《【書籍化】萬能スキルの劣等聖 〜用すぎるので貧乏にはなりませんでした》空襲
クラウドの知らせを聞いて急いで外の様子を確認すると地獄絵図が展開されていました。
空に浮かぶ要塞のようなモノから次々と魔が降り注ぎ、街はパニックに陥っていたのです。
まさか、あのようなモノを造っていたとは――。
白服の男の異様に早い撤退の理由に合點がいきました。
「何がどうなってやがる! ソアラ姐さん! あたしら、一どうしたら!?」
エレインはあまりの景にパニックになりながら私の両肩を抱いて訴えます。
落ち著かなくては。この狀況だからこそ、冷靜に最善手を模索せねば……。
やはり、どうにかしてあの要塞に潛してコントロールする方法を得て、海の中にでも落とすしか――。
「飛竜召喚ッ――!」
召喚魔法で私は小型の飛竜を五召喚します。
五同時召喚となると負擔はかなりかかりますが、あの高度くらいでしたら何とか屆くでしょう。
「皆さん、非常に危険ですが……あの要塞へ突いたします!」
「「――っ!?」」
私が突という言葉を発した瞬間――皆さんの顔が強張りました。
無茶な要求をしている自覚はありますので強制するつもりはありません。
いざとなれば私一人でも戦う覚悟です。
「いいね。一番、しいやり方だ。蕓的な観點からしても」
「うむ。危険もあるが、ここで指を咥えているよりは數倍気楽だ」
「流石は姐さん! 豪気な方だ!」
「わたくし、ソアラ先輩にどこまでも付いていく所存でございます。命を賭してでも――」
皆さんは、私の懸念を吹き飛ばすように悍な顔付きで迷いなく共に敵地へと乗り込むことを決意してくれました。
もっと仲間を信頼しなくては――私がゼノンに背中を預けられないと捨てられたとき、どんなに苦しかったか……。
話はまとまりました。飛竜に乗って、空から降り注ぐ魔たちをかいくぐり、空中要塞へ突します。
「話は聞かせてもらったわ」
「ならば、某が道を切り開いてやろう」
「リルカさん、アーノルドさん……」
ゼノンのパーティーの一員だった治癒士のリルカと剣士のアーノルドが私たちに聲をかけます。
道を切り開くとはどういうことなのでしょうか……。
「こういうことよ。遅効全治癒(リ・ラージ・ヒール)――!」
「「――っ!?」」
「これで、あなたたちが傷付いた後にオートで治癒がかかるようになったわ。もっとも、3回くらいが限度だけどね」
リルカは私たち全員に遅効の治癒魔というスキルを披します。
私たちのは淡い青いに包まれて重さのない服を重ね著しているような覚になりました。
これも恐らくはSランク級のスキル――彼も努力して技を磨いていたということですね。
「おしゃべりはそれくらいにしろ。某は蕓が無いが、破壊する力だけは他の誰にも負けぬ自信がある。それは空中戦とて同じこと――」
「アーノルドさん……」
アーノルドは巨大な用のバスタードソードを構えて空から今もなお降り注ぐ魔たち目掛けて剣を振ります。
「心滅砕斬――! ぬおおおおおおっ!!」
超圧された闘気と共に鋭く巨大な剣圧が天へと立ち昇ります。
これがアーノルドのSランクスキル、心滅砕斬――。
先日のゼノンの一撃を彷彿とさせる強力な剣技のおかげで一時的に上空の魔たちが姿を消しました。
「ありがとうございます。助かりました」
「バカね。私らが助けられた禮をしてるだけなんだから、あんたは恩なんて言わなくて良いの。――生きて帰って來なさいよ」
「地上の魔共は某らに任せよ。元勇者のパーティーの意地を見せてやる」
リルカとアーノルドは町の人々を救うとして、走り去りました。
さて、私たちもアーノルドが切り開いた道を進んで空中要塞へと向かいましょう。
◆ ◆ ◆
「ほ、本當に要塞が浮いている」
「氷の魔城の二倍はあるぞ。敵も多い」
「とにかく、今まで以上に無駄な戦闘は避けましょう。大煙魔法(ギガスモーク)四重奏《カルテット》――!」
Bランクの魔法であるギガスモークは単純に煙を噴出するだけの殺傷能力が皆無の魔法です。
しかしながら、魔力の消費量は攻撃魔法などに比べると非常になくて重寶しています。
私はそれを四つ同時に発させてを完全に隠しつつ、要塞の奧へと足を進めました。
とりあえず、侵は功。しかし、この規模の要塞ですから當然魔王軍の中でもかなりの手練がいることは間違いありません。
出來れば、連戦避けたいのですが……。
「なぁ、兄者。まさか、ここにゴミ人間が來るとはなー」
「おうよ、弟よ。こんな煙で何とか出來ると思うとは甘い奴らよ」
そんな願いとは裏腹に巨人のような格の二人組に行く手を阻まれます。
時間はかけられませんが、戦闘は免れることは無理みたいですね――。
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