ハッピーハロウィン！　ということで、書いてみました！

ハロウィンが存在する世界ということでここはひとつお願いします！

アリシアは田舎者である。正真正銘、まごうことなき田舎者である。

しかし最近都會に近い場所に住んでいるおかげで、田舎にはない風習に馴染んできたところであると自分では思っている。

その証拠に、アリシアは今自らがせっせと作った服を著て満面の笑みを浮かべている。

「完璧です！」

姿見の前でを張る。黒いワンピースに、黒い帽子に、黒のとんがり帽子。あんまり真っ黒なのもどうかと思ったので、帽子にピンクのリボンを巻き、腰もリボンで括った。中々可くなったのではないだろうか。

「さすがに靴を作る技はなかったので既製品ですが……ぴったりのを見つけられました！」

自分の足にしっかりと馴染む靴に、いい買いをしたものだとアリシアは自分の目利きを自慢したい気分だった。

しかし靴代が自分の想像よりしたので、服は自作することにしたのだ。

現在のアリシアは倹約家なのである。貧乏な田舎育ちなので。

前世では、不自由のないように服も上等なを著ていたが、自分で選び、自分で作ったりするのは楽しいのだと、今世で知った。

「つまりは、質が全てではないのです」

半ば言い訳するように一人で呟いた。これが終わったら、また部屋著にしようと思っているので、使用した布も安だ。

最後にもう一度姿見を見て帽子の位置を確認したアリシアは、深く息を吸って部屋を出た。

向かうは居間である。

「ハッピーハロウィン！」

こういうのは勢いが肝心である。

扉を開けると同時にんだアリシアを見て、ヴィンセントとアダムはぽかんと口を開けた。

二人の様子を見て無に恥ずかしくなったアリシアは、帽子のつばを摑んで顔を隠すように下げた。

「あ、あの、今、街ではこの時期、こういう催しをするだと聞いて……」

やってみたんです、という言葉はとても小さくなってしまった。

似合わなかったのだろうか。

せっかく今世は々と自由にできるのだから、知ったことをやってみたかったのだが、何か間違っていたのだろうか。

ソワソワとするアリシアを見て、先に直を解いたのはアダムだった。

――なぜよりにもよって、魔の姿をするんですか。

そう言いたくなる言葉をグッと飲み込んだ。

アリシアは魔の姿をしている。もちろん、本來の魔の服裝は多種多様であり、前世のアリシアも、このような格好はしていなかった。

この魔の服裝は、前世のアリシアをモデルにした絵本に描かれた服だ。真っ黒な服、真っ黒な帽子、真っ黒な靴。悪の象徴を表していた。

當時と違って、今はこうしたハロウィンの季節に、子供だけでなく大人も著る定番の服裝となっている。それだけ、魔アリシアは、ただの語だと民衆では考えられているのだ。時代が変われば、民の考えも変わってくるものである。

――しかし、ヴィンセントにとっては、違うのではないだろうか。

したアリシアがモデルとなった絵本で、悪の象徴として著ていた服だ。いい印象はないだろう。

ただでさえヴィンセントは後ろ向きな考え方をする人間なのだ。不用意にトラウマを刺激しないでほしい。

アダムはチラリとヴィンセントを見るが、ヴィンセントがアダムよりし前に立っているため、後頭部しか見えない。今ヴィンセントはどういう顔をしているのだろう。

「わぁー！　かっわいい仮裝だね！」

こういう時こそ自分の出番である。

アダムは殊更明るい聲を出してアリシアに近寄った。俯いていたアリシアは、嬉しそうにパッと顔を上げた。

「はい！　今日は仮裝をする日だと街の方に教えていただいたので、作ってみたんです！」

言外にもっと褒めてほしいと言うアリシアに、アダムはもう一度可いと言うと、アリシアは満足そうに頷いた。

「でも、どうしてこの服裝だったの？」

あえて魔という単語を使わないようにしながら、アダムは訊いた。アリシアは笑顔を崩さず言う。

「可いと思ったからです！」

――……そんな……理由なの……？

確かに可い。とんがり帽子はつばが大きめになっており、小柄なアリシアをさらに小さく見せて加護をう。黒いワンピースも、腰のくびれのところにリボンを巻き、アリシアの細い腰が際立っている。靴は普段お金を使わないアリシアにしては発したのだろう。履き心地の良さそうな、沢をもったしい靴だった。

「うん可い」

アダムからしたら姉だというだけで可いのだが、可い姉が可い服を著るというのは、貴重な機會だ。なにせアリシアは中々おしゃれな服を買ってくれない。

しっかり見ておこうとアリシアをじっと見つめていると、アリシアが不安そうに、視線を外した。

いや、違う。ヴィンセントに視線を向けたのだ。

「……似合いませんか？」

不安そうに訊ねたアリシアの聲に反応して、ヴィンセントは俯けていた顔を上げた。

真っ赤である。

「似合っている……」

普段からは考えられないほど顔を赤くしたヴィンセントは、アリシアの目をしっかり見て言った。その言葉にアリシアはふわりと笑う。

その二人の様子を見て、アダムは一人頷いた。

つまり、ヴィンセントがかなかったのは。

「トラウマとかそんなの飛んじゃうくらい、可いと思ったってことね……」

らかい空気に包まれた空間で、アダムは目を押さえた。

――俺の気遣い返して。