《【電子書籍化】神託のせいで修道やめて嫁ぐことになりました〜聡明なる王子様は実のところ超溺してくるお方です〜》第四十七話 ああ言えばこう言う
王城の上階にある溫室庭園へやってきた私を迎えたのは、そこの主人であるヘリオス・ペレンヌスだ。見目麗しく弟に負けないほどの貌、白銀の髪に赤い瞳という神的な見た目をした彼は、ステュクス王族として信奉すべき主神ステュクスではなくの神ヴィーナスにされて生まれてきたのだろうとさえ思える。
しかし。
「帰れ」
開口一番、第一聲がそれだった。
安楽椅子に座ったままヘリオスは顔をしかめて、私を嫌っていることを隠しもしない。
私はし距離を取って、何とか取り付くしまはないかとヘリオスと會話しようとする。
「あの、ヘリオス様、私は」
「私がサナシスの妻と會ったなどと噂されれば、困るのはそちらだろう」
「いえ、私はサナシス様の妻としてここに來たわけではございませんし」
「なら何だ?」
「ヘリオス様の話し相手です」
ヘリオスは思いっきりため息を吐いた。そんなにがっかりすることだろうか。とはいえ、サナシスに頼まれた以上、私はただ飯食らいにならないためにも話し相手という任を全うしよう。そうしよう。
「いつもここで過ごされているのですか?」
ヘリオスはぷいっと顔を背け、手元の本を開いて、返事はない。
「お茶をいただいてもよろしいでしょうか?」
はん、と鼻で笑われた。テーブル上には複數人用のティーポットといくつか空いたカップがあるのに、お前に出す茶はない、そういうことだろう。
「読書がご趣味なのでしょうか」
「うるさい」
鋭い聲が飛ぶ。私はついにヘリオスに怒られた。
ヘリオスは不機嫌そのものの手つきでカップに手ずから茶を注ぎ、私の前へ暴に突き出す。
「それを飲んだら帰ってサナシスに伝えておけ。余計なお世話だと」
まあ、そうも言われたら私だって腹が立つ。
私はヘリオスの前まで歩いていき、本來は足を置くための小さな椅子に腰を下ろした。そしてお茶を一気に飲む。普段とは違い、ちょっと反発したい気分だったので、言葉を強く発する。
「ご自分でお伝えになればよろしいかと」
「私はここから出られない。サナシスを呼びつけ時間を浪費させろと言うのか?」
「あなたが伝えるからこそ意味があり、きっとサナシス様は浪費だなどと思われません」
「分かった、お前は馬鹿だな」
「それは否めません。何せ、私はいころから十年も人里離れた修道院に押し込められておりました。世間知らずで教育も十分になされておらず、サナシス様の妻としてふさわしくありません。その自信はあります」
「あってどうする」
私は一生懸命言ったのに、ヘリオスには思いっきり呆れられた。ああ言えばこう言う、ヘリオスはサナシスと違ってかなり理屈っぽい。
「いいか、馬鹿。私はお前に同などしない、サナシスというこの大陸でもっとも出來のいい男と結婚するような幸運に恵まれたお前に、何を同することがある。お前は私とは違う、私に近づく必要すらない。さっさと帰って甘ったるい菓子と世話好きのメイドに囲まれて暮らしていろ」
「お言葉ですけど、私は食に慣れすぎてこちらの食事ではまだ胃もたれがするので、お菓子を食べすぎてはいけないと醫師に注意されました。この間ギロピタを食べて下剤まで飲む羽目になったものですから」
「下剤……なおのこと馬鹿だろう、お前」
そんなに馬鹿馬鹿言わなくてもいいのではないだろうか。私はむくれる。
しかしだ、ヘリオスはサナシスのことまで馬鹿にはしていない。この大陸でもっとも出來のいい男、そうとまで言うのだから、評価はしているのだ。どうにもがひねくれてはいるけど。
何となく、サナシスが私へヘリオスの話し相手を、と頼んできた意味が分かってきた。このひねくれ者の兄を、サナシスは持て余しているのだろう。第一、サナシスは忙しいから面と向かって時間をかけて話し合う、ということはできないだろうし、ヘリオスは優秀な弟サナシスに対して素直になれそうにない。
だからと言って、私に何ができるというのか。いや、泣き言を言う暇はない、できることを探さなければ。
そんな私の決意も無視して、ヘリオスはしっしと犬か貓を追い払うように、私を溫室庭園から追い出そうとする。
「もういい、帰れ。今日は十分喋っただろう」
「では、また明日お目にかかります」
「もう來なくていい」
「いいえ、來ます。扉に鍵をかけて門番を用意されても來ます。何ならレテ神殿騎士団を連れてきて突破します」
「やめろ馬鹿、何をそれほど執著することがある」
「サナシス様に最の兄上様の話し相手を務めるよう頼まれましたので! であれば私はその頼みを完遂します!」
最の、かどうかは知らないけど、サナシスがヘリオスを無視しない程度には大切に思っていることは確かだ。
それを聞いたヘリオスはとんでもなく嫌そうにしていた。
「……ええい、馬鹿に付き合っていられるか。帰れ!」
ヘリオスにテーブルに置いたカップを奪い取られた。これ以上茶をやるものか、という意思をじる。
いいだろう、今日のところはこれで退散だ。私は鼻息荒く椅子から立ち上がり、ちょっと強めに、念押しするようにこう言った。
「ヘリオス様、さようなら、また明日」
私が背を向けると、あからさまな舌打ちが聞こえた。よし、明日も來てやろう。私はよく分からない闘志が漲ってきていた。
【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔術師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔術の探求をしたいだけなのに~
---------- 書籍化決定!第1巻【10月8日(土)】発売! TOブックス公式HP他にて予約受付中です。 詳しくは作者マイページから『活動報告』をご確認下さい。 ---------- 【あらすじ】 剣術や弓術が重要視されるシルベ村に住む主人公エインズは、ただ一人魔法の可能性に心を惹かれていた。しかしシルベ村には魔法に関する豊富な知識や文化がなく、「こんな魔法があったらいいのに」と想像する毎日だった。 そんな中、シルベ村を襲撃される。その時に初めて見た敵の『魔法』は、自らの上に崩れ落ちる瓦礫の中でエインズを魅了し、心を奪った。焼野原にされたシルベ村から、隣のタス村の住民にただ一人の生き殘りとして救い出された。瓦礫から引き上げられたエインズは右腕に左腳を失い、加えて右目も失明してしまっていた。しかし身體欠陥を持ったエインズの興味関心は魔法だけだった。 タス村で2年過ごした時、村である事件が起き魔獣が跋扈する森に入ることとなった。そんな森の中でエインズの知らない魔術的要素を多く含んだ小屋を見つける。事件を無事解決し、小屋で魔術の探求を初めて2000年。魔術の探求に行き詰まり、外の世界に觸れるため森を出ると、魔神として崇められる存在になっていた。そんなことに気づかずエインズは自分の好きなままに外の世界で魔術の探求に勤しむのであった。 2021.12.22現在 月間総合ランキング2位 2021.12.24現在 月間総合ランキング1位
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