《【書籍化】萬能スキルの劣等聖 〜用すぎるので貧乏にはなりませんでした》大聖は未來への希となる
「間一髪、というところでしたな」
「要塞が発すると言われてもピンときませんでしたが、あれ程の威力だったとは思いませんでしたわ」
「町一つが確実に吹き飛ばされる程の規模だった。あんなものが町中に墮ちたらと考えるとゾッとする」
「飛竜で出したあとに姐さんが防壁を大量に張ってくれたから無事だったけど、あと數秒遅かったらヤバかった……」
パーティー全員の力を一つにして剣を振り下ろし――鉄よりもい要塞の壁を破壊して外への出路を作ることに功した私たちは飛竜に乗って要塞から出しました。
その際に鋼の剣は々に砕けてしまい、両腕の覚も無くなるほどの負傷をしてしまいます。
しかし、リルカの遅効の治癒魔法が発して、何とかかすことが可能なレベルまで回復してくれました。
「皆さんが無事で良かったです。それに被害も最小限に抑えられて……。本當は海の下に落とすことが出來れば完璧だったのですが」
「ウィリーという男があれだけ厄介だったのですから。この結果は最上級の戦果だと言えますわ」
「エリスさん……。そうですね、最後まで希を捨てずに戦い抜いたことをまずは誇りましょう」
エデルジアの國境からし離れた荒野に飛竜で降り立った私たちは、王宮に戦果を報告するために向かいました――。
◆ ◆ ◆
「絶的な狀況を覆し、よくぞ無事に戻ってきてくれた。大聖殿は、勲章をいくつ渡しても稱賛しきれぬほどの戦果をもたらしてくれた。此度の一件に加えて地獄島での戦果に報いる恩賞は必ずや與えさせてもらう」
エデルジア國王、アルカマッハ五世は私たちを稱賛して下さいます。
ウィリーを取り逃がしたこと。彼の魔力が規格外だったことを話して、各國と報を共有してほしいと要請するも陛下は快く引きけてくれました。
ウィリーを討伐しきれなかったことは心殘りですが、あの男の手のを知ることが出來たのは大きかったです。
「お主らが空中で戦っとる間に王都でも大きな戦いがあってな。雷帝ボルティゲアと、聖騎士ヒースクリフのパーティーがぶつかったのだ」
雷帝といえば、ずっと南にあるデベルジナ山脈に雷の魔城を陣取っていた魔王軍の幹部だったはずですが、ここまで遠征に來たのですね……。
それと聖騎士ヒースクリフのパーティーが戦ったということですか。
ボルティゲアは炎の帝王や氷の王よりも強いと聞いていましたが――。
「ヒースクリフも歴戦の強者と言えども、降り注ぐ魔たちの中で大苦戦を強いられとったみたいだが、元勇者のパーティーであるリルカとアーノルドの助力を得て、これを討伐した」
「そうですか。リルカさんたちが……」
「うむ。二人にはフリーターと言わずに早くどこかのパーティーに所屬してしいものよのう」
陛下は、今回の戦いはウィリーやボルティゲアなどが出ている以上、魔王軍が勝負をかけた大規模な総力戦だったはずだとして――空中要塞撃破や、魔王軍の幹部を三人葬ったことなどから、大打撃を與えたので暫くは大人しくなると読んでいました。
「ウィリーの口ぶりからすると、まだまだ強力な魔族が魔王軍にはいるはずです。引き続き警戒だけは怠らないでください」
「ふーむ。大聖殿がそう忠告するなら吾輩も油斷だけはせぬようにしておこう」
私は陛下の読みは甘く、油斷だけはしないように頼んでおくことにします。
とにかく、魔王軍が隠し持っている力は未知數。警戒は厳重にしておいて損はないでしょう。
陛下との二度目の謁見を終えた私たちはクラウドが手配してくれた宿へと向かうことにしたのですが――。
「皆さん、ちょっと私は用事がありますので先に行っててもらってもよろしいですか? すぐに宿には行きますから」
私は用事があるとして、仲間たちを先に行かせます。
そして、空間移魔法(テレポーテーション)を使いました――。
◆ ◆ ◆
「一人で戦っていたのですか? この國に降り注ぐ魔を倒すために……」
「ふん。人間を止めても僕は勇者であることは辭めていないからな。弱い者は助けるさ」
大量に魔の返りを服や剣に付著させた勇者ゼノンの気配が王都の時計臺の上からじられたので、私はそこまで移しました。
どうやらゼノンは空中要塞から降り注ぐ魔たちを何百と葬っていたみたいです。
「リルカさんやアーノルドさんには聲をかけないのですか? 共にもう一度パーティーを組もうと」
「どの面下げて、勧するんだ? あいつらは僕を見限った。弱い僕を……負け犬にり下がった僕を見て失したんだ」
リルカやアーノルドと再び組むことを薦めますと、ゼノンは首を振って拒否しました。
地獄島ではかなりの強さを見せつけましたが、この方はそれでも足りないと言うのでしょうか……。
「ゼノン……、あなたは――」
「だが、僕は諦めていないぞ! こんな姿になろうと、凡人のお前がここまでやってるんだ! 一人でも戦果を上げて! 勇者として強さを見せつけて、あいつらを迎えに行く!」
目つきが変わりました。
己の弱さを知って、尚も諦めずに戦い抜くことを決めた彼の表は清々しいものでした。
若き勇者と呼ばれた天才、ゼノンは再出発していつかパーティーを再結することを誓ったのです。
「だから、お前も絶対にこの先、諦めるなよ! このゼノンが上だということを証明するために生き延びてもらわなくては困るからな!」
「はい。勇者様の活躍を待っております」
「ふん……。――悪かったな。お前みたいな凡人でも助けられたことはあったかもしれない」
「えっ?」
ゼノンは小聲で何かを言い殘して、バツの悪そうな顔をして去っていきました。
私もあの方の覇気を見習ってこれから先も頑張らねばなりませんね。
大聖として、魔王軍から人々の未來を守るために――。
私たちの戦いはこれからです――。
◆第2章まで読んで頂いてありがとうございます◆
これにて、第2章は完結です。
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