《【電子書籍化】神託のせいで修道やめて嫁ぐことになりました〜聡明なる王子様は実のところ超溺してくるお方です〜》第四十六話 兄の話し相手に
何だか、サナシスが疲れている。
そうじ取って、私はサナシスの目の前にあるコーヒーのそばへ、砂糖の壺をそっと近づける。
互いに座って相対するテーブルの向こう、サナシスはようやくそれに気付き、顔を綻ばせた。
「ああ、ありがとう。ちょうど甘いものがしかった」
「いえ、お疲れのご様子でしたから、私にできることがあればいいのですけど」
もう夜になって、一日中働いているサナシスは疲れもするだろう。水晶細工のランプの中の蝋燭が揺れる。シャンデリアのある部屋とは違い、時間さえもゆったりと流れるような私の書斎のテラス——書斎とは名ばかりで、基本的に応接室として使っている——は、サナシスを休ませることができているだろうか。
空が近い王城、星空の中に晝間よりは暗く燈る神域アルケ・ト・アペイロンがある。二人で眺めながらの夜のお茶會がすっかり慣れてきた。ただ、サナシスは今まで、疲れを見せることはなかった。
その原因を聞きたいような、聞きたくないような。まだ私には、サナシスの心にまで踏み込むことはできない。
しかし、今日は々と、普段と違うようだ。サナシスは、私へこう尋ねた。
「エレーニ。死が近づいている人間と話したことはあるか」
私は一瞬、きょとんとして、それから意味を理解した。
私の人生で、親しい人間が間近で死んだのは、二度だ。一度目は母、二度目は老修道ヨルギア。母の死はあまりにも突然で、と面會することも葉わなかった。それと違い、ヨルギアは私が最期を看取り、墓まで掘って埋めた。世間知らずの私にをもって死というものを教えてくれたのは、間違いなくヨルギアだろう。
私はヨルギアと過ごした日々を思い出そうとするが、すでにもう朧げだ。憶えていたくない記憶もある。しかし、死の床についた彼に関しては憶えている。
「修道だったころ、十年間近く世話をしてもらったヨルギアという老修道がいて、彼の死を看取ったことはあります。ただ、彼はの不調を最後まで隠そうとしていて、彼の壽命が盡きる寸前にようやく死について、今後について話しただけです」
そう、ヨルギアは自のが死に近づいていることについて、私へ何も伝えてこなかった。ベッドから起き上がれなくなって初めて私へ話し、死後のことについて教えてくれた。修道院の切り盛りは最低限のことだけやればいい、食糧がなくなってお金もなくなったらどこかへ出るしかない、ウラノス公の援助は期待するな。そういうことを教わった。
それがどうかしたのか、私はサナシスの意図を窺う。とはいえ、サナシスが私なんかに心を悟らせるはずもなし、ただ待つしかない。そういうところは不公平な気はする。
そんな私の一方的な不平不満はともかく、サナシスは意外な提案を投げかけてきた。
「エレーニ、もしよかったらだが……俺の兄の話し相手になってくれないか」
蝋燭の炎に照らされたサナシスの表は真剣だ。影からそれ以外のは読み取れない。
「兄は上階の溫室庭園にいる。が弱く、そこから出られない。そのせいで人との接が極端に限られ、本人もんでいない。だが」
もし気晴らしにでもなれば。サナシスはそう付け足す。
それは私にとっても、サナシスの兄にとっても、という意味だろう。
私は、サナシスの兄という初めて聞いた人に対して、しだけ興味を持った。
「かしこまりました。兄上様の話し相手として、一杯、微力を盡くします」
「うん、頼んだ。助かる」
サナシスは安堵したのだろう、頬が緩む。
とはいえ、何か意図があって、問題があっての私への頼みだろう。そのくらいは私も察することができる。サナシスの期待に応えたいことはやまやまだが、正直、私は自信がない。十年間も修道院に籠っていたの上だから、おしゃべりは得意ではないのだ。もちろん、サナシスはそれを知っていて私に話し相手を頼んできたのだろうから、何か考えはあるのだろうと思う。
そういえば、聞いておかなければならないことがあった。
「ところで、兄上様のお名前は何とおっしゃるのでしょうか?」
「ああ、ヘリオス・ペレンヌスだ」
「ヘリオス様ですね。太の神の名を冠するなんて、素敵です」
私がそう言ったら、サナシスは何とも言えない顔をしていた。私は、何か気に障ることでも言ってしまっただろうか。
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