《【書籍化】萬能スキルの劣等聖 〜用すぎるので貧乏にはなりませんでした》お試しパーティー
「この日が來ることを待ってました! 姐さんと同じパーティーで戦える日を! ソアラ様のパーティーの試運転開始ですね!」
「大袈裟ですよ。たまたま、大人數が必要な依頼に人員補充で一緒にっただけではありませんか」
今日の仕事はしだけ特殊でした。
毎年、この時期になるとスモールドラゴンという小型で非常に繁力の高い魔が大発生するらしく、時期を見て狩りをしておかないと更に繁して手に負えない事態になるとか。
そこでジルベルタ王室が國中のギルドからフリーター、またはパーティーを招集して人員を多數取り揃えました。
もちろん、スモールドラゴンの群生地に向かわせ、狩りを行わせる為です。
「それでも、あたしはソアラ姐さんに憧れて冒険者になりましたから。夢が一つ葉いました」
「エレインさん……」
エレインは極まっており、目に涙をためています。
そ、そこまで喜んでもらえるのでしたら、今日は自由にいても良いみたいですからパーティーを組むじで共に行しても良いかもしれません。
「エレイン、抜け駆けはさせないのだよ。蕓的な観點から言っても僕もぜひ貴と行を共にしたい」
「拙僧もこの場に參ったのはソアラ殿の盾となる為。悟りの境地に一歩でも近付きたく、同行を願いたい……!」
「ロレンスさんに、ジンさん……。承知致しました。そこまで仰せになられるのでしたら。今回のお仕事はご一緒して頂いてもよろしいですか?」
「「「――っ!?」」」
エレインに合わせるようにして、ロレンスとジンもご一緒されたいと言われましたので、私の方からいますと彼らはビックリしたような表をします。
ええーっと、もしや私の勘違いでした? だとしたら凄く恥ずかしいです……。
ど、どうしましょう。変な空気になっていませんか……?
「お、おい。ロレンス、何か言え……!」
「こんなときだけ無茶振りするな。僕だってして言葉が出ないんだ……」
「これが悟りの境地なのかもしれん……」
「……皆さん?」
何やら三人が三人とも目を瞑って小聲で話しています。
――な、何の時間ですか? これは……。
とりあえず、共に仕事をするということを嫌がっているということではないみたいですが……。
「ソアラ姐さん! あたし、ぶちかましますから! 姐さんの一番槍となって、払いをさせて貰います!」
「い、一番槍? 払い……? お仕事はスモールドラゴンの討伐ですよ?」
最初に口を開いたのはエレインでしたが、意気込みが凄かったです。
こんなにも熱的に何かをしようと目を輝かせたことが私の人生で果たしてありましたでしょうか……。
「僕は今日ほどインスピレーションを高めようと思ったことはない! そうだ! 蕓的な観點から言っても、この日が僕の作品の分岐點になると言っている!」
ロレンスはいつもどおり話していることの半分も分かりませんが、彼もエレインに劣らずして気合が十分というじでした。
「聖ソアラ殿の慈は拙僧には無かった悟りに必要な要素だったかもしれませぬ。救世の為、ソアラ殿の生き様を見させて頂きます」
ジンには両手を合わせて拝まれました。
いえいえ、救世の為なんて大袈裟過ぎますよ。
私などよりも立派な方は沢山いらっしゃるのですから。
「ジルベルタ王國の誇る鋭たちよ! よくぞ來てくれた! 私はジルベルタ騎士団、団長のセルティオスだ!」
ジルベルタ騎士団、団長セルティオス。卓越した剣の腕前は王國で最強だと聞いております。
無駄のない筋に加えて、自分の背丈よりも大きな剣を背負い、のこなしもスキがありません。
冒険者をしていたら、確実に最上位ランクのパーティーに所屬していることでしょう。
「スモールドラゴンは小さいが非常に獰猛な上に、旗が悪くなると仲間を呼ぶ習がある。半端に傷付けるな。トドメは必ず刺せ。これだけは絶対に守ってもらおう!」
スモールドラゴン討伐についての注意事項を一通り説明したセルティオスは、ドラゴンの群棲地への地図を部下に配らせました。
グルセイヤ原――ここからですと、そう遠くはない位置ですね。
更にセルティオスは私の方に近付いてきます。
「あなたが聖ソアラか。ふむ、やはり貧弱だ……」
「んだと、この野郎! ソアラ姐さんに喧嘩売ってんのか!」
「エレインさん! 手を出してはなりません!」
開口一番に敵意を以て接せられたので、私はしだけ驚きました。
エレインは私よりも腹が立っているのか、すごい形相でセルティオスを睨んでいます。
「陛下はあなたのことを買っているらしいが、私はそうは思っとらん。なんせ、あの勇者ゼノン様のパーティーを追い出されたのだからな。何かしらの欠陥があったに決まっておる」
「否定はしません……」
「ふむ。自覚ありか……。そりゃ、そうだ。じゃないとフリーターみたいな底辺職をつづけるはずがないもんなぁ」
私を嘲笑うようにセルティオスは暴言を吐き続けます。
どうやら、彼はゼノンのことを信奉しているみたいです。
私が彼のパーティーを追放されてもなお、過分な評価をけていることが気に食わないのでしょう。
「しくないな。特に大の男のジェラシーは……」
「こんなに嫉妬だと! ふざけるな!」
「ロレンスさん、私は大丈夫ですから落ち著いてください」
ロレンスの一言に激高するセルティオス。
彼は私のことがとにかく気に食わないみたいです。
「陛下はこのがスモールドラゴンを百は討伐すると仰ったのだ! 去年までの討伐記録は私の55にも関わらず……!」
「ならば嫉妬ではないか」
「黙れ! この屈辱、貴様らのようなフリーターには分からんだろう! ――勝負しろ! 聖ソアラ! この私の討伐數を一でも上回ればお前のことを認めてやる! しかし、下回れば陛下からの宮仕えのおいは斷われ! いいな!」
なんだか、妙な話になりました。
ジルベルタ王室が私のスポンサーになりたいと仰せになられているお話はルミアから聞きましたが、それがこういう話に発展するなんて……。
とにかく、私は私なりに與えられた仕事を自分のペースでこなすとしましょう――。
私を挾んだ勝負だなんて、お仕事を下さった方に失禮ですから――。
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