ヴィンセントはちゃんと本を持ってきてくれた。

「すごい量ですね……」

ヴィンセントが持ち込んだ本の量を見て、心しながら言う。

「この塔にはんな種類の歴史書があるからな。國から見た歴史書や、庶民の生活に焦點を當てた歴史書など、さまざまだ。一點だけ見ず、それぞれの観點を見ながら読め」

「はい、わかりました」

アリシアが頷くのを見ると、ヴィンセントは満足したのかすぐに去って行った。その背中を名殘惜しく見送ると、手をパンと叩いて気合をれる。

「大仕事です！」

アリシアは本をそれぞれ分類する。バラバラな観點を適當にりれて読むのは効率が良くない。似たもの同士で分けて、頭の中で整理するのがいい。

分類が済んだら、あとは読むのみだ。

アリシアは高く積まれた本にゴクリと息を飲む。

「さあ、頑張ります！」

◇◇◇

「疲れました……」

アリシアは抜け殻のようになった自分をい立たせてキッチンに向かった。なぜなら空腹をじたからだ。

集中するあまり、すっかり晝食も食べ損ねてしまった。

腹が減っては戦はできぬ。母が良く言っていた。

母は大事なことをよく教えてくれると思いながら、玉ねぎを切る。悲しくなくても涙が出るからいざというときに使えると母が言っていた。いざというときがどんなときか、アリシアにはわからなかったが。

鶏、ニンジン、ジャガイモも炒め、程よいところで小麥をれる。小麥が全的に馴染んだのを見て、牛と野菜の出をれる。そのまま混ぜ続けると、徐々にとろみが出てきた。

同時にまろやかな香りがしてくる。

「何の匂いだ？」

「ホワイトシチューです」

アリシアはグツグツ煮込みながら答える。どうやら香りにわれて部屋から出てきてくれたらしい。

朝食のことはまぐれだった可能を考えていたアリシアは嬉しくてニコニコする。

そんなアリシアに対してヴィンセントは無表で席に著いた。

アリシアは火を消すと、に盛っていく。晩飯のメニューはホワイトシチューに今朝焼いたパン、レタスのサラダに、それだけでは足りないかと思い、食糧庫にあったピクルスも置いた。

「どうぞ、召し上がれ」

「いただきます」

きちんと禮をしてから、ヴィンセントは食事に手を付けた。その様子を悟られないように盜み見る。食事のペースからして、おそらく口に合ったのだろう。

アリシアはあったかい気持ちになりながら、パンをシチューに浸した。