に戦える條件にするには、と考えると地に足をつけての真っ向勝負しかない。

他の條件は……あまり事が大きくなりすぎてもアレだし、できる限り短時間で終わらせた方がいいか。

となると、そうだな……

「ルールはお互いに一撃だけ放ち、それで決めろ。ニーナは『これを防がれたら認めてもいい』と思う攻撃を放て。で、淺田はそれを迎撃。終わった後に淺田が立ってられたらこいつの勝ちだ。その時はちゃんと謝れよ、ニーナ」

これならば淺田でも勝ち目があるし、短時間でニーナに認めさせることができるだろう。

何せ今明言したんだから、勝負が終わった後に『あれは本気じゃなかったから認めない』なんてことは言わないはずだからな。

とはいえ、そんなことを條件に組み込まなくてもニーナは元々自分の攻撃をけても死ぬことのない相手なら認めるんだ。それがどんな方法でもどんな相手でも、俺みたいにな。

だから、真正面から自分の攻撃を防がれたのなら、ニーナも自然と淺田のことを認めるだろう。

「はい、わかりました。お父様」

「こっちもオッケー。絶対に負かしてやるんだから」

淺田もニーナも、どうやら今の條件で納得してくれたようだ。

「石は持ってんのか? ないなら用意するが?」

「いらない。どうせ一撃で終わるんだから、一瞬だけ保てばいいでしょ」

そう言いながら淺田はポケットには手を突っ込んで鈍くる小石程度の大きさの石を取り出した。

それは魔石だ。それを使って自にかかっている自己強化の魔法を一時的に強化するんだろう。

あのサイズの魔石だとそれほど魔力が込められているわけでもないから、長時間の強化はできないだろうが、淺田の言ったように一撃返す程度なら保つはずだ。

それでもドラゴンから取れるような最高級の魔石を使った方が効果幅も上がるし時間の心配もする必要はないのだが、淺田にはまだそれほどの量の魔力を扱う技量はない。

なので、そう言った意味でも小石程度で十分だろう。萬が一にも失敗するわけにはいかないしな。

「じゃあ、さっさと移しましょ」

そうして俺たちはいつもニーナが『遊ぶ』場所へと移し、現在は淺田が裝備を整えてニーナと向かい合っていた。

「本當にやるつもりですか? あなたを殺してしまってお父様に嫌われたくはないのですが?」

「ふんっ。そんな心配はする必要ないっての。だって、あたしは死なないし、この勝負はあたしが勝つから」

淺田は止めようとするニーナの言葉を軽くあしらい、佐伯さん達に用意してもらった武を構えている。

「ではやりますが……本當にあなたが死なないことをんでいますよ」

それは前にも聞いた、どこか懇願するような、期待するような聲だった。

ニーナは、本當に淺田に死んでほしくないと願っているんだと思う。

そして多分だが、友達になってしいんじゃないだろうか?

今まではそんなこともなかったんだろうが、俺と関わるようになってニーナの生活は変わり、人と関わるようになった。

そして宮野という対等な相手もできて、その人間との関わりというのはさらに広がった。

だからこそ、今までにはじなかった一人の寂しさと言うものが生まれたんだろうと思う。

そしてだからこそ、その関わり——『友人』を増やしたいんだろう。

それでもただ友人を増やすんではなく戦うことで相手を認めると言うのは、友人の作り方を知らないと言うのもあるんだろうが、せっかくできた友人に死んでほしくないからでもあるんだろう。

……元々淺田が勝てばいいなとは思っていたが、そう考えると余計に勝ってしくなるな。

「それじゃあ合図をするが、準備はいいか?」

もし本當にやばそうだったら負傷覚悟でどうにかしようと決意した俺は、二人が頷いたのを見ると右手を上げる。

それは勝負開始の合図のためなのだが、正直なところ、ニーナが攻撃してそれを淺田が迎撃するって今回のルールなら本當は合図なんていらない。

ニーナは魔法を使うんだから、それなりに相手を認めるような攻撃をするんだったら準備が必要だし、淺田ならそれを見てから自も準備することができるだろうからな。

だがそれでも合図をするのは、その方がなんの合図も無しで「さあ始めろ」って言うよりも二人がやりやすいと思ったからだ。

「——始め!」

合図とともに振り下ろした。

その瞬間、ニーナは世界最強にふさわしい膨大な量の魔力を放出し、魔法を構築していく。

その様子は、直接向かい合っているわけではないはずの俺でさえ冷や汗をかくほどだ。それほどまでにまずいと思えるほどの脅威をじている。

俺でさえこれなんだ。直接対峙している淺田なんかだと、より脅威をじているだろう。

ニーナが前に手をばすとその上に炎が生まれたのだが、そんなやばいじの魔力に反してニーナの前に現れたのは蝋燭の火のような小さな炎だった。——かと思ったら、その炎は一瞬でバスケットボール程度の大きさまで膨れ上がった。

だが、その炎はそれ以上大きくなることはなく、逆に小さくなっていく。

しかし次の瞬間にはまた大きくなっていき、そしてまた小さくなるという、見ていると鼓のようにも見える現象が起きている。

おそらくあれは圧を繰り返しているんだろう。炎を圧してはさらに炎を継ぎ足して圧。そしてまた炎を足して……と、そんなじだと思う。

……あれ、ニーナが限界まで繰り返したら小さな太みたいなじになるんじゃないだろうか?

その後も炎は何度か膨張と圧を繰り返し、鼓のように見えたそのきが止まった。多分、あれで完なんだろう。

淺田もそれがわかったのかすでに魔力の補充薬は飲んでいたのに加えて、今までタイミングを見計らいながら持っていた魔石を砕いてそこに込められていた魔力をり、吸収していく。

そうして通常よりも遙かに強化された強化の魔法。それによって特級と遜のない力を出すことができるはずだ。

だが、それでも力の総量はニーナには劣るだろう。

それは淺田自わかっているのだろう。

だとしても、淺田は引くことなく後ろに引き絞るように武を構え、その目はニーナのことだけを見據えている。

そんな淺田の姿を見たからか、ニーナは手を翻してその狙いを淺田へと向けた。

そして、野球ボール程度の大きさになった炎の球。それが淺田へと放たれた。

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